こんにちは。都筑区放課後等デイサービス FORTUNAです。
トランポリンの3回目です。
前庭感覚に問題がある場合にトランポリンは有効だと言われています。くどいのですが、前庭感覚についてもう一度おさらいさせてください。
まず原始感覚と識別感覚から。
原始感覚とは身体の保持や操作をし、安定させるための感覚で、識別感覚とは周りの状況をいろいろ判断する感覚、すなわち5感(視覚、聴覚など)であること、そして原始感覚の中には固有感覚と前庭感覚があり、前庭感覚は平衡感覚やバランス感覚と呼ばれていることはお伝えしました。
前庭覚を司る器官は、ヒトの耳の奥には音を感じ取る蝸牛、内耳と呼ばれる身体のバランスをとる耳石器と身体が回転する刺激により身体がどれぐらい動いたかを感じ取る三半規管というものを指すと考えてください。
耳石器は蝸牛と三半規管の間にあり、そこには毛の生えた細胞(有毛細胞)がありその上に耳石(小さなカルシウムの粒)がのっかっている状態で存在しています。(非常にやわらかいブラシの上に石鹸がのっているような感じと想像してください)重力がかかったり、角度が変わると耳石の重みで毛が傾いて有毛細胞が刺激を受けて興奮し、どの方向を向いているかという情報が脳のバランスの中枢である前庭神経核に送られるのです。(石鹸が前に行ったり後ろに行ったりしたらブラシの毛が動くイメージです。毛が動くと刺激が入り、動いていますよ!という情報が脳に送られるのです)
以前、動的・静的バランスのお話しをしたと思います。(運動中など積極的に動いている状態=動的バランス、おとなしく姿勢良く座っている=静的バランス)どちらの場合においても前庭感覚が刺激を感知し揺れや傾きなどを感じるとバランスをとるために全身の骨格筋が筋緊張を起こして身体のバランスを取ったり、正しい姿勢や身体に負担が少ない姿勢でいられるための反射(姿勢反射:前庭脊髄反射)が起こるのです。
この静的バランスを取っているときは前庭感覚が揺れや傾きを感じにくいので、前庭感覚が未発達の場合は、反射が上手く起こらないことがあります。結果として「姿勢が悪い」「じっとできない」というように思われてしまうこともあるのです。
このように前庭脊髄反射が上手く働かないと姿勢の保持が難しいのです。また、これと同様にこの前庭覚が揺れを感じると、そのままにしていると見えているものがブレてしまうので、これは大変!と眼にも緊急指令が送られ、眼の機能を正常に保ち視界を安定させるために補正する反射が起こります。これを前庭動眼反射といいます。 前庭覚が未発達であると、この眼の補正機能である前庭動眼反射も適切に発達しません。結果、キャッチボールが上手くできなかったり、黒板の文字をノートに上手く書き写せないといった状態が起こることがあるのです。
発達障害の中の学習障害(LD)があると言われる子どもたちにも前庭動眼反射が見られにくいことがあります。
その他にも人形の目(目は常に顔と正反対の方向に動いて、顔が動いても視線<目の向いている方向>がぶれない仕組みになっています)この反射(前庭眼反射)は最も古い原始反射で、顔を左⇒右に振ればほぼ同時に右⇒左に動きます。
このようにヒトの身体はバランスを保持するためにさまざまな仕組み(反射)を備え、それが徐々に発達していくのです。
成人でもこの反射が上手く発動されなかったときに空間認識のズレが生じて、頭痛やめまいが起こったりすることもあるのです。
ということで、ようやく、トランポリンの話にたどり着きました。
神経系の発達には刺激を入れることが不可欠です。感覚鈍麻(低反応)の子どもにはその刺激が入りにくいことがあったり、より強い刺激を求める傾向があります。しかし、神経系が未発達の子どもは自分の力以上の刺激を入れることが上手くできません。
このような子どもの状態においてトランポリンは、飛んだり跳ねたりして楽しい動き(運動ができる)のうえに自分がコントロールできない力が発生し、先ほど述べた前庭感覚に自然と強い刺激を入れることができるので有用とされているのです。
しかし、未発達の度合いが強くなかなか刺激が入らない場合もありますし、刺激が足りないと感じられることもあります。そういった場合は、安全面を第一に考慮して先生たちが補助しながら、その子どもをよく観察しその子どもに適切と考えられる刺激の量を入れてあげることが非常に重要なのです。
<結論> 前庭感覚が未発達の子どもに適した刺激を入れるためにトランポリンは非常に有効である。しかし使用する場合は先生たちが安全性を絶対に担保することが必要である。ということです。(飛び跳ねている最中にトランポリンから跳ね落ちて骨折することもあり得ます)以上、長い話にお付き合いいただきありがとうございました。
都筑区放課後等デイサービス FORTUNA
都筑区放課後等デイサービス FORTUNA トランポリン③
研修会・講演会
22/01/25 17:54