祖父の一言で息子のパニックはみるみる鎮火。電話口から放たれたアドバイスとはいったい

ライター:林真紀
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息子は初めての体験をとても不安がります。不安のループに陥る原因は、いつも「最悪の結果を想定してしまう」こと。そんな風になってしまうと、もはやどんな励ましの言葉もパニックを誘発してしまうだけ。ところがある人物が、そんな息子のパニックをいとも簡単におさめてくれたのです。

初めてのことに恐怖を感じる発達障害の息子。

発達障害のある子どもは、自分が予測できない「初めてのこと」に強い恐怖を覚える傾向があります。

初めての場所、初めての人、初めての食べ物、初めてのイベント…発達障害のある小学校1年生の息子に対しても、パニックを防ぐための「事前予告」は欠かせません。

なにをするにも徹底的に事前予告をすることが必要なので、どんなことも先回りしてリサーチする必要があります。そして息子に視覚化して分かりやすく伝える事前予告をこれまで続けてきました。

しかし、そこまでやっても息子はパニックを起こしてしまうことがあるのです。

そんなときは私も、心身ともに立ち直れないぐらい疲れてしまいます。「何も考えずにどこかへ連れていけたらどんなにいいだろう…」と思ったことも、一度や二度ではありません。

でもなぜ息子は「初めてのこと」に対してそこまで恐怖感を覚えるのでしょうか。このことについて一般的に「予測できないから」と言われることが多いように思いますが、そもそもなぜ「予測できないこと」がそんなに怖いのでしょうか。私は息子が恐怖感に苦しめられているときの言動から、息子の思考パターンに気付いたのです。

それは、息子が「予測できないこと」に対して、「最悪のパターンを予測してしまう」ということ。発達障害のある子どもによく起こりがちと言われる、“0―100思考”のためでしょうか。とにかくありえないような最悪のパターンを予測して、自分で苦しんでいることに気付いたのです。

恐怖に埋もれる息子の耳は、いつも「ちくわ状態」

息子は、まだ見ぬ未来のことを心配し始めると、私のどのような励ましも耳がちくわ状態で全部抜けていきます。

例えば、一時期歯医者さんに行くのが怖かった息子。「歯のお掃除に行くだけだからね。お口をあーんして、歯を磨いてもらって、フッ素を塗っておしまいね。」と私が事前予告をしても、「もしも大きな虫歯があったら??そしてそれをひっこぬくんだ。どうしよう。歯を抜かれたらどうしよう。虫歯が何十本もあったら全部抜くんだ。どうしよう。」とありえないような最悪のケースを想像して、部屋の中をぐるぐると回っています。

こんな想像をしていて、歯医者さんにまともに受診できるはずがありません。いつも椅子に座る前からパニックでした。こんなとき、私は絵を描いたり、説明をしたりして、必死に息子の過剰な想像をおさめようとしていました。

「大丈夫、絶対そんなことにはならないよ」「もう1回状況を復習しよう」

ところが、私が息子を落ち着かせようとすればするほど、息子はパニックになっていくのです。

息子は最悪のパターンを想像しているときは、私の励ましなんて「雑音」にしか聞こえない様子。もう私にできることは何もない、どう声をかけていいかもう分からない…と、私はほとんど諦めていました。

息子の表情を劇的に変えた、一本の電話。

息子の「初めてのことに最悪のパターンを想像する」という厄介な思考パターンは、小学校に入学しても炸裂していました。そうです。小学校でのどんな勉強もテストも、「初めて」なのです。

特に「テストを受ける」ということ自体が息子にとっては経験のないこと。そのテストにどんな問題が書いてあって、どういう形で受けるかも分からないのです。初めてのことが怖い息子が、怖がらないわけがありません。

息子は起きている間中、
「テストが0点だったらどうしよう。」
「みんなにバカにされて、廊下に立たされるかもしれない」
と言いながら、思い悩むようになりました。そのうちに、登校中に毎日のように腹痛を訴えるようにまでなってしまったのです。

私は、「0点は絶対ないよ」「ドラえもんの見過ぎ。あれは漫画だよ。」「一緒に勉強すれば大丈夫」などといつものように励ましの言葉をかけ続けました。けれども、いつもどおり息子の耳はちくわ状態。息子は0点を恐れ、机にかじりつき必死に勉強しますが、恐怖心を払しょくできません。

もはや、どうすればいいのか分からなくなったとき、偶然一本の電話がかかってきたのです。

それは息子と同じADHDのある、私の父でした。

テストのことが頭から離れない息子は、「おじいちゃん、テストで0点取ったらどうしよう」と電話で必死に訴えていました。

しかしここから、驚くべきことが起こります。
受話器から私の父の返答を聞いた息子は、それまでのひどく追い詰められた表情が打って変わり、憑き物が取れたかのように明るい表情になったのです。

電話を切った息子は、とても穏やかな顔をしていました。テストのことはまだ心配そうではありましたが、それまでとは比較にならないほど落ち着いていたのです。
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