筋ジストロフィーとは?筋肉が衰える?遺伝するの?発症の原因や症状の種類、知的障害との関係について

ライター:発達障害のキホン
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筋ジストロフィーとは、遺伝子の変異によって筋力が低下していく病気です。現在、厚生労働省によって指定難病に認められています。今回はその原因や種類、特徴、症状、診断方法や治療方法について、詳しくご紹介します。

目次

筋ジストロフィーとは?

筋ジストロフィーとは、筋肉が徐々に弱り、性質が変わったり壊れたりする疾患の総称で、国の指定難病の一つです。筋肉を作っているたんぱく質の設計図となる遺伝子が変異していることによって、正常なたんぱく質が作られなくなることが原因になります。

筋ジストロフィーにはデュシェンヌ型、ベッカー型、福山型、エメリー・ドレイフス型などさまざまな病型が含まれます。筋力低下により、運動機能の障害や合併症がみられることもあります。

筋ジストロフィーと筋萎縮性側策硬化症(ALS)の違い

筋ジストロフィーと似ているものに、筋萎縮性側策硬化症(ALS)という病気がありますが、筋ジストロフィーと筋萎縮性側策硬化症(ALS)は、病気を引き起こしている原因に違いがあります。
端的に言うと、筋ジストロフィーは筋肉の病気、ALSは神経の病気です。
筋ジストロフィーは筋肉を構成するたんぱく質の病的な変化によって筋力の低下が起こりますが、筋萎縮性側策硬化症(ALS)は筋肉自体に原因があるのではなく、筋肉に指令を出す神経(運動ニューロン)に原因があることによって筋肉の萎縮が起こるとされています。

今回は筋ジストロフィーの原因や種類、特徴、症状、診断方法や治療方法について、詳しくご紹介します。

筋ジストロフィーの原因は?遺伝?突然変異?

筋ジストロフィーと遺伝

筋ジストロフィーは遺伝や、遺伝子の突然変異によって発症します。原因となる遺伝子は多数発見されており、それを責任遺伝子と呼びます。筋ジストロフィーを引き起こす遺伝子変異は、親から子へと受け継がれる場合もありますし、親に遺伝子変異がなくても突然変異が生ずることもあります。さらに遺伝子変異があっても筋ジストロフィーを発症しない場合もあります。

筋ジストロフィーも含め、一般的に遺伝の形式には、大きく分けて以下の3種類があります。
・X連鎖性遺伝
・常染色体顕性遺伝(優性遺伝)
・常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)


それぞれの遺伝の仕方にはどのような特徴があるのでしょうか。

X連鎖性遺伝の特徴

X連鎖性遺伝の特徴
X連鎖性遺伝の特徴
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男性はX染色体を1本、女性はX染色体を2本もっています。X連鎖性遺伝は、母親のX染色体のうち1つに原因遺伝子の変異がある場合に、その遺伝子が男の子に引き継がれると発症するという遺伝形式です。原因となる遺伝子変異が女の子に引き継がれた場合、通常は発症しません。

常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の特徴

常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の特徴
常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の特徴
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常染色体顕性遺伝(優性遺伝)は、ペアになっている遺伝子のうち一つに原因遺伝子があった場合に、それが子どもに受け継がれることで発症するという遺伝形式です。片方に原因遺伝子があると発症するため、親が原因遺伝子を持っているときは2分の1の確率で子どもに受け継がれます。受け継がれた原因遺伝子によって発症するかどうかは、疾患によって異なります。X遺伝子とY遺伝子の区別はないため、男女両方に同等に遺伝する可能性があります。

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)の特徴

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)の特徴
常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)の特徴
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常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)は、1対の遺伝子の両方が原因遺伝子の変異がある場合に発症します。そのため、両親が原因となる遺伝子変異を持っている場合は4分の1の確率で子どもが発症します。この遺伝形式も上の常染色体顕性遺伝(優性遺伝)と同じく、X遺伝子とY遺伝子の区別がないため、男女ともに同等に遺伝する可能性があります。

筋ジストロフィーはどのように発症するの?種類、特徴、症状、寿命は?前兆はあるの?女性もかかる?

筋肉を構成する細胞は、さまざまなたんぱく質でできています。たんぱく質は細胞を作る部品で、それぞれの部品の設計図が遺伝子と呼ばれるものです。遺伝子の情報に変異があると、通常とは異なる部品、つまり細胞となり、最終的には筋肉の構造や機能にまで影響が出てしまいます。その結果、筋力が低下し、体のさまざまな機能に障害が現れる病気が、この筋ジストロフィーです。
筋ジストロフィー発症の流れ
筋ジストロフィー発症の流れ
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(公財)難病医学研究財団 難病情報センターHP「筋ジストロフィー(指定難病113)」より引用・改変

筋ジストロフィーの種類、特徴、症状、寿命は?前兆はあるの?女性もかかる?

筋ジストロフィーには、以下のようにさまざまな種類「病型」があります。
・デュシェンヌ型
・ベッカー型
・エメリー・ドレイフス型
・福山型
・肢帯型
・顔面肩甲上腕型
・筋強直性
・眼咽頭筋型
 など

そして、それぞれの病型によって遺伝の仕方や、症状、進行の程度、寿命などが大きく異なります。また、初期症状、前兆の有無もそれぞれです。男性にしか発症しないもの、女性も発症するものなどがあります。

ここでは代表的な筋ジストロフィーであるデュシェンヌ型、ベッカー型、エメリー・ドレイフス型、福山型先天性筋ジストロフィーの4つを取り上げ、その特徴をご紹介します。

・デュシェンヌ型
デュシェンヌ型(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、おもに男の子に発症する筋ジストロフィーです。遺伝形式はX染連鎖性遺伝で、ジストロフィン遺伝子の変異により、筋線維膜直下に存在するジストロフィンたんぱく質が欠損することで生じます。日本に生まれてくる男の子のうち約3500人に1人が発症するといわれています。

歩き始めるのが遅かったり、階段を嫌がったりという症状、特徴から病気に気づく場合もありますが、近年では血液検査によってたまたま発見されることも多いとされています。手足の筋力低下や筋萎縮に加え、関節の拘縮や呼吸障害、嚥下障害、心機能障害などが進行します。中には知的な遅れが見られることもあり、場合によっては自閉傾向を示すこともあります。
デュシェンヌ型の寿命については、自然経過に任せるしかない時代は10歳代後半程度でしたが、2012年では32.4歳まで延伸しています。
さらに、保因者である女性についても、心機能など丁寧なフォローアップが重要であるとされています。
参考:日本神経学会「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン」
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/dmd.html
・ベッカー型
デュシェンヌ型と同じく、ベッカー型(Becker mudclar dystrophy:BMD)の筋ジストロフィーもおもに男性に発症します。これも、ジストロフィン遺伝子に変異が生じる疾患ですが、その変異の状態の違いにより、ジストロフィンたんぱく質が少量作られている点が異なります。

症状はデュシェンヌ型に似ているものの、成人を過ぎても歩行が可能であるなど比較的軽い症状が多いのが特徴で、症状の重さの幅が非常に広いとされています。なかには運動をするときの筋肉痛が唯一の症状というケースもあります。
参考:日本神経学会「未成年で発症する疾患」
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/gdgl/sinkei_gdgl_2009_03.pdf
・福山型
福山型先天性筋ジストロフィー(Fukuyama type congenital muscular dystrophy: FCMD)は先天性の疾患で、日本に生まれてくる全ての子どものうち1万人に1人が発症するとされています。この福山型に関しては常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)という遺伝形式から、男の子、女の子問わず発症する可能性があります。
参考:小児慢性特定疾病情報センター「福山型先天性筋ジストロフィー」
https://www.shouman.jp/disease/details/11_20_049/
FCMDの患者さんでは、筋力低下の症状に加えて知的な遅れを伴っている人が多くいると言われています。しかしその程度には個人差があり、単語を複数つなげた言葉を話す人もいれば、普通の会話ができる人もいます。また、約半数の人にけいれんの症状がみられることもFCMDの特徴です。
参考:福山型筋ジストロフィーにおける 細胞移動障害の治療法確立|公益財団法人難病医学研究財団
https://www.nanbyou.jp/wp-content/uploads/2018/10/b63e2cce028340f426fa977e3eb6070b.pdf
・エメリー・ドレイフス型
エメリー・ドレイフス型((Emery-Dreifuss:EDMD)もしくはエメリー・ドレイフェス型)筋ジストロフィーは、関節拘縮、humero-peroneal 型の筋萎縮、心伝導障害など、心筋症が起こる筋ジストロフィーです。

心筋症が軽微な場合は発見が遅れる場合があります。原因遺伝子は6種類知られており、その種類によって遺伝形式も異なります。遺伝子検査によって早期に診断し、必要に応じて心臓ペースメーカなどを導入します。
参考:小児慢性特定疾病情報センター「エメリー・ドレイフス(Emery-Dreifuss)型筋ジストロフィー」
https://www.shouman.jp/disease/details/11_20_046/
次ページ「筋ジストロフィーの診断方法」

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