単語を覚えるだけじゃダメ!息子が「オウム返し」を卒業するまで

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同じ年齢の周りの子どもと比べて言葉の遅れがあると不安になりますよね。「一日でも早く喋るようになってほしい」と願う保護者は多いのではないでしょうか。でも、成長は人それぞれ。その上、言葉だけが成長する、ということはない様子…。

立石美津子
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歯にきぬ着せぬ主治医との出会い

私と息子は、国立成育医療センターの心の発達科に通っていました。

この病院ではソーシャルスキルトレーニングや、様々な訓練があったので「言葉が話せるようになるトレーニングをさせたい」と申し出ました。

担当医は、歯にきぬ着せぬ物言いの先生でした。
「お母さん、いくら言葉を教えても、それは単に単語を覚えるだけに終わります。言葉を操ってコミュニケーションをとれるようにはなりませんよ!」ときついことを言うのです。

「ソーシャルスキルトレーニングを受けさせたい」と言ったときも、「周りに関心を持つことができてはじめて、社会のルールを学べるのです。○○君(息子の名前)は、排泄・着替えなど自分の身の回りのことも全くできていないじゃないですか!何を考えているのお母さん!」と厳しく言われました。

そして、診察室の床に落ちているゴミを口に入れている息子を見て、「ほら、ごらんなさい。ゴミを口に入れているじゃないですか、この段階では“社会性を育てる”なんてずっと先の話ですよ。まだ早い、まだ早い」と言いました。

5歳過ぎてもオムツが外れない息子を心配し、「なんど教えてもトイレでおしっこができない。どうしてもオムツを取りたい」と訴えた時は、「オムツだけをとっても、オムツとれただけで赤ちゃんのままです。言葉も、オムツがはずれることも、全部発達の中で出来るようになっていくものです」と厳しく諭されました。

私はひどく傷つき「担当医を変えてほしい」「病院を変えたい」と何度も病院に訴えました。
けれど、時間が経つにつれ、保護者が本当に理解すべきことを、誤魔化さずに進言してくれている真の優しさに気づき「この医師でいいや」と思いました。
そして、息子の主治医となったのです。

まるで「ただの岩」のように。

自閉症の場合、人への関心が少ないと言われています。
息子も人見知りをするわけでもなく、人に喜んで近づくわけでもなく、周囲の人がやっていることに関心を持って真似ることは決してありませんでした。

人だけではなく、犬や猫などの動物に興味を示すこともありません。
目の前に犬が居ても逃げることもなく、かといって近寄るわけでもなく、まるで「ただの岩」に見えているかのような反応でした。ですから犬猫を見かけたときに子どもがよく言う、「ワンワン」「ニャンニャン」という言葉を発することも、ありませんでした。

これは保育園の様子です。
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保育園では、皆が歌を歌っていても真似をすることはなく、後ろで座って絵本を読んでいるだけです。朝の体操の時間も棒のように突っ立っているだけでした。周りの友達がやっていることに無関心なのです。
そこに大勢の人がいようと気にしておらず、まるで展示物か石ころだと思っているような振る舞いでした。

息子に最適なステップ、模倣訓練をはじめて

そのころ、療育施設では模倣訓練をしていました。模倣訓練とは、「真似をする練習」です。
先生が手を頭に置けば、子どもも手を頭に置く、先生が手を肩に置けば子どもも手を肩に、口に置けばそれも真似するという訓練でした。

すると数ヶ月経ったある日、保育園のラジオ体操で変化がありました。
それまでは、周囲の子どもが体操をしていても、ただそこに立っているだけでしたが、少しずつ真似をするようになっていったのです。

すると、先生が「おはよう」と言えば「お」と言い「さようなら」と言えば「・・なら」と、言葉の一部をオウム返しするようになりました。人のやることに注目するようになっていたのです。

それから少しずつ言葉が出てきました。
しかし残念ながら、それらは自分の意思を示すものではなく、主治医が言った通り単に単語を真似しているだけ。まさにオウムでした。

初めての意思のある言葉はなんと…

こうして、6歳までずっと言葉らしい言葉を話さなかった息子。

人生で一番最初に喋った意思のある言葉は「まだ食べる!」でした。

まともな単語すら出ていなかったのに、いきなり2語文!しかも自閉症らしからぬ自分の意思をはっきりと示す言葉でした。

それは、渋谷の東急東横店9階にある、讃岐うどん屋に連れて行った時のことでした。
アルバイト店員が、うどんがの切れ端が1本残っていた食器を「お下げ致します」と持って行こうとしたその時、「まだ食べる!」と叫んだのです。
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「ママ、ママ」とも呼ばれた経験がなかった私。
喋った相手はうどん屋のアルバイトのお兄さんでしたが、とても嬉しかったのを覚えています。

息子がうどん屋で「まだ食べる!」と言ったとき、主治医に言われた言葉をまた思い出しました。
言葉だけのトレーニングをしても単語を単に覚えるだけ。言葉を使って喋るようには、なかなかなりません。
息子が意思のある言葉を発したのは「うどんを最後の1本まで食べたい、器を下げようとしている店員に何がなんでも伝えたい」という動機でした。

周囲を見ることを覚えて、周囲への関心が生まれ、言葉を交わすと気持ちが伝わることを知って、そして「伝えたい」気持ちが生まれて。そうやってコミュニケーションが出来るようになったのです。

言葉だけでなく遊びも同じです。

公園に連れて行っても「友達と遊びたい」という気持ちがなかったら、楽しそうに遊んでいる子ども達がいても、仲間に入らず地面の石を一列に並べるだけなのです。

そんな周囲に関心のない時期に、無理して友達と関わらせようとしても、親子共にストレスがかかるだけです。
子どもも楽しくない上に、親だって周囲との違いを目にして辛い思いをするだけですから、無理して「公園デビュー」をする必要なんて、ないと思っています。

思春期ならではの言葉づかいも、成長の証。

来年高校生になる息子は、思春期に入り、荒れていて大変です。
でも、うどん屋に行けば「きつねうどん下さい」と、自分の意思で食べたいものを注文できるようになりました。
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友達の真似をして私に向かって「うざい」「まじ」など汚い言葉を使うことも。
私は眉をひそめながらも「友達の真似をして私に感情をぶつけられるようになったなんて、昔に比べたら成長したなあ」と心ではひそかに喜んでいます。

今、成長の兆しが見えずに苦しんでいるお母さん方、焦らなくても大丈夫。経験を積んで成長し、発達段階の機が熟せば言葉も出るようになりますから、その時までのんびり待ってみませんか。

この記事を書いた人の著書

立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子(著),市川宏伸(監修)
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