治療の終わりと二次障害

ADHD(注意欠如多動症)の治療の終え方

ADHD(注意欠如多動症)の治療終了と判断される基準は、学校・職場や家庭での様々な困難が十分な期間改善されたかどうか、そして治療を終了しても長期的に改善された状況が続く見込みがあるかが検討されます。しかし、経過を観察していく中で環境が変わったり状況の変化に本人が対応できず、治療を再開することも少なくありません。ADHD(注意欠如多動症)は必要な時に必要な治療・サポートを受けることが大切なので、一度治療期間を終えても定期的に医師の検診を受けることをおすすめします。

ADHD(注意欠如多動症)の二次障害や合併症、併存症の予防と治療

ADHD(注意欠如多動症)の人が適切な治療やサポートを受けられない場合、ADHD(注意欠如多動症)の主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。

このような合併症を、一般的には「二次障害」と言うこともあります。
また、ADHD(注意欠如多動症)の人には、他の発達障害が「併存症」として一緒に現れることも多いことが知られています。

注意すべき合併症の症状・状態には以下のようなものがあります。
・うつ病
・不安障害
・反抗挑戦性障害
・不登校やひきこもり
・アルコールなどの依存症 など
このような気分障害などの症状や行動上の問題は一般的に思春期に見えやすいと言われています。その子にあった対応をせずに特性に対して叱ったり放っておいたりすると、自信を無くしたり、無気力になってしまったりする可能性があります。その状態が長く続くと、二次障害や合併症を起こしてしまう場合があります。まずは本人の周りの環境を整え、生きづらさを少しでも減らせるように周りは努めましょう。また、これらの二次障害・合併症に対する治療の一つとして、心理療法である認知行動療法の有効性が示されています。

一方、ADHD(注意欠如多動症)と一緒に現れることの多い併存症として、以下のものが知られています。
・ASD(自閉スペクトラム症)
・LD・SLD(限局性学習症)
・てんかん
・トゥレット症候群 など

アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)からADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の併存を認める診断基準に修正されましたが、これらの疾病や障害と併存することで、症状がわかりづらく複雑になり、また対処が難しくなる場合もあります。専門医の診断・治療を受けながら一人一人の症状に合わせて適切な対処をすることが重要です。

ADHD(注意欠如多動症)のある子どもとの関わり方

ADHD(注意欠如多動症)を根本的に治療することはできません。しかし、ADHD(注意欠如多動症)による困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や、ADHD(注意欠如多動症)の症状を緩和する治療薬は存在します。また環境調整をしたり、周囲が普段からの対応法を考えることによって、本人が生きやすい環境を作ることも可能です。
ADHD(注意欠如多動症)のある人はその特性ゆえに、生活する中で困難にぶつかることが多くなりがちです。同じミスを繰り返して何度も叱られたり、順番やルールを守れずトラブルになったりすることがあります。中には自分に自信をなくしたり、周りに敵意を持ってしまうこともあります。こういった日々の困難さが引き金となって、うつ病やひきこもりなどのいわゆる二次障害や併存症、合併症が発現することがあるのです。特に思春期以降の不安障害や気分障害の予防が大切になってきます。

治療や療育だけではなく、親や周りの人が接し方を変えるだけでADHD(注意欠如多動症)の特徴が軽減されることもあります。
ADHD(注意欠如多動症)の症状を緩和するのに加え、二次障害や併存症、合併症のリスクを極力なくすためにも、周りがADHD(注意欠如多動症)についてよく理解し、本人と一緒に、どのように対応すれば本人が行動しやすいか、生きやすいかなどを考え、生活における困難を解消する最善の方法を見つけていきましょう。(※2)

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