掃除中に「ふざけている」と言われた息子。泣きながら語ったその真実とは

ライター:林真紀
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発達障害のある息子は、場所をわきまえずに突然ふざけ始めて、どんなに制止しても言うことを聞かないときがあります。なぜそんなにふざけるのか、なぜこんなに周りが見えないのか、悩み苦しんだ私がある日気づいたことは…。

また言われた!「息子くん、ふざけてばかり」

発達障害のある息子は、たまに周りの人が困ってしまうほど、場をわきまえずにふざけてしまうことがあります。近くに私がいて制止しても何の効果もありません。むしろ、制止すればするほど、ふざけ方がエスカレートしていくのです。

頭の切り替えがうまくいかないからふざけてしまうのか、それとも単純に場の空気を読むことが苦手なだけなのか、とにかく一度ふざけ始めると「もう勘弁してよ~」と私は半泣きになるのでした。

息子のそんな態度に冷や冷やしながら始まった小学校生活。ある日、私が用事で小学校に行ったときに、息子と同じクラスのお友達からこう言われたのです。

「息子くん、掃除のときずっとふざけてます。全然ちゃんとやらないんです」


この言葉を聞いて、私はとにかく情けなくなってしまいました。1年生になれば普通に掃除もできるようになるでしょうに、どうしてそういうときにふざけるのか…と。

さらに詳しく聞くと、息子は、みんなが掃除をしているのに、教室の中をフラフラしていたり、学校の備品などを触って遊んでいるというのです。

こんなことを同じ年のお友達に報告されるのも情けない限りで、私は何度も謝って小学校をあとにしました。

息子がふざけてしまった理由を聞き…

その日、帰宅した息子に、なるべく冷静さを保ちながら私は言いました。

「ねえ、今日ね。掃除のときに息子くんがふざけてばかりでちゃんとやってくれないって聞いたんだけど。掃除の時間はふざけたりしないで、ちゃんとやろうよ」

すると、息子は言ったのです。

「ふざけてるんじゃない」

そして、その次の言葉に、私は衝撃を受けたのでした。

掃除の時間、自分は何をやればいいのか分からない。今日は教室の担当、とか、今日は下駄箱の担当、とかしか言われないけど、何をどうすればいいのか分からない。みんなは何も教えられていないのに、自分のやることがなんとなく分かっているみたいだ。でも僕には、さっぱり分からない。分からないうちに取り残されている。」

息子の頬から、小学校入学して初めての涙が、ぽとんと落ちました。

息子は発達障害の特性で、周囲の流れを読みながら行動をするということがとても苦手なのです。何をすればいいのか具体的に指示がない、自分に特別な役割が与えられているわけでもない、ただ周りの動きを見ながら自分のやることを見つけなければならない、それが掃除だったのでした。

息子は決して「ふざけていた」のではないのです。「困っていた」のです。

「困った子」は「困っている子」という言葉を思い出す

息子の言葉を聞いて、私はそれまで息子がふざけてしまって制止ができなかった場面を一つひとつ回想してみました。それはどれも、息子が「どう行動したら良いのか分からないとき」だったのです。

息子は、初めて会った人にいろいろ話しかけられたり、初めての場所で何かをしなければならないときに、必ずふざけ始めます。初めての人や初めての場所は、息子が特に苦手とするものです。なんとなく周囲を見ながらコミュニケーションを取ったり、自分の行動を決めたりということが、発達障害の子どもには難しいからです。

そのことに気づいた私は、息子が掃除のしかたが分からないという件について、連絡帳に書いておきました。学校ではすぐに、息子に具体的な指示と役割を与えてくださり、以後「掃除中ふざけている」というような話は聞かなくなりました。

息子が「ふざけている」のは「困っている」とき。これは、発達障害児についてよく言われる「困った子」は「困っている子」と同義なんだな…と感じています。

このことが分かってから、ふざけてしまう息子に対して「ふざけちゃダメ!」と怒るのではなく、「何に困っているのかな」と思って接することができるようになりました。そのおかげで、ただただ「情けない」と私の感情が高ぶってしまうこともなくなり、どうしたら息子が楽になるのか、冷静に考えることができるようになったのです。
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