木の机の上には、色鉛筆がずらりと並んでいる。窓の外は、薄暗くなり始めた夕暮れ時。スタッフは、生徒一人ひとりの作品を丁寧に見て回っている。
「シマアジ、よく描けてるね! 鱗の輝きが、まるで生きているみたい」
先生の声に、私は顔を上げた。私の隣には、小さな男の子がいた。彼は、シマアジの絵をじっと見つめながら、照れくさそうに笑っていた。
「あのね、お魚屋さんで、シマアジを見たんだけど、すごく綺麗でね。キラキラ光ってて、目が優しいの。だから、描きたくなったんだ」
男の子は、そう言うと、また絵に視線を戻した。
「シマアジは、美味しいよね」
私は、そう呟く。すると、男の子は、驚いたように顔を上げた。
「知ってるの?」
「うん。お刺身で食べたことがあるよ」
「へー、どんな味がするの?」
「うーん、美味しいよ。でも、もっと美味しいのは、この絵かな」
私は、そう言って、男の子の絵を指さした。
「えー、そんなことないよ!」
男の子は、照れながら、そう言った。でも、彼の目は、嬉しそうに輝いていた。
「でも、本当だよ。この絵には、シマアジへの愛情がいっぱい詰まっている。だから、すごく美味しいんだ」
私は、そう言って、男の子の頭を優しく撫でた。
「ありがとう」
男の子は、小さく呟いた。
教室の窓の外は、完全に暗くなった。でも、教室の中は、色鉛筆の香りが漂い、子供たちの笑い声で、温かく満たされていた。
美術教室【好きな絵を描こう】
教室の毎日
25/04/11 21:25
