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[第2回]

描く理由、そして描き続ける理由。14歳のAkiが全国ツアーを決めたその先にあったもの

第1回目では画家Akiの誕生ストーリーを伺いました。
数々の作品コンクールで受賞を重ね、オリジナルグッズを原宿で手売りする日々では月に3000個売れる事もあったといいます。中学生の時に縁あってミュージシャンのツアーでライブペイントをすることになったAkiさん。
今回は、Akiさんにとっての描く理由、そして描き続ける原動力についてお届けします。

あれは運命の瞬間だった。―
人生を変えた人との出会いの瞬間を、今でも鮮明に色褪せない記憶として語る画家Aki。
その出会いは一体Akiに何をもたらしたのか。
そこに、筆を躍らせる目の奥の強さと豊かさに繋がる、何かヒントがあるのかもしれない。—
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絵を描くときはどこか空気が違う

才能は見る人が決める、感性のままに描くこと

取材中にも筆をとってくださったAkiさん。
真っ白なキャンバスに、淡い色の不思議ならせんが現れました。
すっと筆が踊り、みるみるうちになにやら輪郭が出現。

「チョココロネです。さっき食べた時、きれいなフォルムだなと思って、描きたくなったんです」(Akiさん)
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お昼に食べたチョココロネを描くAkiさん
Akiさんが絵を描くとき、フォルムや色の美しさが頭に残っているといいます。
印象的な形や色が頭の中でイメージできており、するするっと筆を躍らせていくのです。
何かを見ながら書くことはほぼありません。

「食べ物の映像を見た時も、おいしそうだけでなく、食べ物にもいい形があるんだなと。
 フォルムのおもしろさや色に刺激をされる」
(Akiさん)

この言葉にドキっとさせられました。
独特な感性をもっているAkiさんですが、絵を習ったことはないといいます。
仕事で全国各地を回り、新しい発見をすることが、豊かな表現を加速させているのかもしれません。
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富士山
「Akiに絵の才能があると思ったことは一度もありません。才能は、見る人が決めることです」(昭さん)

運命の出会いが教えてくれたのは、コミュニケーションの面白さ

運命の出会い、そうAkiさんが語るミュージシャンの湯川トーベン氏との出会いをきっかけに、中学校に在籍しながら、人前で絵を描くライブペイントをして回り始めました。

「14歳の時、最初にお父さんにツアーで遠いところに行くか?といわれた。
すぐ行きたいと思った。いろいろなものを見てみたいし、いろいろなところを回りたい。
広い世界に出なきゃと思ったからです」
(Akiさん)
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終始穏やかに話してくださるAkiさん
「もっと褒められたい、上手く描こうというのではなく、ただただ描いている。
描いたもので会話が生まれるから嬉しい、というのはあるみたいですね」
(昭さん)

会場は、ライブハウス。それはAkiさんの苦手な「暗がり」そして「大きな音」。
そんな環境さえも、絵を描いてコミュニケーションが生まれる面白さに魅了され、自然と慣れていきました。

鵜飼いの船上で描くこともありました。地方の居酒屋で描くことも。
どんな場所であっても、そこには真っすぐに夢中になって絵を描くAkiさんの姿がありました。

「ライブペイントをするようになって、友達が増えた。嬉しかった。
ライブハウスやお店で知り合いました。個展に来てくれる、知り合った人はみんな絵を見てくれる。話しかけてくれる。
そうやって自分の書いた絵がお金になるのは嬉しい」
(Akiさん)
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迷いなく描き続ける

熱中できることで生きていけるのは、「きちんと商売にできたから」

現在の活動は、Akiさんが代表を務め、昭さんやスタッフが事業をサポートしています。
Akiさんの真っすぐに絵を描く、そして描き続ける力が今に繋がっているといいます。

「人間、正解なんてないんです。やりたいことをやればいい。
Akiは絵を描くことに熱中できる。そして人前で描いたり、絵を通したコミュニケーションが大好きで、それを実現させてやろうと思ったんです」
(昭さん)

現在は、東京で過ごす時間は3分の1程度。ほとんどが全国出張。
そんな生活をハードだと思う事なく、仕事として楽しんでいるAkiさん。
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普段は原色を使うことが多い
「熱中している姿をみて、Akiがこれで幸せになるなら、と思ったのは事実です。
ですが、きちんとビジネスになるから続けていられるんです。
Akiの熱中する姿がいくら大切でも、食べていけなければやめるしかない。純粋に絵を描くのを楽しんでいるから、描き続けられる。
Akiらしい作品を描き続けられる力が、ビジネスとして繋がっている」
(昭さん)

今での、規模の大小に関わらず、日本全国を巡り活動をしています。
生活する上でも、心の活力としても、絵を描いていくことが生きる力になっているのです。



どこまでも真っすぐに絵を描き続ける画家Aki。
自分の絵を喜んでくれる人がいる。―
その濁りない原動力こそ、
鮮やかで見るものを魅了するAkiの絵画を作り出しているのかもしれない。

次回

現在、28歳のAkiさん。
軽度の知的障害がある彼は、どのような暮らしをしているのでしょうか。
次回は、そんなAkiさんの「働くこと」「暮らすこと」についての考えをじっくりと聞いていきたいと思います。
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