保健センターってどんな施設?保健所との違い、受けられる母子保健サービス、利用方法などまとめ【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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保健センターは、地域住民に対し、総合的な保健サービスを提供する施設です。乳幼児健診で保健センターを利用する方が多いようですが、そのほかにも子育てに役立つさまざまなサービスを受けられます。この記事では、保健センターの役割や母子保健サービス、利用方法などについてご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

保健センターってどんな施設?役割は?

健康に関するさまざまな相談ができる保健センター。赤ちゃんから高齢者まで、幅広い年代の相談に応じています。「子どもの発達が心配」「これって病院に行くべき?」など、病院に行くほどの緊急性がないお悩みや心配ごとを相談したいときにも頼りになります。どんな施設で、どんな役割を担っているのか、チェックしていきましょう。

保健センターとは?

保健センターは、地域住民に対し、母子保健事業や成人・老人保健事業など総合的な保健サービスを提供する施設です。

市町村ごとに設置されており、地域保健法では市町村保健センターと呼ばれています。例外として、区ごとにも保健センターを設置している地域もあります。例えば、東京都では市町村のほかに、23区にも保健センターが設置されています。

地域保健法は、それぞれの地域に住んでいる方の健康を推進するために定められました。この法律において、市町村保健センターは「住民に対し、健康診断、保健指導、健康診査そのほか地域活動に関し必要な事業を行うことを目的とする施設」と定義されています。
地域保健法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000101
母子保健をはじめ生活習慣病や高齢者保健など、地域住民の健康に関するニーズはさまざまです。地域によって、年代や性別など住民の構成も異なります。各地域の健康に関するニーズに応え、住民の健康を助ける身近な施設として設置されているのが、市町村保健センターなのです。

保健センターの役割

市町村保健センターには、保健師、管理栄養士をはじめ、歯科衛生士、理学療法士、看護師などが配置されています。さらに施設によっては、助産師や医師、心理発達相談員がいるところも。母子保健はもちろん、健康づくり、精神保健、救急医療、食育、保健衛生など、幅広いサービスを受けることができます。

市町村保健センターで受けられる一般的なサービスをご紹介します。

・母子保健事業
母子並びに乳幼児を対象に、家庭訪問、保健指導、健康調査、健康教育などを実施。赤ちゃんとお母さんの健康をサポートするためのさまざまなサービスが受けられます。母子保健事業については、後ほど詳しくご説明します。

・歯科保健事業
歯科健康相談、健診事業(1歳6ヶ月健診・2歳6ヶ月健診・3歳児健診)、「親子歯みがき教室」などの実施を通して、「80歳になっても20本以上歯を保とう」という8020運動を推進。

乳幼児だけでなく、子育てに忙しい保護者に対しても歯周病予防などの大人向けパンフレットを配布するなどの活動も行っています。

・栄養保健事業
乳幼児から成人・高齢者に対して、健全な食生活への支援を行う事業です。生活習慣病の予防と改善を促すとともに、食事に関する知識をつけて健康な生活を送る「食育」を推進しています。栄養相談や栄養指導なども行っています。

・成人・老人保健事業
健康な状態で日常生活を送れる期間である「健康寿命」を伸ばすために、成人及び高齢者を対象に生活習慣病などの予防を推進する支援・サービスを実施。
具体的には、健康手帳の交付や健康相談、生活習慣病予防などに関する健康講座、保健師や栄養士、歯科衛生士、理学療法士による家庭訪問指導などを行っています。

地域によってサービス内容は少しずつ異なります。市町村によっては保健センターのサービスの一部を、母子保健センターや健康増進センターなどで、受けられる地域もあります。利用を検討する際は、市町村のホームページや広報誌などで確認しておくとよいでしょう。

保健センターと保健所の違い

市町村保健センターが地域に暮らす人々の健康づくりを中心とした施設であるのに対し、保健所は地域全体の健康増進と疾病予防をめざす「公衆衛生」を中心とした施設です。どちらも地域保健法において定義されていますが、役割をはじめ、設置場所・運営、職員などに違いがあります。

<役割>
保健センターでは、母子保健をはじめ、成人・老人保健や予防接種などの支援を提供。地域に暮らす人々の健康ニーズに合わせたさまざまな対人サービスを受けられる施設です。
それに対して、保健所は保健センターよりも幅広い役割を担い、その専門性も高いのが特徴です。

保健所では、人口動態統計や地域保健に関わる統計の作成、栄養改善及び食品衛生、伝染病の予防、水質調査などの環境衛生、医事・薬事、精神保健などの事業が行われています。さらに、障害のある子どもの療育にも関わります。

<設置場所>
保健センターは基本的に市町村ごとに、保健所は都道府県、政令指定都市、中核市及び東京の特別区に設置されています。

<職員>
保健センターの職員のうち、最も多いのは保健師です。さらに地域の健康ニーズに合わせて、専門知識を持つスタッフが配置されています。

保健所の施設長は、原則として医師が務めます。職員は、保健センターよりも幅広い分野における専門スタッフが配置されています。

最近では母子保健などの事業において、市町村保健センターの役割が大きくなりつつあり、保健所は専門性の高い業務に特化している場合もあります。 詳しくは、お住まいの地域にある保健所・市町村保健センターのホームページを確認してみてください。

保健センターの設置数

健康局健康課地域保健室調べによると、令和4年4月1日現在、全国に設置されている市町村保健センターは、2,432あります。

保健センターにおける母子保健のサービス内容

保健センターの利用者で特に多いのが、小さいお子さんがいらっしゃるパパ・ママです。乳幼児健診で保健センターを利用する方が多いようですが、そのほかにも子育てに役立つさまざまなサービスを受けられます。保健センターは、妊娠から子育てまでの一連の支援が充実しているのです。

ここでは母子保健事業を、妊娠から子育てまでの流れにおいて欠かせないサービスと、子育てに役立つさまざまなサービスの2つに分類してご紹介します。

妊娠から子育てにおいて欠かせないサービス

◇妊娠の届け出と母子健康手帳交付及び妊婦相談
妊娠の届出をすると、市町村から母子健康手帳が交付されます。この妊娠の届出・母子手帳の交付を行う窓口の一つが保健センターです。妊娠の届出は、妊娠中に必要な保健指導や健康診査を受けられるようにするためのものです。

◇新生児・妊産婦訪問指導
妊娠中の方、出産前後の方、新生児や未熟児のお子さんがいらっしゃる方に対して、医師、助産師、保健師が家庭を訪問し、健康の保持や日常生活全般に関する指導が行われます。

◇乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)
生後4ヶ月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、さまざまな不安や悩みを聞き、子育て支援に関する情報を提供する事業です。また親子の心身の状況や養育環境などの把握や助言を行います。

乳幼児がいるご家庭と地域社会をつなぐことを目的としており、実施は特別区を含む市町村が行っています。新生児・妊産婦訪問指導とこんにちは赤ちゃん事業がどのように行われているかは、自治体ごとに少しずつ違いがあるようです。

◇4ヶ月児健康相談など
4ヶ月児健康相談は、生後4ヶ月の時期に相談を行い、育児不安に対応して、前向きに子育てができるようにする支援です。さらに精神科医や臨床心理士による育児ストレスの相談なども行われています。

◇乳幼児健診
乳幼児健診は、子どもの成長、栄養状態、先天的な病気の有無などを確認すると共に、栄養指導や母親へのサポートを行う機会でもある、大切な健診です。

・1歳6ヶ月児健康診査(1歳半健診)
1歳6ヶ月児健康診査とは、発達の目安が比較的わかりやすい1歳6ヶ月の時期に行う総合的な健康診査のことです。先天性疾患や、斜視、聴覚異常、心音異常、皮膚の異常などの有無を確かめる重要な機会でもあります。さらに虫歯予防や栄養、育児に関する指導なども行われています。
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・3歳児健康診査(3歳児健診)
3歳児健康診査は、身体発育、精神発達の面から最も重要な時期である3歳児に行う総合的な健康診査のことです。子どもの心身の成長、栄養状態、先天的な病気の有無などを確認すると共に、子育てのサポートを行います。言葉の発達や運動能力の発達の確認は、3歳児健康診査における重要な目的です。
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これらの健診において精密検査が必要とされた場合は、専門的な診断のもと、適切な治療や療育を促していきます。さらに内科個別健康診査で精密検査が必要となった場合は、指定された医療機関で健康診査を行います。

そのほか保健センターで受けられる、子育てに役立つさまざまなサービス

◇母親教室(母性教室、ママになるための教室)
妊娠・出産・育児について、正しい知識の普及や不安の解消を図ります。安心して妊娠期間を過ごし、出産を迎えられるようにする支援です。さらに地域におけるママどうしの友達づくりも推進しています。

◇両親教室(パパ・ママ教室など)
夫婦で妊娠・出産・育児を学び、夫婦共同の子育てや家庭づくりを促していきます。

◇健康教育
・健康講座
子どもに起こりやすい病気や事故について学習し、日常の健康管理・事故防止の重要性についての知識を深める機会となります。

・母親教室(母性教室)同窓会
母親教室(母性教室)の同窓生の母子交流を通して、孤立化の防止と子育ての健全育成を促すことを目的で行われます。

・地区健康教育
子どもの健康や育児などについて学び、日ごろの健康管理の重要性についての知識を新たにする場です。地区を担当する保健師・栄養士・歯科衛生士が、児童ホーム・公民館・自治会などと連携を取りながら計画し、実施されます。

・ブックスタート事業
絵本の読み聞かせをし、親子が触れ合う時間をつくります。子どもの健やかな心の発達を促し、より良い親子関係を育むことが目的です。

◇母子交流支援・育児サークル育成支援
地域ぐるみの子育てを支援する取り組みです。健康教室などを通じて、地区の育児サークルの育成・支援を実施。地域の育児サービスの育成を図ると共に、自立活動をサポートします。 

◇健康相談
・子育て支援相談
子育てに関する相談に総合的に対応し、育児に対する不安を解消する目的で設けられています。相談は窓口のほか、電話でも対応。相談内容がほかの専門分野や手続きなどに及ぶ場合は、その分野の担当職員が担当します。

・地区健康相談
地区を担当する保健師が、心身の健康や育児不安などに関する個別の相談に応じます。さらに指導・助言を行い、育児不安の解消や適切な療育への橋渡しを行います。

◇家庭訪問指導
妊婦相談、乳児相談、乳幼児健診などにおいて、家族から家庭訪問の希望があった場合、あるいは医療機関から依頼があった場合に、育児・療養・そのほかの支援を行います。育児の場である家庭に相談員が出向いて話を聞くことで、不安をやわらげ、健全な子育てにむけての指導を行います。
次ページ「保健センターの利用方法」

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