ADHD(注意欠如・多動性障害)の治療法・療育法は?治療薬は効果的なの?

2016/06/11 更新
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ADHDの治療法にはどんなものがあるのでしょうか?またどのような療育法が適しているのでしょうか?ADHDの治療薬の効果や副作用、薬以外の治療法としての療育などについてご紹介します。様々な治療法のメリット・デメリットを知り、本人が生きやすい環境を作るように心がけましょう。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
専門行動療法士
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
公認心理師
目次

ADHDの治療はいつから始めるべきなの?

どのような症状であれば治療が必要?

ADHDの人には、集中することができずにすぐに気が散ってしまう「不注意」、落ち着いてじっとしていることができず体を動かしてしまう「多動性」、そして順番が守れなかったり思いついたことを考えずにすぐに行動に移したりする「衝動性」の3つの特徴が表れます。

小さい子どものうちは、ADHDではなくてもこのような行動をとることもありますが、このような特徴が年齢や発達に不釣り合いなほど過度に見られ、社会的な活動や学業に支障が出る場合には、保健センターや子育て支援センター、児童発達支援事業所などの専門機関に相談することをおすすめします。
大人の場合には、同じミスばかり繰り返したり、大事な約束を頻繁に忘れてしまったり、整理整頓ができないなど、社会生活や日常生活に支障をきたす症状がある場合には、発達障害者支援センターなどの専門機関や精神科などの医療機関で相談してみましょう。

治療を始める年齢は何歳?

治療には、療育や教育といった心理・社会的アプローチと、薬物療法などの医療的なアプローチがあります。

ADHDは先天性の発達障害ですが、診断は症状が出てからとなるため、治療や療育をはじめる年齢はまちまちです。一般的には療育や教育は年齢には関係なく、いつからでも受けることができますが、困りごとが出てきたり、障害に気づいた時点で早めに取り組むことが大切です。

療育によるADHDの治療

ADHDの根本的な完治は現在の医療では難しいですが、ADHDの症状を緩和させるために療育という手法を取ることができます。療育とは、社会的な自立をめざしてスキルを習得したり、環境を整えるアプローチのことです。療育法で学ぶことは主に環境調整、ソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニングの3つです。今回はこの3つの具体的な内容をお伝えします。

■環境調整
この環境は、教育現場や家庭における環境をさします。たとえば集中が難しい場合は、机の周りに無駄な刺激物を置かないようにするなど、教室や身の回りの環境を調整します。片付けが苦手な子の場合に、元の位置に物を戻しやすいようにおもちゃ箱を工夫する、視覚過敏がある子の場合、照明を工夫する、などがあげられます。

■ソーシャルスキルトレーニング(SST)
ソーシャルスキルトレーニングは、略してSSTとも呼ばれます。ここでは様々な特性をもつ本人が社会や生活での適切な行動をうまくできるようにトレーニングしていきます。対人関係をうまく行うための社会生活技能を身につけるためのトレーニングを遊びなどを用いたロールプレイを通じて行います。

■ペアレントトレーニング
保護者が障害のある子どもとの関わり方や、子育ての工夫の仕方を学ぶプログラムです。注意の仕方、子どもの行動に対するアドバイスの仕方、本人の自己肯定感を育む褒め方など、子どもとの接し方を中心に学びます。

このような療育は、発達障害専門の病院や公立・民間の「児童発達支援」「放課後等デイサービス」などで学ぶことができます。療育によって、本人の生きづらさを緩和し、また良い部分を磨いていくことができます。

ADHDの薬物療法は?

治療薬でのADHDの治療は、不注意・多動性・衝動性の症状を緩和する効果があります。しかし、この効果は服薬している間にとどまります。薬の効き方は個人によって違いがあり、また副作用の出方もまた同様です。そのため、医師と相談しながら使用する必要があります。
ADHDで使われる主な治療薬は以下の3種類があります。

■ストラテラ(アトモキセチン)
ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)です。日本でADHDに効果効能があるとして承認されている薬のひとつで、効き目が出るまで約1ヶ月かかりますが、24時間効果が持続します。副作用としては食欲不振があると言われています。

■コンサータ(メチルフェニデート)
中枢神経を刺激して、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの調節をする薬です。飲んで2時間後ぐらいから効果を感じることができ、効き目は12時間程度持続します。副作用としては、頭痛・寝つきが悪くなる・食欲不振などがあると言われています。しかし服用を続けて薬に慣れてくると、副作用が軽減することもあるそうです。

■インチュニブ
症状に応じて、上記以外の薬が処方される場合があります。人によって合う合わないもあり、副作用が見られこともあります。薬に頼りすぎたり、また自己判断で服用をやめたりしないようにしましょう。医師としっかり治療方針を相談した上で、用法用量を守って使用することが大切です。また、薬物療法のみで子どもを落ち着かせるのでははく、環境調整や落ち着いている時にスキルトレーニングなどを行っていきましょう。(※1)

治療の終わりと二次障害

ADHDの治療の終え方

ADHDの治療終了と判断される基準は、学校・職場や家庭での様々な困難が十分な期間改善されたかどうか、そして治療を終了しても長期的に改善された状況が続く見込みがあるかが検討されます。しかし、経過を観察していく中で環境が変わったり状況の変化に本人が対応できず、治療を再開することも少なくありません。ADHDは必要な時に必要な治療・サポートを受けることが大切なので、一度治療期間を終えても定期的に医師の検診を受けることをおすすめします。

ADHDの二次障害や合併症、併存症の予防と治療

ADHDの人が適切な治療やサポートを受けられない場合、ADHDの主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。

このような合併症を、一般的には「二次障害」と言うこともあります。
また、ADHDの人には、他の発達障害が「併存症」として一緒に現れることも多いことが知られています。

注意すべき合併症の症状・状態には以下のようなものがあります。
・うつ病
・不安障害
・反抗挑戦性障害
・不登校やひきこもり
・アルコールなどの依存症 など
このような気分障害などの症状や行動上の問題は一般的に思春期に見えやすいと言われています。その子にあった対応をせずに特性に対して叱ったり放っておいたりすると、自信を無くしたり、無気力になってしまったりする可能性があります。その状態が長く続くと、二次障害や合併症を起こしてしまう場合があります。まずは本人の周りの環境を整え、生きづらさを少しでも減らせるように周りは努めましょう。また、これらの二次障害・合併症に対する治療の一つとして、心理療法である認知行動療法の有効性が示されています。

一方、ADHDと一緒に現れることの多い併存症として、以下のものが知られています。
・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
・学習障害(LD)
・てんかん
・トゥレット症候群 など

アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)ではADHDと自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の併存を認める診断基準に修正されましたが、これらの疾病や障害と併存することで、症状がわかりづらく複雑になり、また対処が難しくなる場合もあります。専門医の診断・治療を受けながら一人一人の症状に合わせて適切な対処をすることが重要です。

ADHDのある子どもとの関わり方

ADHDを根本的に治療することはできません。しかし、ADHDによる困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や、ADHDの症状を緩和する治療薬は存在します。また環境調整をしたり、周囲が普段からの対応法を考えることによって、本人が生きやすい環境を作ることも可能です。
ADHDのある人はその特性ゆえに、生活する中で困難にぶつかることが多くなりがちです。同じミスを繰り返して何度も叱られたり、順番やルールを守れずトラブルになったりすることがあります。中には自分に自信をなくしたり、周りに敵意を持ってしまうこともあります。こういった日々の困難さが引き金となって、うつ病やひきこもりなどのいわゆる二次障害や併存症、合併症が発現することがあるのです。特に思春期以降の不安障害や気分障害の予防が大切になってきます。

治療や療育だけではなく、親や周りの人が接し方を変えるだけでADHDの特徴が軽減されることもあります。
ADHDの症状を緩和するのに加え、二次障害や併存症、合併症のリスクを極力なくすためにも、周りがADHDについてよく理解し、本人と一緒に、どのように対応すれば本人が行動しやすいか、生きやすいかなどを考え、生活における困難を解消する最善の方法を見つけていきましょう。(※2)

ADHDのことをもっと知るためのリンク集

ADHDかも…?と思ったときに、相談できる機関や、お子さんへの関わり方、サポートの仕方を知りたいときは、次のコラムが参考になります。
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発達障害 僕にはイラつく理由がある!
かなしろ にゃんこ。(著)
講談社
図解 よくわかるADHD
榊原 洋一 (著)
ナツメ社
ADHD 注意欠陥多動性障害の本
司馬 理英子 (著, 監修, 監修)
主婦の友社

参考文献・サイト

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