ミトコンドリア脳筋症(MELAS)とはどんな病気?遺伝するの?原因・治療法など徹底解説します

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ミトコンドリア脳筋症(MELAS)は、細胞の中にあるミトコンドリアの異常で脳卒中のような症状が現れる国の指定難病です。初めての発症の7割が、15歳未満であることでも知られています。なぜミトコンドリアが原因で病気になってしまうんでしょうか。この記事では病気の原因や、診断方法、治療などについて詳しく解説します。

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目次 ミトコンドリア脳筋症(MELAS)とは? どんな人にミトコンドリア脳筋症の症状が現れるの? ミトコンドリア脳筋症の原因は、ミトコンドリアの異常です ミトコンドリア脳筋症は遺伝するの? ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の症状 ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の診断 ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の治療方法 ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)への支援 まとめ

ミトコンドリア脳筋症(MELAS)とは?

ミトコンドリアの異常が原因で病気となってしまうことが知られていて、ミトコンドリア病と名づけられ国の指定難病にもなっています。

ミトコンドリア病にはおもに以下の3つの病型に分類されます。
●ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)
●慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO)
●ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)

ミトコンドリア脳筋症はそのうちの一つ「ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)」の病型のことをいいます。

ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)は、脳卒中のような症状を起こすことが特徴的です。また、脳卒中のような症状が起きる場合には、けいれんや意識障害も起こることがほとんどです。

繰り返し起こる嘔吐や頭痛などもミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)の代表的な症状ですが、そのほかにも全身にわたってさまざまな症状が出ることがわかっています。

どんな人にミトコンドリア脳筋症の症状が現れるの?

発症年齢は低く、非常にまれです

ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)の発症年齢は低く、15歳未満で発症する割合は、全体の70%を占めるといわれています。

発症年齢を5歳ずつ区切って詳しくみてみると、0~1歳での発症は1%、1~5歳では10%、5~10歳で37%、10~15歳では21%、15歳以上の発症は31%であることが分かっています。
海外では10万人に9~16人の割合で発症するとの報告もあるようですが、症状が多様であることや症状の軽い人は診断されていない可能性があることなどから、詳しい発症率はまだわかっていません。

ミトコンドリア脳筋症の原因は、ミトコンドリアの異常です

ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)はミトコンドリアの異常で起こる病気とご説明しましたが、そもそもミトコンドリアとはどんなものなのでしょうか。

そもそもミトコンドリアって?

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ミトコンドリアは、細胞のなかにある小器官の一つです。生きている細胞すべてにミトコンドリアが存在していて、細胞が利用するためのエネルギーを作る機能をはじめとして、カルシウムの貯蔵や感染の防御など多様な働きを担っています。

脳や筋肉をはじめ、エネルギーをたくさん必要とする細胞のなかには、たくさんのミトコンドリアが入っています。たとえば人の肝臓では、1つの細胞に1,000以上のミトコンドリアがあることが分かっています。

また、ミトコンドリアは独自のDNAを持っていて分裂して増殖することでも知られています。1個のミトコンドリアの中にDNAは5~10個ほど入っているそうです。

先ほどの、肝臓細胞を例にとって計算してみると、細胞1つのなかには5,000個以上のミトコンドリアDNAがあることになり、細胞一つひとつに膨大な量のミトコンドリアDNAが存在していることが分かります。

ミトコンドリアの異常とは

ミトコンドリアにあるミトコンドリアDNAが何らかの原因で異常なDNAに変化してしまうと、ミトコンドリアが巨大化するといった異常がみられるようになります。

ミトコンドリアDNAには、異常が起きた時の修復機能や、防御的なシステムがないために、DNAが異常なものに変わってしてしまうと、異常のまま分裂を繰り返すのです。

細胞内に異常ミトコンドリアが増殖してしまうことで機能が低下し、さまざまな症状を引き起こします

しかし、細胞内にはミトコンドリアが大量にあるので、たとえ1つのミトコンドリアDNAが異常になったからといって、他の多数のDNAが正常であれば細胞に与える影響はほとんどありません

異常なミトコンドリアが一定数を超えると、細胞に影響が出て症状が現れるのではないかと考えられています。

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の原因

ミトコンドリアDNAには、タンパク質をつくる設計図がA・T・C・Gの4種類の記号で書かれています。ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)患者の80%以上で、この設計図の3243番目に変異があることが発見されています。この他にも、3271番目などでも異常が認められていることが分かっています。

ミトコンドリア脳筋症は遺伝するの?

母親から遺伝することが分かっています

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)は、母性遺伝といって母から遺伝することが分かっています。ミトコンドリアDNAは、受精時に卵子からのミトコンドリアDNAが遺伝され、精子からのミトコンドリアDNAが消去されることが分かっているからです。

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の男性患者から、子どもに病気が伝わることはありません

遺伝したからといって全て発症するわけではありません

母親がミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)であるからといって、子どもも発症するとは限りません。また、子どもがミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)を発症したからといって、母親も発症しているとも限りません。

なぜなら、細胞内にはミトコンドリアが大量にあるために、異常なミトコンドリアDNAが一定数を超えないと発症しないからです。どのように異常DNAが増えていくかは人それぞれで異なります。

また、突然変異でミトコンドリアDNAが異常になってしまうこともないわけではありません。

心配な場合は遺伝カウンセリングで相談を

家系にミトコンドリア病の方がいらっしゃるなど、心配な方は遺伝カウンセリングを行っている病院や施設などで相談することもできます。まずは、診てもらっている医師に遺伝カウンセリングについて相談してみてください。

遺伝カウンセリングは守秘義務は保持され、遺伝に関する知識を得たり不安ごとを解消したりできます。

出生前診断は難しいようです

症状を発症するか、また発症するのであれば症状の程度について、細胞内のミトコンドリアDNAの異常がどれだけあるかで変わってきます。出生前診断で異常が検出されたからといって、将来発症するとは限らないことなどから、ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の場合は出生前診断は難しいと考えられています。

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の症状

さまざまな症状があります

すべての細胞にミトコンドリアは存在しているので、ミトコンドリアの異常部分によって症状は全身の様々な場所で起きます。

しかし、すべての人で起きる症状には、脳卒中のような症状があります。けいれん(87%)や意識障害(82%)をともなう場合も多くあります。

そのほか、頭痛・嘔吐発作(79%)や、脳卒中のような症状を繰り返すことで起きる進行性知能障害(62%)、低身長(60%)、筋力低下(61%)が代表的な症状です。

他にも、感音性難聴(44%)や心筋症(22%)、糖尿病(13%)なども発症することが分かっています。

※カッコ内は、ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の症例100例のうち、発症した症状の割合を表しています。

代表的な初期症状

全身の筋肉がこわばる、てんかん、繰り返す頭痛発作と嘔吐発作、食欲不振、運動ができなくなったり、筋肉の脱力感などが初期症状として認められることが多いようです。また、低身長もおもな初期症状の一つです。

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の診断

どのような症状が起きているのか、症状別にあった診断方法をつかって詳しく診断します
たとえば、てんかんや脳卒中のような症状が出ていれば、CTやMRIなどの脳の画像診断を行います。

そのほか、ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)を発症していると、髄液中の乳酸値がとても高いことで知られているので、髄液検査も行われています。

また、ミトコンドリアに異常がないかも検査して判断します。
ミトコンドリアの検査には、以下の3つがあります

病理学的検査:おもに筋肉組織から細胞をとりだし、薬剤に浸して細胞内のミトコンドリアの形や大きさに異常がないかを調べます。異常なミトコンドリアは、赤く染められる薬剤に強く反応し、繊維がぼろぼろとした状態になっていることが多いといわれています。

生化学的検査:取り出された細胞内のミトコンドリアが、きちんとエネルギーを生産できているかなど、しっかりと働いているかを調べます。

分子遺伝学検査:ミトコンドリアDNAに異常がないかを分析します。

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の治療方法

現れた症状に合わせた治療が行われます

残念ながら、異常なミトコンドリアそのものを治す治療方法は見つかっていないため現れた症状を改善させる対症療法が行われています。

例えば、
・てんかんであれば、抗てんかん薬で予防する
・心筋症には、ペースメーカーをつけて予防する
・感音性難聴には、人工内耳をつける
・糖尿病には、血糖降下薬やインスリンによる治療を行う

指定難病であることからも、設備が整った診療科の多い総合病院などで専門医に診てもらうとよいでしょう。診療科は、どの部分で発症しているかで変わってきます。脳卒中のような症状が現れることがほとんどなので、その場合には脳神経外科や神経内科を受診します。

そのほか、おもに現れる症状にあった受診科は以下の通りです。

低身長・・・内分泌代謝内科、小児科
心筋症・・・循環器内科
糖尿病・・・糖尿病内科、内分泌代謝内科
感音性難聴・・・耳鼻咽喉科
筋力低下・・・整形外科など

日常生活で気をつけられること

ミトコンドリアはエネルギー生産に大きくかかわっています。そこで、エネルギーの源となる食事で、ミトコンドリアに負担をかけないようにすることが大切です。暴飲暴食をする、食事を抜くなども負担がかかりますので、規則正しい生活や食生活をすることが大切です。

治療薬の研究も進められています

現在、ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の脳卒中のような症状を防いだり、重症化を防ぐための治療薬の研究が進められています。

たんぱく質のもととなるアミノ酸の、タウリンやアルギニンを服用して、その効果を検証しているようです。実際にどのような試験が行われているかは、以下のサイトで確認ができます。

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)への支援

特定疾患治療研究事業の対象

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)をはじめとするミトコンドリア病は、2009年に国が指定する特定疾患治療研究事業の対象となったので、医療費の助成を受けることができます

助成を受けるためには、医療受給者証が必要です。医療受給者証を発行してもらうためには、診断書と必要書類を合わせて、都道府県の窓口に医療費助成の申請をします。

なお、「臨床調査個人票」と呼ばれる診断書が必要になるので、まずは医師に相談してください。どのような診断書であるかは、このページで検索できます。
このほか、いくつか受けられる支援制度をご紹介します。症状などに応じてぜひ活用してください。

認定基準を満たす18歳未満の子どもへの医療費助成

高額療養費制度

高額の医療費を支払った場合には、払い戻しを受けることができます。

身体障害者手帳

現れた症状によって、障害がある場合には身体障害者手帳の取得も可能です。
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障害年金

症状によっては、障害のある人を対象に、障害の程度に応じて一定金額の年金が支払われる障害年金の受給も可能ですので参考になさってください。
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まとめ

ミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)は、脳卒中のような症状が現れる非常にまれな疾患です。残念ながら、ミトコンドリア異常を治す根本治療はないため、対症療法を行います。発症した症状を進行させないためにも、脳卒中のような症状が現れた場合は、すぐに専門医に診てもらうことをおすすめします。

また、家系にミトコンドリア脳筋症・尿酸アシドーシス・脳卒中用発作症候群(MELAS)の患者の方がいらっしゃる場合など、心配な方はお近くの遺伝カウンセリングを受けられる施設で相談してみてください。
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