広汎性発達障害(PDD)の診断・検査の内容は?診断は受けるべき?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン

広汎性発達障害は自閉症やアスペルガー症候群を含む発達障害のグループです。最近では発達障害の認識も増えつつあり、子どもや自分が広汎性発達障害なのか気になる方も多くなってきています。今回は障害の特徴や専門機関での診断基準や検査の内容についてまとめました。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。
目次

広汎性発達障害(PDD)の主な症状

広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)の診断カテゴリで、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という障害が含まれています。

広汎性発達障害の症状として主に下記の3つが挙げられます。

1.社会性・対人関係の障害
人に関心を示さない孤立型、言われたことに何でも従う受動型、一方的に話し続ける積極・奇異型、横柄な態度を取る尊大型の主に4タイプに分かれます。孤立型の特徴としてよく言われるのが、視線を合わせない(避ける)などの症状です。

2.コミュニケーションや言葉の発達の遅れ
他人とのコミュニケーションや会話が苦手で、抽象的な言葉の意味や曖昧な表現、文脈を理解できていないなどの症状があります。言葉の発達が遅れる症状も見られるため、3歳になっても会話ができないということで障害を疑う親も多くいます。

3.行動と興味の偏り
ある特定の物事に強い興味やこだわりをみせることがあります。環境の変化や予定の変更を嫌がったり、普段はできていることも初めての場所だとできないなどの症状があります。その結果パニックを起こしてしまう場合もあります。こだわりが強く偏食になったり、同じ行動を長時間続けるなども見られます。

また、機械音やサイレンなど特定の音に苦痛を示したり、抱っこを嫌がったりするなど、聴覚や視覚などの感覚過敏が広汎性発達障害のある人の多くに見られると言われています。

※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
参考:ICD-11 | 世界保健機関(WHO)
https://icd.who.int/en/

広汎性発達障害はいつ分かる?診断の年齢は?

広汎性発達障害は、なんらかの先天的な遺伝要因と様々な環境要因に起因する何らかの障害が脳が発達する時期に起こり、それが成長段階で「広汎性発達障害」として発見されるとされています。要は先天的な素因によって起こる発達障害の一つとして医学的には捉えられています。広汎性発達障害は親のしつけや育て方の問題で起こっているわけではないことがわかっています。

広汎性発達障害は、だいたい3歳までの幼児期に何らかの症状が現れると言われています。広汎性発達障害の子どもをもつ親が、言語能力の遅れやこだわりなどの何らかの症状に気づく時期についても3歳未満が多いとされています。また、1歳半健診や3歳児健診などの乳幼児健康診断で広汎性発達障害を含む発達障害に関する何かしらの指摘があり、その後医師の診断により判明することもあります。

中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。思春期以降には、不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。

まだまだ認知度が低い発達障害ですが、本人に何らかの困りごとや症状があることに気づいた段階で早めに専門機関などで相談し、医療機関を受診するなどして、療育などの必要な支援を受けることが大切と言われています。

広汎性発達障害の診断基準は?

一般的に専門機関での診断はアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(※)による診断基準によって行われます。

アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』では広汎性発達障害の診断カテゴリ下にあったレット障害を除くすべての障害名が、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断カテゴリに統合されました。そのため今後「広汎性発達障害」という診断名は少なくなっていくと考えられますが、本記事では行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明しています。

以下は『ICD-10』における広汎性発達障害の診断基準になります。以下の基準の中で当てはまる項目が多い場合や気になる場合は、専門機関で相談することをおすすめします。
F84.2 レット症候群 Rett's Syndrome
 A.胎生期・周産期は明らかに正常,および生後5カ月までの精神運動発達も明らかに正常,および生下時の頭囲も正常であった.
 B.生後5カ月から4歳までの間に頭囲の成長は減速し、また5~30カ月の間に目的をもった手先の運動をいったんは獲得していたのに喪失すると同時に,コミュニケーション機能不全,社会的相互関係の障害を伴い,また歩行および/または体幹の協調運動障害/不安定さがあらわれる.
 C.表出性および受容性言語の重度の障害があり,重度の精神運動遅滞を伴うこと.
 D.目的をもった手先の運動を喪失時またはそれ以後にあらわれる。正中線上での常同的な手の運動(もみ手や手洗いのようなもの)があること.

F84.3 他の小児期崩壊性障害 Other childhood disintegrative disorder
 A.少なくとも2歳までの発達は明らかに正常であった.2歳時あるいはそれ以後に,コミュニケーション・社会的関係・遊び・適応行動について,年齢相応の正常な能力が存在していたことが診断に必要である。
 B.発症と考えられる時点において,それまでに獲得していた技能を明確に喪失していること.診断には臨床的に重要な技能について,次に挙げる領域のうち2項目以上の喪失(できなくなる場合があるだけではなく)が必要である.
 (1)表出性または受容性言語
 (2)遊び
 (3)社会的技能または適応行動
 (4)排尿または排便のコントロール
 (5)運動技能
 C.社会的機能の質的な異常が,次に挙げる領域のうち2項目以上に存在すること.
 (1)相互的な社会関係における質的異常(自閉症で定義した型)
 (2)コミュニケーションにおける質的異常(自閉症で定義した型)
 (3)常同運動や奇妙な運動を含む,行動や関心および活動性の,限定的・反復的・常同的なパターン
 (4)物や周囲に対する関心の全般的喪失
 D.障害は,広汎性発達障害の他の亜型,てんかんに伴う後天性失語(F80.3).選択制緘黙(F94.0),レット症候群(F84.2),統合失調症(F20.-)などによるものではない。

F84.4 精神遅滞[知的障害]および常同運動に関連した過動性障害 Overactive disorder associated with mental retardation and stereotyped movements
 A.重篤な過動が,活動性と中言い関する次の問題のうち2項目以上に明らかであること.
 (1)走ったり,跳んだり,全身を使った運動に示される,持続する落ち着きのなさ.
 (2)じっと座っていられない,常同的な活度に没頭しているときを除いて,ふつうは長くて数秒しか座っていられない(基準Bを参照).
 (3)静かにしていなければならない状況での強度の過動
 (4)めまぐるしく活動を変え,通常行動は1分未満しか続かない(時々,お気に入りの活動により長い時間を費やしても,除外しない.また,常同的な活動にひどく長い時間を費やすことがあっても,その他のときにこの問題が存在すればよい).
 B.行動や活動の常同的・反復的なパターンが,次のうち1項目以上に明らかであること.
 (1)固定して頻繁に繰り返される奇妙な運動,全身を使った複雑な運動ないし,手をひらひらとさせるような部分的な運動のいずれかがある.
 (2)過剰で意味のない活動の一定の形の繰り返し,単一の物体(たとえば流れる水)との遊びや,儀式的な行為(1人でしたり他人を巻き込んだり)など
 (3)反復する自傷行為
 C.IQは50以下.
 D.自閉的なタイプの社会機能障害はない.すなわち,次のうち3項目以上を示すこと.
 (1)社会的相互関係を調整するうえで,視線・表情・姿勢を発達的に適切に使用すること.
 (2)発達的に適切な,同世代の小児と関心や活動などを共有できる関係があること.
 (3)少なくとも時々は他人に慰めや情愛を求めていくこと.
 (4)他人の楽しみを時々は分けあうことができる.社会機能障害の他のタイプ,たとえば見知らぬ人に平気で近づくことなどは,あってもよい.
 E.自閉症(F84.0とF84.1),小児期崩壊性障害(F84.3)または多動性障害(F90.-)の診断基準を満たさない.

F84.8 他の広汎性発達障害 Other pervasive developmental disorders

F84.9 広汎性発達障害,特定不能のもの Pervasive developmetal disorder, unspecified
これは残遺診断カテゴリーで,広汎性発達障害の全般的記載には合致するが,十分な情報を欠く,あるいは矛盾する所見があるために,F84の他のコードのいずれの診断基準も満たさないような場合に用いるべきである。

(中根允文ほか/訳『ICD-10 精神および行動の障害DCR研究用診断基準』2009年,医学書院/刊 p158より引用)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4260005294
※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。WHOでの公表・承認を受けて、各国では翻訳やICD-10/11 変換表の作成、疾病分類表、死因分類表の作成などの作業が進められ、審議、周知などを経て施行されていきます。ICD-11への改訂によって分類コードが変化すると、書類上で要求されるICDコードが変わったり、疾病概念やカテゴリー、名称や診断基準も変更になる可能性もあります。
ICD-11 | 世界保健機関(WHO)
https://icd.who.int/en/
自閉症・アスペルガー症候群の診断基準に関しては下記の記事をご参照ください。
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自閉症の診断・検査の内容は?【専門家監修】

アスペルガー症候群の基準や専門医によるアスペルガー症候群の診断の方法について紹介します【専門家監修】のタイトル画像

アスペルガー症候群の基準や専門医によるアスペルガー症候群の診断の方法について紹介します【専門家監修】

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