自閉症を体験できる?阪大と東大が開発中の「自閉症知覚シミュレータ」がすごい
ライター:GreenDays
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これまで自閉スペクトラム症は社会的能力の問題と考えられてきましたが、最新の研究で、自閉症スペクトラム症の人は独特の見え方・聴こえ方をしていることが原因で社会的能力に問題が出てきているのではないかと考えられるようになってきました。今回はこのシュミレータを体験し、自閉症の息子が見ているであろう世界をのぞいてきました。そこから見えてきた息子の困難とは・・・
自閉症の知覚体験シミュレータ
皆さんは、この名前を聞いたことはありますか?
大阪大学と東京大学が開発を行っているシミュレータです。
ヘッドセットを装着することで、自閉スペクトラム症の方々に世界がどう見ているかを体験できるものです。
大阪大学と東京大学が開発を行っているシミュレータです。
ヘッドセットを装着することで、自閉スペクトラム症の方々に世界がどう見ているかを体験できるものです。
自閉症の困りごとの一つに、「コミュニケーションが苦手」という社会性の問題があります。それは、定型発達の方からすると理解しがたい行動に出ることもしばしば。
その行動や問題の根底には「どのように見て、どのように感じるか」という感覚の違いがあり、その差を理解することで周囲の理解が深まり、支援の幅も広がっていくのでは、という視点で研究が進められているそうです。
今回はこの自閉症知覚シミュレータを体験してきました。あわせてこのシュミレータの開発を行っている、情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター(2017年4月30日まで 大阪大学大学院工学研究科・特任准教授)の長井志江先生と、東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎先生のコメントを紹介します。
その行動や問題の根底には「どのように見て、どのように感じるか」という感覚の違いがあり、その差を理解することで周囲の理解が深まり、支援の幅も広がっていくのでは、という視点で研究が進められているそうです。
今回はこの自閉症知覚シミュレータを体験してきました。あわせてこのシュミレータの開発を行っている、情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター(2017年4月30日まで 大阪大学大学院工学研究科・特任准教授)の長井志江先生と、東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎先生のコメントを紹介します。
実際に、息子の見る世界を体験してみた
5歳の息子は人混みが苦手で電車もショッピングモールもダメ。
それでも私は「もう少し大きくなって場に慣れれば平気になるのでは」と考えていました。
ところが、開発している大阪大学特任准教授・長井志江先生の講演でこのシミュレータを体験してからは、それは大きな間違いだったと反省しています。
白くまぶしい世界、色のないぼんやりした世界、ノイズが飛び交う世界に「慣れれば大丈夫」だなんて、とても言えません。
それでも私は「もう少し大きくなって場に慣れれば平気になるのでは」と考えていました。
ところが、開発している大阪大学特任准教授・長井志江先生の講演でこのシミュレータを体験してからは、それは大きな間違いだったと反省しています。
白くまぶしい世界、色のないぼんやりした世界、ノイズが飛び交う世界に「慣れれば大丈夫」だなんて、とても言えません。
(1)まぶしい世界
左側が元の画像、右側が自閉症スペクトラム症の人の見え方を表している画像です。
輝度によるコントラストの強調・高輝度化、と言うそうですが、私たちが雪山に降り立つと周囲が白くてまぶしい、と感じることがありますよね。
そういった状態が、日常生活でも起こる人もいるのだそうです。
騒々しい場所や往来の激しい場所など、周囲の環境によって視覚に変化が起こるそうです。
この視覚変化が起こると、表情の判別どころか目の前にいる人が誰なのかもわからなってしまうと知りました。
園や学校で視覚変化が起こったら、授業を受けるのも人間関係を築くのも、とても難しいことだと感じました。
輝度によるコントラストの強調・高輝度化、と言うそうですが、私たちが雪山に降り立つと周囲が白くてまぶしい、と感じることがありますよね。
そういった状態が、日常生活でも起こる人もいるのだそうです。
騒々しい場所や往来の激しい場所など、周囲の環境によって視覚に変化が起こるそうです。
この視覚変化が起こると、表情の判別どころか目の前にいる人が誰なのかもわからなってしまうと知りました。
園や学校で視覚変化が起こったら、授業を受けるのも人間関係を築くのも、とても難しいことだと感じました。
(2)色のない世界
自閉症スペクトラムの人の中は、騒音を耳にしたり早い速度で動くものを見たときにも視覚変化が起こり、色が無くなり白黒に見える無彩色化が起こったり、ぼやけて見える不鮮明化と呼ばれる状態になる人もいるのだそうです。
その例として電車がホームに到着する映像をみましたが、電車がこちらへ向かって、目の前を通り過ぎる際に、色が消え白黒の世界になります。そして、視界はぼんやりとするのです。
これでは乗車する電車の情報を得ることは難しく、スムーズに乗り換えができるとは思えません。
その例として電車がホームに到着する映像をみましたが、電車がこちらへ向かって、目の前を通り過ぎる際に、色が消え白黒の世界になります。そして、視界はぼんやりとするのです。
これでは乗車する電車の情報を得ることは難しく、スムーズに乗り換えができるとは思えません。
(3)ノイズのある世界
自閉症スペクトラムの人の中は、視野全体に砂嵐状のノイズが入ることがある人もいるそうです。
この状態になる方はあまり多くないそうですが、片頭痛患者にも類似した症状が出るそうで、片頭痛持ちの私はこれをよく経験します。
チカチカとした砂嵐状のノイズのせいで、とても目を開けて普通に過ごせる状態ではありません。
周囲の環境によって、この砂嵐が出てくるのだと思うと、積極的に外出する気にはなれないと感じました。
この状態になる方はあまり多くないそうですが、片頭痛患者にも類似した症状が出るそうで、片頭痛持ちの私はこれをよく経験します。
チカチカとした砂嵐状のノイズのせいで、とても目を開けて普通に過ごせる状態ではありません。
周囲の環境によって、この砂嵐が出てくるのだと思うと、積極的に外出する気にはなれないと感じました。
「大丈夫だよ」ではない対処法を
特定の交差点に差し掛かると必ず「まぶしい」と怖がり抱っこを要求する息子。
彼に必要なのは「大丈夫だよ」という言葉かけではなく、帽子を目深にかぶらせて目から入る情報を減らし、耳を塞いで刺激を遮断してあげることだったのです。
このシミュレータを利用した体験は、私にとってとても大きな気づきになりました。
自閉症の息子は、私たちが体験したことのない、とても過ごしにくい世界にいたのです。
彼の見えている世界を少し体験したからといって、全ての困りごとを解消してあげられるわけではありませんが、少しでも理由がわかるとサポートの方法も変わってくるものです。
みなさんも、もし知覚体験シミュレータを利用できる機会があればぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
彼に必要なのは「大丈夫だよ」という言葉かけではなく、帽子を目深にかぶらせて目から入る情報を減らし、耳を塞いで刺激を遮断してあげることだったのです。
このシミュレータを利用した体験は、私にとってとても大きな気づきになりました。
自閉症の息子は、私たちが体験したことのない、とても過ごしにくい世界にいたのです。
彼の見えている世界を少し体験したからといって、全ての困りごとを解消してあげられるわけではありませんが、少しでも理由がわかるとサポートの方法も変わってくるものです。
みなさんも、もし知覚体験シミュレータを利用できる機会があればぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
ASD視覚体験シミュレータ 開発者のコメント
情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センターの長井志江先生
「発達障害者の認知メカニズムの解明とそれに基づく支援設計」
従来の発達障害者に対する支援や療育は、第三者の視点から社会的能力の困難さに着目して設計されてきました。しかし、発達障害者の抱える困難さが社会性のレベルだけではなく、それ以前の知覚や運動、そしてそれらと環境の相互作用によって生じうることが、近年の当事者研究によって指摘されています。
ASD視覚体験シミュレータは、ASD者の視覚過敏や鈍麻がどのような環境要因(動きや音など)によって誘発され、それが常同行動や他者とのコミュニケーションの難しさなどの社会性の問題に結びつくのかを、第一人称視点から理解し共有することを可能にします。
特に、画像・音声処理技術を駆使した計算論的アプローチによって、発達障害者の非定型性を生み出す認知・神経メカニズムを明らかにし、それに基づいた当事者視点からの支援を実現します。
本シミュレータを通して発達障害の特性を個人に帰属するものと社会環境に帰属するものとに分類することで、真に役立つ支援と合理的配慮の設計に貢献します。
従来の発達障害者に対する支援や療育は、第三者の視点から社会的能力の困難さに着目して設計されてきました。しかし、発達障害者の抱える困難さが社会性のレベルだけではなく、それ以前の知覚や運動、そしてそれらと環境の相互作用によって生じうることが、近年の当事者研究によって指摘されています。
ASD視覚体験シミュレータは、ASD者の視覚過敏や鈍麻がどのような環境要因(動きや音など)によって誘発され、それが常同行動や他者とのコミュニケーションの難しさなどの社会性の問題に結びつくのかを、第一人称視点から理解し共有することを可能にします。
特に、画像・音声処理技術を駆使した計算論的アプローチによって、発達障害者の非定型性を生み出す認知・神経メカニズムを明らかにし、それに基づいた当事者視点からの支援を実現します。
本シミュレータを通して発達障害の特性を個人に帰属するものと社会環境に帰属するものとに分類することで、真に役立つ支援と合理的配慮の設計に貢献します。
東京大学先端科学技術研究センター 熊谷晋一郎先生
「見えにくい障害にとってのバリアフリーな社会を目指して」
多数派と、ものの見え方、聞こえ方などの認知スタイルが異なる少数派は、生活の様々な場面で、「なぜ自分は他の人と同じように感じたり、行動したりできないのだろう」と、違和感をもつことがしばしばあります。
しかし、こうした認知的な違いは、周囲からは気づかれにくいものです。そして周囲から気づかれにくい差異は、たいていの場合、自分も気づきにくいのです。
理由もわからず、周囲と同じようにできないとき、「自分の努力不足なのだろうか」「自分がおかしいのだろうか」など、あいまいに自分を責める状況になりかねません。
差異が具体的に捉えにくい場合、社会に対してニーズを主張しようにも、うまく伝えられないという場合もあります。
そうした、気づかれにくい認知的な個性を、認知発達ロボティクスや当事者研究、計算論的神経科学の協働によって可視化し、自己理解と社会的共有を支援しようというのが、ASD視覚体験シミュレータの開発の目的です。
多数派と、ものの見え方、聞こえ方などの認知スタイルが異なる少数派は、生活の様々な場面で、「なぜ自分は他の人と同じように感じたり、行動したりできないのだろう」と、違和感をもつことがしばしばあります。
しかし、こうした認知的な違いは、周囲からは気づかれにくいものです。そして周囲から気づかれにくい差異は、たいていの場合、自分も気づきにくいのです。
理由もわからず、周囲と同じようにできないとき、「自分の努力不足なのだろうか」「自分がおかしいのだろうか」など、あいまいに自分を責める状況になりかねません。
差異が具体的に捉えにくい場合、社会に対してニーズを主張しようにも、うまく伝えられないという場合もあります。
そうした、気づかれにくい認知的な個性を、認知発達ロボティクスや当事者研究、計算論的神経科学の協働によって可視化し、自己理解と社会的共有を支援しようというのが、ASD視覚体験シミュレータの開発の目的です。
ASD視覚体験シミュレータ
【専門家監修】ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの0歳~6歳、小学生、思春期まで年齢別の特徴、診断や治療、支援、接し方など
アスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)とは?特徴と相談先【専門家監修】