「家ならできるのに!」家庭と同じやり方をしない先生の意図とは?

2016/05/28 更新
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誰よりも長い時間、子どもと一緒にいる母親である私。息子が最も心地よく日常の課題をこなせるパターンを分かっています。だからこそ、療育の先生にもそれに従ってほしいと思ってしまったりします。でも実際は、「パターンを崩す」こともプロの仕事なんです。

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林真紀
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親として身につけた子どもとの接し方

私は息子と5年間の月日を共に歩んできました。おそらく誰よりも一番、息子との時間を過ごしてきたはずです。
何度も癇癪を起こされました。暴れる息子の頭が自分の顔に激突し、鼻や口を何度もケガしました。

息子が目を覚ますのがいつも怖くて、起こす前に何度も深呼吸しました。
道の途中で動かなくなる息子をおんぶしているうちに、二の腕に立派な力こぶがつきました。

そんな中、私はとにかく「自分が楽になる方法」を、必死に考え続けてきました。
その結果、「息子が心地よいと思う声かけ」や、「息子が安心して行動できる環境づくり」が自然と身についてきたように思います。

今では、パニックや癇癪を起す直前に、息子の気持ちをパッと切り替えさせることができるようになりました。
これは、パパにはまだ使えません。私が経験的に習得したものだからです。
きっと、発達障害児と長い時間を過ごした親御さんは、この「子どもが安心できる声かけや環境づくり」が身についているかも
しれません。

でも当然のことながら、子どもは常に、自分にとってベストな環境で生きていけるわけではありません。
特に集団生活に入れば、その子にとって想定外の出来事がたくさん出てきます。

このため、あえてイレギュラーな環境で練習させることも大事だと私は思います。
そう実感させてくれたエピソードがありました。

療育先で「私の方が上手くできるのに…」

息子は昨年度から言語療法に通っていますが、日によってどうしても集中力が続かず、ふざけてしまったり、
課題に取り組むことを嫌がったり…ということがありました。

原因はこちらから見ていても明らかでした。

・課題を何問やったら終わりなのか
・どの課題とどの課題をやるのか
・どの順番でやるのか…

息子はこうした見通しが必要なタイプなのに、授業中でほとんど提示されなかったからです。

何がいつ終わるか分からない、一問終わったと思ったのに、また次の課題が提示される、こうやっているうちに息子は
「もうやめた!」と言い始めてしまいます。

私には、療育の先生がなぜ課題に見通しを立ててくれないのかが分かりませんでした。
「息子の集中力を維持させるなんて簡単なのにな~、やり方が下手だな~」と思ってしまったり…。

ついつい、「私がやったほうが上手に教えられるのに」と思ってしまう自分がいました。

先生の真意とは

ある日、「療育について何か希望がありますか?」と先生に聞かれたため、私は思い切ってお願いしてみたのです。

「課題に見通しが立つようにしていただけると、もっと集中力が維持できると思うんです。
今日は何の課題を何問やって、あと何問で終わるか、きちんと伝えていただけると…。私は家でそうやってやらせてます。」

ところが、先生はこう答えたのです。

「そうですね、確かに見通しがついたほうが集中力は維持できるのですが、全部そのやり方でやっていくと、
今後好みのパターンではないときに投げ出してしまう可能性がありますよね。

お母さんはおうちで息子さんが一番好きな環境で課題に取り組ませてください。私たちはそれを少しずつ崩す練習をします。」

確かにそれは、息子の成長のためにはとても大事なことだと思いました。

療育としての役割

発達障害児を育てているとよく分かるのです。

その子が心地よくいられる環境を作り上げること以上に、その環境を「緩やかに」崩すことのほうが、はるかに難易度が高いのだと。

慣れたパターンを大きく崩すと、発達障害児はひどく動揺し、時にはパニックに陥ります。
パニックを誘発しない程度に、でもいつもとちょっと違うぐらいに崩すのです。

子どもが色んな場面に対応できるように、慣れた環境を緩やかに崩していくのもプロの役割
そう考えると、療育もまた一つ、奥の深いものに思えてきますね。
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