夕暮れ時、ひみつきちの窓辺には茜色の空が広がり、柔らかな光が舞い込んでいた。 天井から吊るされた、大小様々なゴム風船。 中には、ふっくらと膨らみ、虹色に輝くものもあれば、少しばかりへこんでしまったり、形が歪なものもあった。まるで、個性豊かな生き物たちが空を舞っているようだった。
風船を膨らませる作業に、子供たちは真剣に取り組んでいた。 中には、息を吹き込むだけで、見事に丸々と膨らませる子もいれば、何度挑戦しても、プシューと音を立ててしぼませてしまう子もいた。 それでも、子供たちは諦めずに、何度も挑戦する。 小さな手のひらから、一生懸命に息を吹き込む姿は、何だか健気だった。
それぞれの個性、そしてそれぞれのペース。 風船ひとつにも、彼らの個性と努力が表れていた。 うまくいかない子には、優しい声がかけられる。 誰かが失敗しても、誰も笑ったりせず、温かい励ましの言葉が飛び交う。 まるで、小さな森の中で、助け合いながら暮らす妖精たちのようだった。
そして、夕焼けが深い紫に変わる頃。 ひみつきちは、静かな温かさで満たされていた。 口数が少ない子も、今日は少しだけ多く笑っていた。 普段は活発な子が、静かに風船を見つめていた。 それぞれの心が、少しずつ、少しずつ、繋がり合っているようだった。
その日のひみつきちは、風船のように、軽やかに、そして温かく、幕を閉じた。 明日もまた、この場所で、子供たちの笑顔が咲くのだろう。 空には、明日もたくさんの風船が舞い上がり、夕焼け空に彩りを添えるだろう。
風船🎈
教室の毎日
25/06/20 21:38
