「発達障害は治る!?」ネットの情報に翻弄された私の、2つの失敗

ライター:林真紀
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発達障害児を育てていると、情報収集にものすごい時間をかけてしまうことがよくあります。さらに、沢山の情報をかき集めながら、「発達障害児向け」「発達障害児に良い」という言葉に飛びついてしまうこともよくあるのではないでしょうか。今回は、「発達障害児向け」に何度も飛びついた私が学んだことをお話ししたいと思います。

「できること」を増やしたい!発達障害のある子どもを持つ親心

自分の子どもが発達障害だと診断を受けたならば…。「発達障害児でもできること」「発達障害児の発達を促すこと」を血眼になって探すのが、親心なのかもしれません。私もその1人でした。

発達障害児を育てていると、どうしても出来ない部分ばかりが目についてしまいます。

「協調運動ができない」「手先が不器用」「跳び箱やマット運動ができない」「字をマスの中におさまるように書けない」「きちんとした姿勢を維持できない」…

他の子どもと並べては、「うちの子だけこんなこともできない…」と落ち込む日々が続いていました。

「出来ることを褒めてあげて」と育児本には当たり前のように書いてあります。けれども、保育参観やちょっとした行事で「できない息子」を目の当たりにするたびに、「一体どこを褒めればいいんだろう…」という気持ちにすらなります。

そんなとき、インターネットには心ひかれる文言が

そんなどん底の気分になりながらも、「なんとか息子のできることを増やしたい」と思いネットを検索してみます。すると、キラキラときらめく言葉たちが並んでいるのです。

発達障害児向け○○!」
「○○は発達障害児の発達を促してくれます!」
「○○をすれば、発達障害は治る!!」

こんな煌めくような魅力的な言葉たちが、私の親心をがっちり掴んでしまいました。

「発達障害向け」の文言をみると居ても立っても居られなくなり、私はすぐに申し込みのメールを書き始めていました。

それがどんな内容の習い事や塾であっても、息子に意思を確認することはありませんでした。

これが原因で、私がしてしまった失敗を2つ、ご紹介します。

失敗談その1 「発達障害は治る」と言われて

ネットでの検索に取りつかれていたころ…

私が一番に心惹かれてしまったのは、「発達障害を治す能力開発塾」でした。

この「発達障害を治す」という触れ込みに惹かれてしまうのは私だけではなかったようで、中には新幹線や飛行機に乗って相談に訪れる人も後を絶たないそうです。

ところが相談に伺ってみると、その塾の目標は「子どもを支援級に入れないこと」でした。

私は当時、まだ小学校就学後のことまで考えてはいませんでした。その目標が果たして本当に適切かどうか、まだ分かっていなかったのです。

その塾が何を目指しているのか、発達障害児がどう育っていくことを望んでいるのかという点について意見が合致しない場合は、私は入塾はやめたほうがいいと思いました。結果的に、入塾はお断りしました。


「発達障害児向け」「発達障害が治る」という文言だけに飛びついてしまい、実態をきちんと把握していなかった失敗例です。

失敗談その2 「発達障害児の発達に良い」と言われて

他にも、「これは発達障害児の発達に良い」「前頭前野の発達を促す」という言葉に、私は飛びついてしまいました。

そんな私を突き動かしたのが、「乗馬は発達障害の発達に良い」「カヌーは発達障害児の発達に良い」という情報でした。

私は息子を連れて、発達障害児を対象とした乗馬教室とカヌー教室に出かけました。その教室では他に参加する子どもたちもみんな同じように特性がある子どもたちだったため、息子だけが浮いてしまうこともないだろう…という期待もありました。

ところが…。

感覚が過敏な息子は、馬の臭いと大きさと肌触りにパニックです。泣いて泣いて暴れて暴れて、止まらなくなってしまいました。

そんな息子を横目に、他のお子さんたちは悠々と馬に乗っています。

カヌーはカヌーで、救命胴衣の感触にパニックになり大泣き。さらに、前日雨が降って川岸がぬかるんでいたのが嫌だったようで、足に泥がつくたびに大泣き。

ここまで来て、こんなに息子を泣かせて、自分はいったい何がやりたかったんだろう…。私は帰りの車でため息しか出ませんでした。

この教室以後、息子は馬が怖くなってしまい、今でも馬に近づけません。

大切なのは、「発達障害児向け」ではなく「息子向け」だった

数え切れないほどの失敗を繰り返して、私が学んだのは、大切なのは「発達障害児向け」ではなく「息子向け」のものを選ぶことだということでした。

いくら「発達障害児向け」と銘打ってあっても、息子に合った環境整備がされているとは限りません。いくらそのアクティビティ自体が発達障害児の発達に良いとしても、息子は盛大なパニックを起こし、それが失敗体験になってしまいました。

逆に、発達障害児対象のアクティビティでなかったとしても、息子に合った環境整備がきちんとできていれば、息子は楽しくこなすことができます。成功体験につながることもあるでしょう。

「発達障害児向け」「発達障害児の発達に良い」というのは、あくまでも理論的な話です。脳回路の話などが出てくると、どうしても飛びついてしまうのが親心。でも、理論と実践は違うのです。

適切な環境整備と子どもに「やりたい」という気持ちが少しでもあれば、それが一番「その子の発達に良い」ことなのだということを忘れてはいけないのだと思います。
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