筋ジストロフィーの診断方法

生後1歳未満に筋力低下で発症する疾患には、筋ジストロフィーの中では先天性筋ジストロフィーがありますが、筋ジストロフィー以外の疾患の可能性も含めて専門医の診察が必要です。子どもに低緊張(自分の体を支えるための筋肉の張りが弱い状態のこと)の症状がみられたり、子どもが歩きだすのが遅かったり、転ぶことが多いことなどがあれば、専門医に相談しましょう。

筋ジストロフィーを診断できる病院は、現在全国に60ヶ所以上あります。また、筋ジストロフィーも含めて小児期の疾患については小児神経専門医において診療が可能です。筋ジストロフィー等が診断可能な病院はこちらから探すことができます。
参考:日本筋ジストロフィー協会「協会で紹介する筋ジストロフィー(筋萎縮症)の専門病院」
http://www.jmda.or.jp/5/hsp.html
参考:小児神経学会認定の小児神経専門医
https://www.childneuro.jp/senmoni/
筋ジストロフィーの診断には、以下のような検査が行われます。

・血液検査
血液検査では、「血清クレアチンキナーゼ」という値が調べられます。この値が高い場合は筋細胞が壊れている可能性が考えられるため、筋ジストロフィーや筋炎が疑われます。
 
・遺伝子解析
筋ジストロフィーは、遺伝子の変異によってひき起こされます。そのため、血液中の遺伝子を調べる遺伝子解析は、自分や自分の家族が筋ジストロフィーを発症する/している可能性を調べるのに有効です。また、筋ジストロフィーの種類について判別することができます。

・筋生検
筋生検とは、筋肉の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。この検査は、症状の原因が筋肉にあるのか、神経にあるのかの判断に役立ちます。同時に筋肉に原因があるとしたら、筋肉中のどこに原因があるのかを調べることができます。この検査には痛みを伴うため、局所麻酔を使用される場合が多いです。

他にも筋ジストロフィーの診断には、症状の原因を探る針筋電図検査や、筋肉の状態を見る筋肉CTやMRI等、さまざまな検査が行われます。

筋ジストロフィーと出生前診断

筋ジストロフィーの中には、出生前診断で確認できるものがあります。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合では、遺伝子の変異があらかじめ分かっている状態(保因者)においてのみ、検査を受けることが可能です。また着床前診断も認可されており、受精卵の状態で検査をすることが認められていますが、100%の確率で確定診断することはできません。

出生前診断は、命の選択にも関わる倫理的にも大きな問題です。特異的な治療薬も開発されている現在、医師だけでなく遺伝カウンセラーやセカンドオピニオンからも十分な情報を得ること、家族と十分な話し合いを重ねていくことが欠かせません。
参考:日本神経学会「未成年で発症する疾患」
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/gdgl/sinkei_gdgl_2009_03.pdf

筋ジストロフィーの治療方法

筋ジストロフィーの完全な治療方法については、多数の研究がなされ、2020年には一部のデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療が可能になりました。そのほかにも様々な研究途中の治療ものがあります。それに加え、筋ジストロフィーを発症した人がよりよい生活をしていくための方法は、次々と開発されてきています。

今回はそれらの治療方法のうち3つをご紹介します。

エクソンスキッピング治療

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因となっている変異のある遺伝子配列に隣接した、特定のエクソン(遺伝子のまとまり)の転写をスキップさせることで、ジストロフィンたんぱく質を作れるようにする治療が可能となっています。この方法を利用した治療薬には現在ビルトラルセンがあり、デュシェンヌ型のおよそ10%程度がこの治療の対象になります。それ以外にも同様の治療が開発段階にあります。
参考:一般社団法人日本小児神経学会「Q93:デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の新しい治療法について教えてください。」
https://www.childneuro.jp/general/6573/

ステロイドなどによる薬物療法

デュシェンヌ型の筋ジストロフィーには、ステロイド(プレドニゾロン、プレドニゾン)という薬が有効であることが分かっています。この薬には筋力の低下が始まってから筋力や運動機能を改善させたり、進行を遅らせたりする効果があると言われています。

ステロイド治療は、運動発達が停滞し、筋力低下が明らかになったときから歩行が不可能になるまでの期間において行うのが一般的ですが、処方を始める時期や、終了する時期については、明確には定められていません。歩行が難しくなったあとでも効果を示すという実例があることからも、患者の方や家族の方の希望や副作用などを考慮して治療を続けることも可能なようです。

しかし歩行期間の延長という効果を発揮する一方で、高血圧や血糖値の上昇、体重増加などの副作用がみられることもあります。
出典:日本薬局方 プレドニゾロン錠
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00010794.pdf
出典:日本神経学会「ステロイド治療」
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_05.pdf

リハビリテーション

もう一つは、リハビリテーションです。リハビリテーションには、関節が拘縮したり、変形したりしてしまうのを予防するものや、転んだり事故を起こしたりするのを予防するもの、また車いす等を使って生活をするための訓練や、肺や胸の動く範囲を保つ呼吸のリハビリテーションや嚥下のリハビリテーション等があります。

そのほかにも、呼吸不全に対する人工呼吸法、心不全に対する薬物治療等もあり、最近ではデュシェンヌ型の筋ジストロフィー治療に対する遺伝子治療が可能となっています。医療の発達と共に、より効果的な治療が可能になってきていると言えるでしょう。
日本小児神経学会「筋ジストロフィーのステロイド治療について」
https://www.childneuro.jp/
次ページ「筋ジストロフィーに知的障害(知的発達症)は合併するの?」

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