その進学先は子どものため?親のため?障害が重い子どもの小学校選び
ライター:立石美津子
秋は、就学前健診の季節です。我が子の発達が気になる保護者の中には、“どんな小学校に行けばよいのかふるいにかけられる検査”のようなイメージを抱いて不安に思っている人もいるかもしれません。今回は、知的な遅れや発達障害のある子どもたちの場合、就学先をどう考えたら良いのか、私の経験と考えをお話したいと思います。
障害が重い子どもにとって、望ましい就学先はどこ?
こんにちは。『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。
秋は、就学前健診の季節です。お子さんの発達が気になったり、障害がある家庭の保護者は、我が子の就学先について思い悩む時期だと思います。私にも知的な遅れがある自閉症の息子がおり、当時は色々考えた末に小学校は特別支援学校に進学させました(※3年生から特別支援学級に転校しました)。
それまでの生き方や持っている価値観によって、子どもの就学に対する保護者の考え方は様々ですが、今回は、知的な遅れや発達障害のある子どもたちの場合、就学先をどう考えたら良いのか、私の経験と考えをお話したいと思います。
秋は、就学前健診の季節です。お子さんの発達が気になったり、障害がある家庭の保護者は、我が子の就学先について思い悩む時期だと思います。私にも知的な遅れがある自閉症の息子がおり、当時は色々考えた末に小学校は特別支援学校に進学させました(※3年生から特別支援学級に転校しました)。
それまでの生き方や持っている価値観によって、子どもの就学に対する保護者の考え方は様々ですが、今回は、知的な遅れや発達障害のある子どもたちの場合、就学先をどう考えたら良いのか、私の経験と考えをお話したいと思います。
療育センターで知り合った重度の自閉症の男の子がいました。息子よりも明らかに障害は重く、目はまったく合わず、言葉もほとんど出ない。パニックやこだわりも相当激しい子でした。
その子のママは、療育にも通っているわけですから、当然わが子に障害があることを受け止めていました。でも、すごく「通常学級」にこだわるお母さんでした。
知的な遅れが軽度だったり、アスペルガー症候群だったりすれば、「通常学級に入れた方がこの子に合うかも……」と悩むのもわかります。
けれども、明らかに障害が重いのになぜそこまで通常学級にこだわるのか、少人数で個別の支援を受けやすい支援学級や支援学校を選択肢から除外するのはどうしてなのか、私は疑問に思っていました。
その子のママは、療育にも通っているわけですから、当然わが子に障害があることを受け止めていました。でも、すごく「通常学級」にこだわるお母さんでした。
知的な遅れが軽度だったり、アスペルガー症候群だったりすれば、「通常学級に入れた方がこの子に合うかも……」と悩むのもわかります。
けれども、明らかに障害が重いのになぜそこまで通常学級にこだわるのか、少人数で個別の支援を受けやすい支援学級や支援学校を選択肢から除外するのはどうしてなのか、私は疑問に思っていました。
就学時健診を逃れ、我が子を通常学級に滑り込ませて、その先は?
そのママが我が子を通常学級に入れるために取った行動。それは、就学時健診をスキップするというものでした。
彼女は「就学時健診に連れていくと、絶対にフィルターに引っかかってしまい、特別支援学級か、さらには特別支援学校へ行けと言われてしまう。だから、隠れることにしたの」と私に言っていました。
どうやって健診を逃れたかというと、指定された日に「その日は旅行に行っている」と欠席し、再度、振替のための健康日の連絡が来ても「うちの子は体調が悪くて寝込んでいる」と嘘をつき、入学式までずっと隠れていたということです。
かくして入学式当日、子どもには通常学級の籍が用意されていました。親の計画通りにことは運んだのです。
けれども、入学式の最中、会場を奇声を上げて走り回り、じっとしていられないその子の様子を見た学校側から「お母さん、明日からお子さんの付き添いをしてください。一緒に学校に来てください。それが条件です」と言われてしまいました。
それからそのママ友とは連絡をとっていませんが、風の便りによると、彼女は毎日子どもと一緒に登校し、自分の給食費も払って我が子やクラスメートと一緒に給食を食べて過ごしているそうです。
「お母さんは、家でも学校でも四六時中子どもと共にいて、他の子との発達の違いを目の当たりにして苦しくないのだろうか」
「家に帰ってから子どもに『どうしてお友達と同じようにできないの!』と追い詰めていないだろうか。親子とも相当なストレスのかかる小学校生活ではなかろうか」
と、他人の家庭ながらも心配になってしまいました。
彼女は「就学時健診に連れていくと、絶対にフィルターに引っかかってしまい、特別支援学級か、さらには特別支援学校へ行けと言われてしまう。だから、隠れることにしたの」と私に言っていました。
どうやって健診を逃れたかというと、指定された日に「その日は旅行に行っている」と欠席し、再度、振替のための健康日の連絡が来ても「うちの子は体調が悪くて寝込んでいる」と嘘をつき、入学式までずっと隠れていたということです。
かくして入学式当日、子どもには通常学級の籍が用意されていました。親の計画通りにことは運んだのです。
けれども、入学式の最中、会場を奇声を上げて走り回り、じっとしていられないその子の様子を見た学校側から「お母さん、明日からお子さんの付き添いをしてください。一緒に学校に来てください。それが条件です」と言われてしまいました。
それからそのママ友とは連絡をとっていませんが、風の便りによると、彼女は毎日子どもと一緒に登校し、自分の給食費も払って我が子やクラスメートと一緒に給食を食べて過ごしているそうです。
「お母さんは、家でも学校でも四六時中子どもと共にいて、他の子との発達の違いを目の当たりにして苦しくないのだろうか」
「家に帰ってから子どもに『どうしてお友達と同じようにできないの!』と追い詰めていないだろうか。親子とも相当なストレスのかかる小学校生活ではなかろうか」
と、他人の家庭ながらも心配になってしまいました。
その進学先は子どものため?親のため?
就学先は小学校でも中学校でも、行政によるアドバイスはありますが、基本的には保護者の意向が尊重されます。
通常学級・特別支援学級・特別支援学校という3つの就学先、また通常学級に所属しながら「通級」による取り出し指導を受けることを含め、自分の子どもにとって最も適した就学先を選ぶのが保護者の役目です。
子ども本人は情報や意思を持って「僕には○○のクラスが合っているから、そこに通いたい」とは言えないわけです。そうなると、保護者が子どもの将来にかかわる重大な選択をすることになります。
ですがここで、「子どものため」ではなく、「親の願い」を投影した就学先選択がなされることも少なくありません。保護者が願うからといって、無理して通常学級に入れることが、必ずしも本人にとって幸せだとは限らないと思うのです。
子ども本人は情報や意思を持って「僕には○○のクラスが合っているから、そこに通いたい」とは言えないわけです。そうなると、保護者が子どもの将来にかかわる重大な選択をすることになります。
ですがここで、「子どものため」ではなく、「親の願い」を投影した就学先選択がなされることも少なくありません。保護者が願うからといって、無理して通常学級に入れることが、必ずしも本人にとって幸せだとは限らないと思うのです。
知的に遅れがない発達障害の場合は、特別支援学級か通常学級か悩む家庭も多いでしょう。支援学級では学習面で物足りなく、通常学級の中で配慮を受けながら頑張っていくという選択もあります。反対に通常学級ではあまりにも環境ストレスが大きいため、支援学級の落ち着いた環境を選ぶという選択もあります。
けれども、明らかに知的遅れがあるのにもかかわらず「何が何でも絶対に通常学級」とごり押しする人について思うこと…。それは「支援級を望んでも入れてもらえないグレーゾーンの子どももいるのにもったいないなあ…。特別支援教育を受ける機会を逃して、なぜ、あえて通常学級を選ぶの?」と私は思ってしまうのです。
けれども、明らかに知的遅れがあるのにもかかわらず「何が何でも絶対に通常学級」とごり押しする人について思うこと…。それは「支援級を望んでも入れてもらえないグレーゾーンの子どももいるのにもったいないなあ…。特別支援教育を受ける機会を逃して、なぜ、あえて通常学級を選ぶの?」と私は思ってしまうのです。