トゥレット障害(トゥレット症)とは?症状や治療法、ほかの発達障害との合併は?

2016/08/28 更新
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トゥレット障害(トゥレット症)とは、児童期から青年期にみられるチック症の一種です。本人とその周囲の人たちが障害に気づかず、日常生活を送る上で困難があることが少なくありません。トゥレット障害を適切に理解し、支援を行っていくために必要な情報をご紹介していきます。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
専門行動療法士
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
公認心理師
目次

トゥレット障害(トゥレット症)とは?

トゥレット障害とは、児童期から青年期にみられるチック症の一種で、多様な「運動チック」と1つ以上の「音声チック」が1年以上持続することを特徴とする精神・神経疾患です。

1885年に研究者のGilles de la Tourette(トゥレット氏)にちなんで命名され、トゥレット症やトゥレット症候群と呼ばれることもあります。

トゥレット障害は、大きくはチック症と呼ばれる疾患群の1種として分類されます。まばたきや首振り、咳払いといった、一見癖のように見える症状が起こることをチックと呼びます。チックの症状には運動性チック音声チックの2種類があり、さらに持続時間に応じて、単純性チック複雑性チックに分類されます。

2013年に出版されたアメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)の診断基準によると、チック症は5つの診断カテゴリに分類されます。そのうち、以下の4つの条件を満たすものがトゥレット障害と診断されます。トゥレット症の推定有病率は学童期の子どもで1000人あたり3~8人の範囲とされています。

A. 多彩な運動チック,および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が,同時に存在するとは限らないが,疾患のある時期に存在したことがある.
B. チックの頻度は増減することがあるが,最初にチックが始まってから1年以上は持続している.
C. 発症は18歳以前である.
D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病,ウイルス性脳炎)によるものではない.

(日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院,2014年/刊)

出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4260019074
チック症について詳しくは次の記事をご覧ください。
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トゥレット障害の症状経過

トゥレット障害は、平均的に4~6歳で発症し、10~12歳くらいに重症度のピークがきます。

まず初期の段階で、まばたきや首ふり、顔をしかめるといった「単純運動チック」が始まることがあります。そしてしばらく経つと、物に触る・蹴る、飛び上がるなどの「複雑運動チック」、不謹慎な言葉を唐突に言ってしまうなどの「複雑音声チック」へと進行していく場合があります。その後、一般的には青年期の間に症状は軽減するといわれています。

トゥレット障害の主な原因と悪化要因

トゥレット障害の原因

トゥレット障害正確な原因はまだわかっていませんが、家系発症が比較的多いことや双生児研究の結果から遺伝的要因の関連性が指摘されています。

また、情動、注意、意欲、報償、依存、歩行運動などをつかさどる、大脳基底核のドーパミン神経受容体の異常が関連しているともいわれています。

トゥレット障害の悪化要因

トゥレット障害の症状を悪化させる要因は環境要因、気質要因、その他の要因の3つに分けることができます。

■環境要因
チックの症状は、不安、興奮、強い疲労によって悪化し、落ち着いて集中しているときは改善します。たとえば、テストを受ける、課外活動に参加するなどの、ストレスが多い出来事はしばしば症状を悪化させる一方、勉強や仕事に集中しているときは、症状を軽減させます。

■気質要因
対人関係が不器用、不安やストレスを感じやすい、緊張を感じやすいなど、デリケートな気質の子どもがトゥレット障害を発症しやすいといわれています。

■その他の要因
併発したADHD(注意欠陥・多動性障害)の症状緩和のために使用される中枢刺激薬などが、トゥレット障害の症状を促進することがあります。また、結膜炎を生じた際の目のかゆみでまばたきをしていたのが癖になったケースや、テレビの見過ぎによる目の疲れが原因となったケースもあります。

トゥレット障害によく見られる合併症

トゥレット障害のある人は、他の障害も併発することが少なくありません。代表的なものとして、ADHD(注意欠陥・多動性障害)強迫性障害の2つが挙げられます。

これらが合併症として現れる理由は、トゥレット障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、強迫性障害がいずれも、ド-パミン系やセロトニン系などの脳内神経伝達物質の機能不全に起因するためであると推測することができます。

その他、学習障害睡眠障害気分障害自傷行為などを併発することがあります。これらは、日常生活においてチックが現れることへの不安や、チック症状そのものが学習活動や仕事をするうえでの支障となることで生じる二次障害であると考えられます。

しばしばみられる合併症(併発症)は、小児期の注意欠陥多動性障害と10歳以後の強迫性障害がある。ほかに、小児期には睡眠障害、昼夜の区別に一致した生活リズムがとれない、直立二足歩行がきちんとできないことがみられ、10歳代には衝動性行動などをみることもある。

(「神経系疾患分野トゥレット症候群(平成22年度)」難病情報センター)

出典:http://www.nanbyou.or.jp/entry/856
ADHD(注意欠陥・多動性障害)、強迫性障害について、詳しくはこちらをご覧ください。
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トゥレット障害の治療方法

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トゥレット障害の基本的な治療方針は、トゥレット障害を除去することを目的としていません。トゥレット障害や合併症があっても本人が社会に適応できるようにしたり、周囲の環境を整備して症状や困難を緩和するという考えに基づいて、治療が行われています。

そのため、本人や周囲への心理教育や環境調整などの治療法を基本としつつ、チック症や合併症の症状に合わせて、認知行動療法や薬物療法などの治療法がとられることが多いのです。

心理教育および環境調整

比較的軽度の症状であれば、家族や学校など周囲の理解を得ることで、通常通りに生活することができます。

心理教育および環境調整とは、患者の家族や学校に対して適切な支援を行うための情報提供やアドバイスを行うことで、社会適応できるようにサポートしていける環境を整備することです。

行動療法

重症・慢性化した症状の場合、習慣逆転法(ハビット・リバーサル)という行動療法がとられることがあります。

習慣逆転法(ハビット・リバーサル)とは、意識化練習、拮抗反応の学習、リラクゼーション練習、偶然性の管理、汎化練習の5つのステップを用いた治療法のことで、これらを習得することで症状が改善されるというものです。

ただし、現在のところ日本ではあまり普及しておらず、一般的な治療法ではありません。

薬物療法

上記の療法では解決できない場合、薬物療法が行われることもあります。合併症も含めて、どの症状に的を絞るのか、副作用の程度などを考慮して選択されます。ドーパミンの過剰な働きを抑制するハロペリドールのほか、リスペリドン、クロルプロマジン、アリピプラゾールなどが用いられます。

薬は人によって合う・合わないもありますので、主治医と相談し、指示のもと用法用量を守って治療を進める必要があります。

外科治療

以上に示したいずれの方法でも治療できない場合は、外科治療が施されることもあります。大脳基底核に電極を埋め込んで持続的に刺激を与える、深部脳刺激療法という手術が行われます。

トゥレット障害の診療・相談先

幼児期・乳幼児期に発症した場合は、小児診療内科・児童精神科などで診療できます。大人の場合は、精神科神経内科心療内科などが適切です。その他相談先には、市区町村窓口、保健所、精神保健福祉センター、発達障害支援センターなどがあります。

トゥレット障害には、周囲の理解とサポートが不可欠

トゥレット障害はあまり知られていない精神・神経疾患で、悪い癖やしつけが足りないなどと周囲から誤解されることが少なくありません。

そのため、本人だけでなく周囲の人たちがチック障害を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身に付けることが求められます。病気について学び、正しい対応法などを学ぶことを心理教育といいます。保護者や周囲に対するトゥレット障害における心理教育は次のようになります。

・チックは運動を調整する脳機能の特性やなりやすさが基盤にあり、親の育て方や本人の性格に問題があって起こるの
ではない。
・チックの変動性や経過の特徴を理解し、些細な変化で一喜一憂しない。
・チックを悪化させるかもしれない状況があれば、その対応を検討する。
・チックを本人の特徴の一つとして受容する。
・チックのみにとらわれずに、長所も含めた本人全体を考えて対応する。
・チックや併発症及びそれに伴う困難を抱えつつも本人ができそうな目標を立て、それに向かって努力することを勧める。
(トゥレット障害を含むチック障害  発達障害者支援関係報告会 金生由紀子)

出典:http://www.rehab.go.jp/ddis/?action=common_download_main&upload_id=1106
また、小学生以上でトゥレット障害のある人が生活する上で生じる困難に対する理解をサポートする教材として、次のようなものがあります。心理教育を通してトゥレット障害に対する理解を深めましょう。

まとめ

もしトゥレット障害の症状が見られたら、まずは専門機関での相談・受診をおすすめします。早期から適切な支援を行うためには、自分たちの判断ではなく、専門家に相談するのが一番です。

仮にトゥレット障害ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえることが多いので、一度相談してみることをおすすめします。
チックをする子にはわけがある―トゥレット症候群の正しい理解と対応のために
日本トゥレット協会 (編集)
大月書店
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