こんにちは、FORTUNAの公認心理師のKです。本テーマの最終回となる今回は、暴言・暴力が見られる児童の背景を、社会的要因から考えてみたいと思います。
<社会的要因>
ASDにおける中核症状には対人コミュニケーションの苦手さがあると言われています。これにより生じるのが、「理解される体験の少なさ」です。教育心理学が専門の杉山教授は2021年の論文にて、「人は自分の感情表現を受け止めてもらう体験を通して、初めて自らの感情を表現することに安心感を覚え、その感情を意識化できる。」と述べています。つまり、理解される体験が少ないと、自身の感情を把握することが難しいため、上手く表現することも難しいということです。これは大人でも経験したことがあるのではないでしょうか。例えば友人や恋愛関係において、自分の嫌いな面も相手に受け入れられることで、安心感を覚えたり、「自分ってこれでいいんだ」と自分の嫌いな一面も受け入れられるようになったりしたことがあるかもしれません。それと同じように、子どもも理解される体験が少ないと、「自分は自分のままでいいんだ」という安心感を得ることができず、外界との間に壁を作ったり、自分を守るために攻撃的になったりすることもあります。自分の内面を出すことに安心感が持てないため、感情を意識化することも難しく、意識化できないものは言葉によって表現することも難しいです。そのため、暴力や暴言といった形で不快な感情が表出されやすくなると考えられます。
<まとめ>
3回の投稿を通して、BPSモデルに基づき子どもの暴言・暴力の背景として「ASDの特性から生じる社会への理不尽さ」「自分に自信を持つという発達課題」「理解される体験の少なさ」といった要因について考えました。心理学的な視点から捉えると、暴言・暴力は「困っている子どもからのSOS」だと考えられます。感情を適切に表現する方法が十分に身についていない中で、自分自身の器がいっぱいになり、抱えきれずに溢れ出したものが暴言や暴力として表出されているかもしれません。
次回は、このような背景要因から考えられる、心理学的な視点から見た支援方法について書いていきます。
都筑区放デイFORTUNA 心理学から見た子どもの暴言③
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25/05/15 12:55