知能検査とは?知能検査の種類、検査の受け方など【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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知能検査は、主に物事の理解、知識、課題を解決する力といった、認知能力を測定するための心理検査の一つで、一人ひとりの特性を把握するための手段として、発達支援や学習指導、就学相談などで活用されています。今回のコラムでは、知能検査の種類や受けられる機関をご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

知能検査とは

知能検査とは、主に物事の理解、知識、課題を解決する力といった、認知能力を測定するための心理検査の一つです。発達の状態や、その人の得意分野、不得意分野を分析することで、その人に合った発達支援や学習指導の方向性を検討する目的などで利用されます。

特別支援教育では、知能検査についてどのように位置づけているのでしょうか。国の研究機関である国立特別支援教育総合研究所では、知能検査の目的は以下のように示されています。
知能検査の目的は、障害の有無を判定したり診断することにあるのではなく、子どもの発達の状態や困難な状況に関する客観的な情報を得て、最も適切な指導の方向性を考えることにその意味があります。

 子どもの実態に合わせた適切な知能検査を実施することで、同世代集団内での相対的な子どもの位置(個人間差)や、一人の子どもの能力の発達の様相やバランス具合(個人内差)を知ることができます。

 子どもの知能発達の実態を把握することで、子どものつまずきの原因を把握したり、つまずきが起こらないような具体的な指導の方向性、あるいは工夫を得たりすることが可能となります。また、子どもによっては検査結果を共有することで、自分の学習上・生活上のつまずきを予想したり改善したりすることができ、情緒的な安定や行動上の困難も改善される可能性もあります。あるいはまた、保護者や学級担任等の関係者にとっても、子どもの状態像を客観的に把握できることで、情緒的に安定したかかわりや新しい角度からの工夫をもったかかわりなどが可能となる場合もあります。


引用:国立特別支援教育総合研究所|知能検査の目的と適用
出典:http://forum.nise.go.jp/soudan-db/htdocs/index.php?key=muy7v5g0c-477

知能検査の検査形態

「個別式」と「集団式」に分けられます。個別式と集団式の両方を扱う検査もあります。
個別式知能検査は、受検者と検査者の一対一で行うものです。今回の記事では個別式知能検査について取り上げます。

集団式知能検査は、別名「団体式知能検査」とも呼ばれ、学校などでたくさんの人を検査するための筆記式検査です。集団式知能検査を受けた後、知能や発達に遅れや偏りが見つかった場合は、続けて個別式検査を行い、よりきめ細やかに検査をします。自治体によっては小学校就学時に就学時健康診断で集団式知能検査を実施しますが、その際の集団式知能検査に「就学時知能検査」があります。発達の遅れや偏りを把握する手段の一つとしても使われます。
参考:就学時の健康診断マニュアル 平成29年度改訂|公益財団法人日本学校保健会
https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_H290040/index_h5.html#1

知能検査の種類

地域や機関によって使われるものは異なりますが、「ウェクスラー式知能検査(WAIS・WISC・WPPSI)」「田中ビネー知能検査」「鈴木ビネー知能検査」「K-ABC」などが比較的よく使われているようです。どの知能検査を行うかは、最終的に専門家(医師、臨床心理士・公認心理師など)が判断します。
ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)第5章第3節 支援計画作成のための評価|内閣府
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/h19-2/html/pdf/5_3.pdf

ウェクスラー式知能検査

2歳6ヶ月~7歳3ヶ月までが対象の幼児用のWPPSI(通称ウィプシィ)、5歳0ヶ月~16歳11ヶ月までが対象となる児童版のWISC(通称ウィスク)、16歳0ヶ月~90歳11ヶ月までが対象となる成人用のWAIS(通称ウェイス)の3種類に分けられます。

同じ年齢の子と比べて知能が高いか低いかのみならず、子どもの知的発達の凸凹(個人内差)を知るために実施されることが多いのが特徴です。「得意を生かして、苦手をフォローするにはどうしたらいいのか」「特性を生かせるために、どんな環境を整えるべきか」など、学校や家庭での支援をブラッシュアップするための重要な情報となります。

知的障害(知的発達症)や発達障害の評価の一つとして用いられることもあります。ただ、知能検査のみで確定診断されることはありません。
ウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS)の内容や費用など【専門家監修】のタイトル画像

ウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS)の内容や費用など【専門家監修】

田中ビネー知能検査

1947年に心理学者の田中寛一によって考案されたもので、日本人の文化や生活様式に即した内容が特徴です。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具も工夫されています。現在は、『田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)』が最新版です。

基本的に精神年齢と生活年齢の比である比例知能指数(比例IQ)を算出するものとなっていますが、近年の動向を反映し、偏差IQを算出することもできます(14歳以上に関しては、比例IQは算出せず、偏差IQのみ算出)。

難易度別に問題が分かれ、1歳級から13歳級までの各年齢の問題、成人の問題があります。1歳級以下を対象にした検査では、「発達チェック」項目も設けられています。小学校に就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。

問題が年齢尺度で構成されているため通常の発達レベルと比較しやすい、各年齢でどの程度の課題ができているものかというイメージがつかみやすくトレーニングを検討する際の目安になる、実施の手順が分かりやすく簡単であることから子どもにとって精神的・身体的負担が少ない、といったポイントもあります。
心理検査|LITALICOジュニア
https://junior.litalico.jp/about/hattatsu/shinri/
田中ビネー知能検査、就学児版 田中ビネー知能検査について【専門家監修】のタイトル画像

田中ビネー知能検査、就学児版 田中ビネー知能検査について【専門家監修】

鈴木ビネー知能検査

1930年に心理学者の鈴木治太郎によって考案された知能検査です。取り組む姿勢を尊重し、その人の特質を診ることを目的としているため、検査自体に制限時間はありませんが、検査の所要時間はおおむね30~50分ほどで、受検する人の集中力を維持しながら短時間で測定できるという特徴があります。 幼児から成人(2歳0ヶ月~18歳11ヶ月)までが対象となっています。

現在は2007年に作成された『改訂版 鈴木ビネー知能検査』が最新版となっており、現代の子どもの発達や生活様式に即した内容になっています。

K-ABC(KABC-Ⅱ)

K-ABC(Kaufman Assessment Battery for Children )は、アメリカの心理学者Kaufman, A.S.とKaufman, N.L.により作成されました。現在日本では、2013年に日本版として標準化されたKABC-Ⅱが最新版となっており、2歳6ヶ月から18歳11ヶ月までを対象年齢としています。

子どもの知的能力を、認知処理過程と知識や技能の習得度をみることにより、得意な認知処理様式を見つけることができます。改訂版では、カウフマンモデルおよびCHCモデルという2つの理論モデルで検査をするという特徴があります。また、認知処理過程において継次処理と同時処理、学習能力、計画能力の4つの能力から測定していることが特徴となります。
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