【ADHD(注意欠如多動症)】幼児期から成人期まで、年齢別の特徴や症状の現れ方を解説します【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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ADHD(注意欠如多動症)は不注意、多動性、衝動性の3つの症状がみられる発達障害の一つです。最近の研究では、ADHD(注意欠如多動症)の症状がある人は成人の2.5%といわれています。周りに理解されづらく、仕事や学業、日常のコミュニケーションに支障をきたすことがあります。この記事では年齢別に見たADHD(注意欠如多動症)の症状の現れ方について解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

ADHD(注意欠如多動症)とは?

ADHD(注意欠如多動症)は不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。

ADHD(注意欠如多動症)は、大きく3つのタイプに分けることができ、人によって症状の現れ方の傾向は異なります。また、性別によっても多いタイプが変わると言われています。

1.多動性-衝動性優勢型:多動と衝動の症状が強く出ているタイプです。
2.不注意優勢型:不注意の症状が強く出ているタイプです。
3.混合型:多動と衝動、不注意の症状が混ざり合って強く出ているタイプです。
参考:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
https://www.amazon.co.jp/dp/4260019074

年齢別に見たADHD(注意欠如多動症)の症状の現れ方

乳児

■生後すぐから診断ができるの?
ADHD(注意欠如多動症)の症状は未発達の乳児では、診断は困難です。ですから、生後すぐにADHD(注意欠如多動症)の診断が出ることはありません。

幼児

■トラブルの原因となる行動をとることが多い
ADHD(注意欠如多動症)のある子どもは、成長するに従い、以下のような行動をとる場面が目立つようになります。ただ、前述の通り、ADHD(注意欠如多動症)の症状はほかの発達障害の症状と共通するものもあります。必ずしもADHD(注意欠如多動症)があるとはかぎらないので、特徴はあくまで参考程度にしましょう。

・じっとしていられない
・癇癪(かんしゃく)を起こすことが多い
・ものを壊したり、乱暴な遊びを好む
・一つの遊びが短い
・急に飛び出す
・指示が入りにくい
このような様子から専門機関に相談したり、医療機関を受診して気づく場合があります。


■しつけの問題なの?
ADHD(注意欠如多動症)は、しつけや育て方が原因ではありません。
落ち着きがなかったり癇癪を起こしやすかったりといった特性をしつけの問題と誤解されることも、まだまだ少なくはありませんが、ADHD(注意欠如多動症)は先天的な脳の機能障害によるもので、しつけや育て方の問題ではないことが分かっています。

学齢期

■症状が顕著に現れてくる
ADHD(注意欠如多動症)のある子どもが小学校に入学すると、着席しての学習や集団行動が求められるようになることもあいまって、以下のような症状が目立つことがあります。

・授業中でもじっと座っていることができず、歩き回ったりする
・授業中勝手に発言してしまう
・注意力が散漫になって、興味の対象も次々と変化する
・物を忘れたり、なくしたりすることが多い
・突然話しかけてほかの人の邪魔をしたり、話しかけられてもぼーっとしてうわの空に見られる
・突発的な行動をおこすことがあり、自分の怒りの感情をコントロールできない
・友達と仲良くできずトラブルになってしまう

■結果的に周りから問題視されることも
何度も同じことを繰り返し注意されたり、授業態度などから周りに問題視されたり、怠けていると思われたりすることがあります。しかし、本人からすれば悪気があってしていることでもなければ、怠けているわけでもありません。

■ADHD(注意欠如多動症)の症状が現れる時期
小学校に上がるころになると、ADHD(注意欠如多動症)の症状が顕著に現れるため診断されることも増えてきます。DSM-5-TRによるとADHD(注意欠如多動症)は12歳前までに症状が現れるとされていますが、この年齢でというわけではなく、就学前後から症状がはっきり分かる場合には比較的はやく診断されます。また、思春期や成人の方の場合も12歳以前の症状について聞き取りがなされます。

■併存症状に注意
LD(学習障害/限局性学習症)などの発達障害との併存症状が目立ってくることがあります。また、ADHD(注意欠如多動症)はASD(自閉スペクトラム症)と症状が重なり合う部分も多く、対人関係がうまく築けないという症状がある場合もあります。ADHD(注意欠如多動症)の症状がみられる人はほかの発達障害を併存している可能性もありますので、気になる場合は専門機関に相談しましょう。

思春期

思春期になると、立ち歩いたり突然周りの人に話しかけたりといった、幼児期や小学生時代に目立っていたADHD(注意欠如多動症)の特性による行動は落ち着いてくることも多いようです。

しかし、
・親・教師への強い反抗
・友人とうまく付き合えず、トラブルになる
・ルールに従うことができない
などの行動がみられることがあります。

■抑うつや不安に注意
思春期になると、他人と自分を比べてしまうことなどで、悩みを抱えることも多くあります。ADHD(注意欠如多動症)のある子どもも例外ではなく、他人と自分を比べるようになります。完璧主義の傾向が強いと“できないこと”に過敏になることもあります。そして、他人にはできて自分ができないことに抑うつや不安を感じてしまうこともあります。

それによって次のような状況に陥ってしまうこともあります。
・勉強への意欲の低下、学力の低下が著しくなる
・やる気がなく投げやりな態度
・自分の世界に引きこもりがちになる場合もある

知的機能に問題がない場合でも、不注意の特性が強いと、集団での学習に集中できず、学力の低下に結びつくこともあります。また衝動性などから対人関係がうまくいかず不登校やひきこもりなどの状態になることもあります。

■薬の服用を嫌がることも
ADHD(注意欠如多動症)があることによる生活上の困難を和らげるといわれる薬は複数あります。しかし、自分の障害を受け止めることができず、薬の服用を避けたり、自己判断で量を変えて服用してしまうこともあります。思春期の不安定な気持ちに寄り添いながら、家族が上手にサポートしましょう。
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成人期

■大人になるとADHD(注意欠如多動症)はどうなるの?
子どものころにADHD(注意欠如多動症)と診断された人の中には、成長につれて症状が目立たなくなったり、軽くなったりする人もいます。自分の特性を理解し、苦手な場面にもどのように対処するかを学ぶことで、日常生活の困難を乗り越えている人もいると考えられます。

ですが、ADHD(注意欠如多動症)のある大人は、子どものころより困難を感じることが多いようです。
・親や教師のフォローがなくなる
・やることが多くなる
・大人としての行動や責任を求められる
など、周囲の環境の変化が大きいことがその理由と考えられます。

そのため、大人になって日常生活を送るのが難しくなった、と感じるADHDの人が多くいます。また、大人になってからADHDと診断を受ける人、診断を受けていなくとも同じ症状で困っている人も多くいます。

■大人のADHD(注意欠如多動症)に現れる症状
大人の場合、ADHD(注意欠如多動症)による症状・特徴にはどのようなものが多くみられるでしょうか。

・計画を立てたり、順序立てて仕事や作業を行ったりすることが苦手
・仕事の優先順位づけが困難
・細かいことにまで注意が及ばないので、仕事や家庭でケアレスミスが多い
・約束などを忘れたり、時間に遅れたり、締め切りなどに間に合わない
・片づけが苦手で乱雑になってしまう
・同時に多くの情報を取り入れるのが苦手なので、一度に多くの指示や長い説明をされると混乱する
・手間がかかったり、時間がかかったりして、集中が必要なものは後回しにしがち
・何かに「はまる」と、ほどほどで止めることができず、なかなか抜け出せない(読書やネットサービス、ゲームなど)
・長時間座っていることが苦手で、手足がむずむずしてくる

このような症状に対しては、周囲の理解を促しながら自分でさまざまな工夫やアイデアも紹介されています。
ADHDのある方の時間管理やスケジュール管理・タスク管理を解説
https://works.litalico.jp/column/developmental_disorder/021/

ADHD(注意欠如多動症)をもっと知るためのリンク集

「もしかしてADHD(注意欠如多動症)がある?」気になる症状があるときには、次のコラムが参考になります。
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大人のADHDの困りごとへの対策を具体的に解説!職場ではADHDを公表したほうがいい?|LITALICO仕事ナビ
https://snabi.jp/article/215
大人のADHDのある人が受けられる就労支援・経済的支援とは?|LITALICO仕事ナビ
https://snabi.jp/article/216
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