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[第3回]

「心は今でも不登校」そんな僕だからこそ伝えたい

メンバー3人全員が不登校経験を持つロックバンド「JERRY BEANS」。ドラムの山崎雄介さんのインタビューもいよいよ最終回。自分たちの経験を講演と歌に託して届ける「講演ライブ」は、全国の小中学校で大人気。自己表現が苦手だったという、5年間の不登校経験を持つ雄介さんは、どんな思いを胸に、表現活動を続けているのでしょうか。

学校に行くたび、「あの時の僕」に出会う

舞台
「JERRY BEANS」の講演ライブは、多い年で年間約130件にのぼる。小学5年生から中学3年生まで、ずーっと学校に行けなかった自分が、大人になってからこうして全国の学校を回るようになるなんて、人生って本当に不思議で面白いなと思う。

不登校だったからといって、いま学校を訪ねること自体にしんどさはない。だけど、子どもたちの前で講演をする時は、やっぱり辛くなる。何回やっても慣れない。

でも心や命を伝えることに慣れてしまったらダメだと思う。だからいつも必死で伝えている。

どんな年代、どんな学校の子どもでも、講演に行くたびに、「あの時の僕」と似たような子どもに出会うから。周りの子どもとの違いを感じ、常に独りぼっちで孤独な感覚を抱えている子どもたちに。

今でも人に発信することは苦手で、始まる前は毎回怖くなる。講演で話していると自分も涙が出てくる。でも前を見ると、子どもたちやお母さんたちも泣いている姿に気づいて、「あぁ、僕はこの怖さに向き合わなあかん」って気持ちになる。

自分の経験を伝えることで、明日死のうと思っていた人が、明日もなんとか生きていこうと思えるようになってくれるのなら、恐怖と向き合って発信していこうと決めた。

学校の先生だって、決して完璧じゃない

5年生の居残り授業で僕に「字が汚い」といった当時の担任とは、卒業するまで話す機会もなかった。だけどその先生は、卒業式のときに僕への謝罪の手紙を書いてくれていたのだ。

その手紙は母がずっと持っていて、長らく読むことができなかった。当時、僕がまだ不安定だったから、先生の気持ちを知って自分を責めたらいけない、と思って預かっていたそうだ。

講演活動を始めた頃に、ようやくその手紙を受け取った。

「君の気持ちがわかってあげられずごめん。」

その手紙を読んだ時に、「あぁ、きっとこの先生も、必死に子どものことを考えてくれていたんだろうな」と気付き、涙が溢れてきた。

思いが真剣でも、その伝え方やタイミングがずれてしまっていることって、たくさんある。それは誰にでも起こる、人間らしい失敗にすぎなくて、先生だって例外じゃない。

子どもも先生も親も、完璧を目指す必要はない。自分の弱いところを隠さずに、他人に見せていけばいい。

そんな思いを、今たくさんの人たちに伝えている。

「かわいそう」と言われた人にしか言えないことがある

メンバー
うまく言えないけど、自殺をするような人って、ある意味勢いがあるのかなって、思う。

僕も、自殺を図った日の朝、起きてすぐに「あ、今日死ぬ日や」と思い立った。深く考えることなく「あ、今日でぼくは終わる」って。

だけどそこで死ななかったから、母親が止めてくれたから、ここにいる。

死なずに生きていたから、不登校だった時間も、振り返れば「大切な時間」に変わっていく。

僕の心の中は、今でも不登校の頃のままかなって思う時もある。

不登校の僕は、周りから「かわいそう」って思われていた。でも、「かわいそう」って思われた経験が、今の活動に活きているんだと思う。

「かわいそう」と言われた人にしかわからないこと、言えないことがある。だからこそ、今死のうと思っている人に、一秒でも長く生きてほしいと思う。辛い気持ちのまま人生を終わってほしくない。その一秒後に出会えるかもしれない喜びを信じて。その気持ちがあるから、みんなの前に立つことができる。

僕はこれからも、この活動を続けていく。

あのときの僕のように、苦しい想いをしている人、自ら死のうとする人が、一人でも少なくなることを願って。
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