年齢別に見た広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の特徴の現れ方

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の症状は、成長過程と環境の変化によって変化して行きます。ここでは年代別に現れやすい広汎性発達障害の症状を紹介します。

幼児期(0歳~小学校就学)

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)は発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳幼児では、その特徴となる症状が分かりにくい場合がほとんどです。ですから、生後すぐに広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。

■周囲にあまり興味を持たない傾向がある
視線を合わせようとしない子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないことが多いです。障害がない子が興味をあるものを指でさして示すのに対し、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の子は指さしをして興味を伝えることをしない傾向があります。

■コミュニケーションを取るのが苦手
知的障害(知的発達症)を伴う広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の子は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。障害がない子が友達とごっこ遊びを好むのに対し、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の子は集団での遊びにあまり興味を示さないことが多いです。

■強いこだわりを持つ
興味を持つことに対して、同じ質問を何度もすることが多いです。また、日常生活においても様々なこだわりを持つことが多いので、ものごとの手順が変わると混乱してしまうことが多いです。

児童期(小学校就学~卒業)

児童期には、主に小学校での集団生活や学習において、以下のような特徴が現れやすくなります。

■集団になじむのが難しい
年齢相応の友人関係がないことが多いです。周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう子が多い傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子も多いです。

■臨機応変に対応するのが苦手
きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向にあります。

■「どのように」「なぜ」といった説明が苦手
言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像するのも苦手です。そのため、説明ができないこともあります。

思春期(小学校卒業~)

中学生以降の思春期では、以下の様な特徴が現れやすくなります。

■不自然な喋り方をする
抑揚がない、不自然な話し方をする子が多いです。これはアスペルガー症候群(ASD/自閉スペクトラム症)の子に多いと言われる特徴です。

■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手
上記でも述べましたが、コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを考えるのも苦手な傾向にあります。

■雑談が苦手
目的の無い会話をするのを難しく感じる子が多いです。

■興味のあるものにはとことん没頭する
広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の子は上でも述べたように物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の診断基準

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の症状・特徴チェック

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)について、気になる症状がある場合は医師に相談し、診断を受けることもできます。医療機関での診断は、アメリカ精神医学会の『DSM-5-TR』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』改訂第5版)による診断基準によって下されます。

医療機関では、診断基準に基づいたテスト、生育歴の聞き取り、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答など、しっかりと話を聞いた上で総合的に判断されます。原因や治療は「自閉症(ASD/自閉スペクトラム症)」と共通するパターンが多いです。個々のニーズにあった療育や支援、投薬が必要となってきます。

DSM-5-TRでは、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の診断名の下にあったレット障害をのぞくすべての障害名が、自閉症スペクトラム障害という名に統合されました。そのため、今後は広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の診断は少なくなると思われます。
広汎性発達障害(PDD)の診断・検査の内容は?診断は受けるべき?【専門家監修】のタイトル画像

広汎性発達障害(PDD)の診断・検査の内容は?診断は受けるべき?【専門家監修】

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の疑いを感じたらどうすればいい?

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の診断は専門機関・医療機関での総合的な検査が必要です。自己判断はさけ、上記の基準の中に当てはまる項目や気になることが多い場合は、専門機関での相談・検査をおすすめします。

特に見た目から判断しづらい広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の場合、大人になるまで気づかないケースも多々あります。障害と知らずに様々な困難に直面することで自信をなくしたり、周りからいじめにあうなど辛い思いをする人も多くいます。早めに障害を発見し対応することで、その後の人生の困難が少なくなります。

また、早めに障害を理解して対応することは、うつ病や精神障害などの二次障害の予防にもなります。少しでも広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の症状や特徴が見られたら、早めに対処することが大切です。

診断を受ける前にまずは専門機関で相談を

医療機関での診断は、子どもの場合は、発達障害の専門外来がある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科で診断がなされます。しかし、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)を診療できる専門の医療機関はまだまだ少ないのが現状です。いきなり専門医に行くのは難しいので、障害なのかな、と疑問を持った場合、まずは地域にある身近な専門機関で相談するようにしましょう。

子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター など

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など

知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関が場合には、電話での相談にものってくれることもあります。

以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。各地域の「発達障害者支援センター」に相談をして、障害の疑いがあれば、そこから専門の医療機関を紹介してもらう方法をおすすめします。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。
日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」
https://service.kktcs.co.jp/smms2/c/jscn/ws/jscn/List.htm?t=https://www.childneuro.jp/themes/childneuro/relation/licenselist_dd.html
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発達障害のある子どもへの療育の内容と効果、療育を受けられる施設を解説【専門家監修】

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