発達障害の原因がわかった?!話題の研究チームに詳細を聞いてきた

ライター:発達ナビニュース
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ADHDや知的能力障害、自閉症スペクトラムといった発達障害の原因分子が発見され、染色体重複による発症のメカニズムが解明されたと報道がありました。この発見の背景や内容、実用化に向けての今後の動きはいったいどのようなものなのでしょう。ニュース記事だけではわからない、詳しい事情を今回の研究成果を発表した大阪大学の山下先生、兵庫医科大学の藤谷先生にお聞きしました。

目次

「発達障害の原因分子の発見」という研究成果発表が話題に

7月5日、大阪大学が「神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明-注意欠如・多動症などの神経発達障害の新治療法に光-」というプレスリリースを発表し、日経新聞をはじめとしたメディア各社が報じました。

ADHDや知的能力障害、自閉症スペクトラムといった発達障害は、特定の染色体が重複して存在すると引き起こされるということを、大阪大学の山下俊英先生(分子神経科学)のチームがマウス実験で突き止め、7月5日付で英科学誌「Molecular Psychiatry」に発表したニュースです。
記事を読むだけでは専門性が強く、理解が難しい部分があります。そこで、今回の研究を実施した先生方にインタビューを行い、その内容をわかりやすく解説していただきました。

お話をしてくださったのは、今回の発見をした研究チームの、大阪大学大学院医学系研究科分子神経科学教授 兼 大阪大学大学院生命機能研究科教授の山下俊英先生と、 島根大学医学部解剖学講座(神経科学)教授の藤谷昌司先生です。この記事では、お二人のお話を交えながら、今回の研究発見の背景や内容、今後どのように実用化されていくのかなど、噛み砕いてお伝えしていきます。

発達障害の原因について、わかったことは?

今までの研究成果では、
発達障害が染色体の一部分の重複により生じることがわかっており、その領域が「16番染色体の16p13.11領域」だということまでは特定されていました。

ですが、詳細なメカニズムまでは解明されていませんでした。

今回の山下先生・藤谷先生の研究では、マウス実験を通じてそこから大きく3つの発見がありました。

①16番染色体の16p13.11領域の中に、マイクロRNA484が存在する。

②16p13.11が重複することで、マイクロRNA484が増加する。

③マイクロRNA484が増加すると、脳機能の発達に異常をきたす。(発達障害を引き起こしうる)

発達障害の原因分子の1つである、マイクロRNA484が発見され、さらに、マイクロRNA484が要因となる発達障害の発症メカニズムが解明された、というのが今回の研究成果です。

具体的な研究方法は、公共のデータベースより得られた患者情報を元に、染色体の重複部位の中の遺伝子に着目し、それらの遺伝子の発現・働きをマウスの脳内で明らかにしました。

さらに、BACトランスジェニックという方法を用いて、ヒトの染色体の重複部位をマウスゲノムに組み込み観察し、神経新生異常と発達障害の症状を確認するというものです。
今までと今回の発見の比較(図)
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発達障害の発症メカニズムとは?

16p13.11領域が重複することで、16p13.11領域の中にあるマイクロRNA484が増加します。

すると、プロカドヘリン19蛋白(たんぱく)の機能を過度に減らしたり弱めたりしてしまい、プロカドヘリン19蛋白のバランスが崩れます。
プロカドヘリン19蛋白は脳の発達に重要な役割をはたしており、そのバランスが崩れることで、異常な神経回路が構築されてしまいます。

その結果、神経発達障害が発症するのです。

山下先生、藤谷先生は、この一連の流れ、つまり、発症メカニズムを解明し、その過程でマイクロRNA484が原因分子であると発見したのです。
発症メカニズム(図)
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