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[第3回]

28歳。自立して暮らし、プロとして働くために必要な"バランス"とは

描くことで喜んでもらえる。仕事の面白味を掴んだ画家Aki。
23歳で武蔵野美術大学のゲスト講師として教壇に立つなど活躍の方面も幅広い。
一方で、軽度知的障害を伴う現在28歳の彼の生活スタイルは一体どのようなものだろう。―

今回は、画家Akiの等身大の「暮らす事、働くこと」についてお話しを聞いていきます。

出来ることは当たり前にやる、それが普通。

「誰ともしゃべらなくても平気」(Akiさん)

父・昭さんが仕事で4~5日出張で不在のことも珍しくないそうです。4~5日間何かあっても過ごしていける分の金額を手に、ひとりで過ごすAkiさん。

「描きたいときに絵を描いて、食べたいときにご飯を食べて、寝ます」(Akiさん)
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Akiさん愛用の画材道具
昭さんの不在に不安な様子もなく、いつもと変わらない、とのこと。
全国各地を回る生活を続けているAkiさんだからこそ、どんと構えていられるのかもしれません。しっかりと自分のペースを保ち暮らしています。

「1番好きなことは絵を描くこと。2番目に好きなことは食べること。
 
最近興味のあることは、タブレットで街をつくること。
いま一番行きたいのはイギリス。バッキンガム宮殿でライブペイントしたい。エリザベス女王と会いたい。ドイツの白鳥城にも行きたい。
昔ポスターで貼ってあって、すごくきれいだったから。ディズニーランドのシンデレラ城みたい」
(Akiさん)

どれだけ過去の出来事も、鮮明に覚えているAkiさん。
その頭の中には、きっと素晴らしいドイツの白鳥城があるのでしょう。
 
一方で、暮らしていく上での自立について、こんな発言もありました。
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下書きは一切せずに、筆を走らせる
「洗濯はしなきゃいけない。掃除もしなくちゃいけない。自分は几帳面だから、周りが汚れていると嫌。
掃除や洗濯は面倒ではないです、それくらい当たり前だから」
(Akiさん)

そう語る眼差しは確かに28歳の青年。凛々しく、頼もしいものでした。

プロとして働いていく。だから「頼る」「やる」のバランスが大事

「片付けはダメ。何からどうすればいいかわからない」

不意に「それ片付けて」といわれると固まってしまうというAkiさん。
ライブペイントの準備や片付けは時間をかけて、一つひとつ丁寧に、教えてもらえば出来ますが、会場の準備時間は短くせわしないもの。

「時間があればできる。でも、いつもお願いしてる。自分ではどうしたらいいかわからない、出来ないから。
出来ないことはお願いすればいい」
(Akiさん)

手順を一つひとつ分解して考えることの難しさは、子ども時代から今も変わらずあるといいます。今大事なことは、出来ないことを出来ないと言い切ること。仕事の上では誰かに代わりにやってもらえば済むことなのです。

同じように大切にしているのが「出会いがしらの挨拶」だといいます。

「障害があるから挨拶しなくていい、というのはおかしい」(昭さん)
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Akiさんと昭さん
出来ること、出来ないことをきっちり受け止めて、
丁寧にプロとして働いていこう、というこの姿勢が数々の仕事に繋がってきました。

「障害のある身として生まれた以上、一生それは変わらないこと。
だからこそ、周囲から好かれる子どもに育てたいと考えました。好かれる子どもにするためにも、基本の挨拶を心がけました。
きちんとしていれば、誰かが助けてくれると思ったのです」
(昭さん)

だからといって、人前に出るときのAkiさんに堅苦しさはありません。
とあるライブペイントの席上、描き終えたAkiさんが大勢の人前で思わず眠っていたことも。

「なんか静かだなって思ったら、スーって!Akiが隣で、寝ているんですよ(笑)会場の皆さんが笑ってくれて、よかった。」(昭さん)

「はい、寝てしまったこともあります。描き終わって、お父さんの話を聞いていたら寝ていました(笑)
でも、みんな優しかった。」
(Akiさん)

収入に見合った暮らし。だからのびのびと描き続けられる

「Akiには、絵を描きたくなければ描かなくてもいい。描きたいときに描けばいい。描きたいものを描いてほしいと思います。
そして、収入に見合う生活をすればいいと言っています」
(昭さん)

出来ること出来ないことを受け止めて働いていく。その考えに共通している様子です。
出来ないことを無理して背伸びをしても、ストレスフルな生活になってしまう事を二人は小学生のころに経験してきました。

それはAkiさん自身のこんな言葉にも表れています。

「大事なのはいつも自然体でいること」
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中学時代のAkiさん
親の理想や世間の考えに引っ張られると子育ては大変になる、と昭さんはいいます。
隣の人がベンツを持っているからうちも買わなくてはという発想は捨て、
どれだけ売れたとしても、Akiさん自身が無理せず暮らしを楽しめる範囲ですること。
身の丈にあった暮らしを続けることで、ストレスなく生活していくことを大事にしてきました。
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独特の世界観にひこまれていく
等身大で生きていく。―
そのポリシーこそが、どこへいっても愛され、独特の世界観の絵画を描き続けられる画家Akiの所以なのかもしれない。

次回

子どもたち向けのライブペイントや講演も行っているAkiさん。
独特の世界観を持つ彼は、一体どのようなメッセージを伝えているのだろう。
次回は、未来への想いを、父・昭さん、そしてAkiさんに教えていただきます。
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