IQ(intelligence quotient:知能指数)とは何か
今回は、"IQ (知能指数)"についてお話しします。
ウェクスラーによれば、「知能は目的を持って行動し、合理的に考え、効率的に環境と接する個人の総合的能力」と定義されています。知能検査には、主にWISC(ウェクスラー式)や田中ビネーがあります。その検査結果ではIQが算出され、発達障害の診断にも使われています。WISCのIQは、全検査IQと下位検査の言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリ指標、処理速度指標の4つの群に分類されています。
【全検査IQ】
・全体の知的能力の年齢相応の発達水準を推測
【4つの群指数】
・言語理解指標は、言語概念形成、言語による推理力・思考力、言語による習得知識
・知覚推理指標は、非言語による推理力・思考力、空間認知、視覚-運動協応
・ワーキングメモリ指標は、聴覚的ワーキングメモリー、注意、集中
・処理速度指標は、視覚刺激を速く正確に処理する力、注意、動機づけ、視覚的短期記憶、筆記技能、視覚-運動協応
この4つの群指数の得点にばらつきがあることをデコボコがある、つまり、発達障害の疑いがあると言われているわけです。しかし、それらの検査で出た得点自体を重視するのではなく、その得点がそのお子さんの行動や認知、性格、生活様式にどのように反映されているのか、今後どのように対処すればいいのかについて検討しなければなりません。例えば、処理速度指標の得点が低い場合には、視覚情報の処理が苦手です。雑談場面では、相手の表情の動きが分からず、会話の雰囲気についていけなかったり、授業でも板書が困難だったりします。ワーキングメモリ指標の得点が低い場合では、聴覚情報の処理が苦手です。さっき言われたことを覚えていない為いつも同じことで叱られたり、対人場面ではボケっとしているかも知れません。
では、なぜ4つの群指数のバランスが悪いと、さまざまな問題が生じてくるのでしょうか。それは頭の中で4つの群指数の歯車が噛み合いながら回っているからです。油を注してある歯車(得点の高い群指数)はくるくる回り、錆びている歯車(得点の低い群指数)は回りづらいのです。錆びている歯車を使わないような環境であれば、問題は生じません。
授業の板書のような場面では、主に処理速度指標の歯車を使用しますが、錆びていてはなかなか思うようになりません。その場合、処理速度指標の歯車を外し、残された3つの歯車で対処すればいいわけです。ワーキングメモリ指標をメインで回し、先生の言葉(音声情報)を文章にすることを優先するという方法が有効な場合もあります。また、知覚推理指標の歯車をメインで回し、授業に関連することを推理しながらノートを取ることが有効な場合もあります。このように板書という一つの例をとってみても対処は十人十色です。全検査IQがある程度高いのであれば、既に低いところを補いながら生活していることも考えられます。しかし、普段から得意な3つの歯車だけで物事に対処していると、思い込みやこだわり、勘違い等の認知の歪みを示すことも少なくありません。自身の行動の結果と認識にズレが生じることがあります。もっと出来そうな気がするのに思うように出来なくてイライラするとか、何度も同じことで怒られてしまいイライラするとか、理想と現実のギャップから被害者意識や加害者意識、正義感、自責感が高くなって苦しくなる等さまざまです。知能検査によって、お子さんの得意な所も苦手な所も見つけることができるかも知れませんが、日常生活の様子も合わせながら解釈し、同時に心も理解しながら対処する必要があると思われます。IQとは何かと聞かれると、単に頭が良いとか悪いと思われがちですが、今回は少し専門的な視点をお伝えすることが出来たでしょうか。
IQとは何か
教室の毎日
21/01/16 09:43