自閉症の息子が唯一、心を開く人。彼だけに見えていた息子の気持ちは?
ライター:シュウママ
我が家には双子の兄弟がいます。長男は重度の自閉症ですが、意外にも周りに人が大勢いることが大好きです。遊んでもらえると、とても嬉しそうに笑います。とはいえ、自分から相手に寄っていくことはあまりありません。そんな長男が背中にくっついて甘える唯一の存在がいるのです。
ひいおじいちゃんの膝の上は、自閉症の息子の特等席
子ども達が冬休みに入り、普段は離れて暮らす私の実家に帰省したときのことです。
ひいおじいちゃんが居間で新聞を読んでいると、自閉症のある長男がそっと寄っていきました。
ひいおじいちゃんが居間で新聞を読んでいると、自閉症のある長男がそっと寄っていきました。
言葉のあまり出ない長男は「新聞邪魔、そこは僕の場所!」と言わんばかりの態度で、黙ってうっとおしそうに新聞を払いのけ、ぺたりとひいおじいちゃんの膝の上に腰をおろしました。
特等席の膝に陣取ると、長男はじっとひいおじいちゃんの顔を見ながら嬉しそうな笑顔を向けます。
ひいおじいちゃんも笑って長男の頭をなでてくれます。言葉は交わさなくとも「ひいおじいちゃんは絶対、僕が膝に乗ったらいい子いい子してくれる」、そんな安心感が長男の仕草や表情から伝わってきたことを覚えています。
ひいおじいちゃんも笑って長男の頭をなでてくれます。言葉は交わさなくとも「ひいおじいちゃんは絶対、僕が膝に乗ったらいい子いい子してくれる」、そんな安心感が長男の仕草や表情から伝わってきたことを覚えています。
いちばん大変な時期に、慣れない双子の育児に関わってくれたひいおじいちゃん
ひいおじいちゃんと双子は幼いころから深く関わってきました。8年前、低体重で生まれた長男は生まれてすぐ難病があることがわかりました。そのまま大学病院へ検査入院することになったのですが、その間双子の次男の面倒を見てくれたのがこのひいおじいちゃんだったのです。
双子ということで里帰り出産だったのですが、私は出産前2ヶ月間、切迫早産で入院していました。当時私の母が看病にあたってくれていたのですが、心臓の持病と、長男の病気の心労が重なりふせってしまいました。
そのため日中だけでも次男をみてもらえれば…と思いひいおじいちゃんを頼ったのです。戸惑いもあっただろうにそんなことはおくびにも出さず、とても献身的に面倒をみてくれました。育児にはあまり携わらなかった年代だと思いますが、長男の退院後も産後の私を気遣って、オムツを替えたりミルクを飲ませたり…。慣れない手つきで小さな双子に存分の愛情を注いでくれたのです。
そのため日中だけでも次男をみてもらえれば…と思いひいおじいちゃんを頼ったのです。戸惑いもあっただろうにそんなことはおくびにも出さず、とても献身的に面倒をみてくれました。育児にはあまり携わらなかった年代だと思いますが、長男の退院後も産後の私を気遣って、オムツを替えたりミルクを飲ませたり…。慣れない手つきで小さな双子に存分の愛情を注いでくれたのです。
自閉症の長男が、ひいおじいちゃんに心をひらく理由は?
けれど長男がひいおじいちゃんを好きなのは、それだけが理由ではありません。
自閉症特有の行動なのでしょうか、長男はコップの水をわざとこぼして、流れていく様子をじっと見ていることがあります。
自閉症特有の行動なのでしょうか、長男はコップの水をわざとこぼして、流れていく様子をじっと見ていることがあります。
そんな時、私を含めて誰もが叱るけれど、ひいおじいちゃんだけは、そんな長男の様子を興味深そうに穏やかに見つめています。どんなイタズラをしても、絶対に怒らず笑顔を絶やすことがないのです。
自閉症の長男も、定型発達の次男も、誰もが双子を可愛がってくれます。けれど言葉もあまり出ず、言動も幼い長男のことは、悪気なく皆赤ちゃん扱いしてしまいます。無意識ではありますが、私自身も例外ではなかったかもしれません。
自閉症の長男も、定型発達の次男も、誰もが双子を可愛がってくれます。けれど言葉もあまり出ず、言動も幼い長男のことは、悪気なく皆赤ちゃん扱いしてしまいます。無意識ではありますが、私自身も例外ではなかったかもしれません。
本を破いたり、かんしゃくをおこしたりする長男を目の前にすればそれは無理からぬことだと思います。
けれどどんな状態の長男と接しても、ひいおじいちゃんは「シュウは頭の中にたくさん言葉があるぞ。言葉が出れば気持ちも落ち着くぞ。お前はかしこいかしこい子だよ」そう言い続けてくれたのです。
長男がかんしゃくをおこすのは、思いをうまく言葉にできないもどかしさゆえだということを、ひいおじいちゃんは気づいて理解してくれる唯一の人だったのでしょう。
けれどどんな状態の長男と接しても、ひいおじいちゃんは「シュウは頭の中にたくさん言葉があるぞ。言葉が出れば気持ちも落ち着くぞ。お前はかしこいかしこい子だよ」そう言い続けてくれたのです。
長男がかんしゃくをおこすのは、思いをうまく言葉にできないもどかしさゆえだということを、ひいおじいちゃんは気づいて理解してくれる唯一の人だったのでしょう。