マウス実験による研究成果、人間への応用可能性は?

今回発表された研究成果は、マウスを使った実験に基づくものでしたが、人間にも同様の発症メカニズムがあると言えるのでしょうか。

この質問に対する山下先生、藤谷先生のご回答ですが、

①ヒトの遺伝情報を元に研究している。
②ヒトの遺伝子をマウスに入れて異常がおこるか確認している。

ということから、人の発達障害に対しても応用可能性が高いと考えることができるとのことです。

発達障害の原因解明、気になる今後の治療法開発は?

発達障害の要因分子マイクロRNA484と発症メカニズムを解明した今回の研究ですが、原因解明は今後の治療方法開発にどの程度貢献するのでしょうか。

山下先生・藤谷先生は以下のように答えてくださいました。

「発達障害という病態に関わる分子はおそらくたくさんあります。それらの分子が、どのように働いて、脳の機能異常をきたすのかということを理解しなければなりません。本研究成果は、ほんの小さなピースです。膨大な数の小さなピースを組み合わせていくことで、発達障害の全貌が少しずつ明らかになり、治療開発の戦略が生まれてくるのではないかと考えます。」

今回の研究成果は一つの原因分子とメカニズムの発見となりましたが、すぐに発達障害の治療に役立つというわけではないようです。しかしながら、こうした小さな発見の積み重ねが、医学のレベルを進歩させ、やがては新たな治療法の開発につながっていくと期待されます。

今後の研究の展望について

お二方とも、発達障害の治療に役立つであろう研究を今後も実施していく方針のようです。

山下先生は、発達障害に関連する様々な分子に着目し、それらの機能を明らかにし、動物モデルで神経回路の構築と症状を検査していくという方法で、発達障害とは何かという問いに答えていくための基礎研究を進めていくご予定です。

藤谷先生は、兵庫医科大学の准教授として、今後は、患者さんのiPS細胞から作った脳細胞を作成し、神経の分化異常に作用する薬剤を探索しようと計画しています。そして、発達障害のモデル動物を用いて薬剤の効果を確かめるといった研究を進めるご予定です。

また、山下先生、藤谷先生から発達ナビ読者のみなさんへのメッセージもいただきました。

「発達障害は、現在の神経科学の最も重要なトピックスの一つとして、急速に研究が発展しています。それらの中から、治療開発に役立つ研究が、一日も早く出てくることを祈念しています。」

編集部としても、今後の先生方の研究に注目していきたいと思います。
大阪大学 大学院医学系研究科/生命機能研究家 分子神経科学
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/
神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明|大阪大学
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2016/20160705_1
ADHDなどの原因、特定遺伝子の重複 阪大解明|日経新聞 電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG05H69_V00C16A7000000/
A chromosome 16p13.11 microduplication causes hyperactivity through dysregulation of miR-484/protocadherin-19 signaling|Molecular Psychiatry
https://www.nature.com/articles/mp2016106
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