感覚過敏の息子をパニックから一瞬で開放する「魔法の呪文」とは!?

ライター:GreenDays
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息子の久々のパニックに使うことになった「魔法の呪文」。その呪文を二人で唱えると息子はあっさりとパニックから抜け出すことができました。でも、そもそもパニックはなぜ起こるんだろう。そして、パニックを起こすことによってどんなメリットがあるのだろう?と考えてみました。

聴覚過敏の息子の「魔法の呪文」

先日、人混みに酔ってしまう凸凹姉弟を連れて、平日に休みを取ってテーマパークへ遊びに行ってきました。私たちの他には数組の観光客がいるだけでしたので、子どもたちの緊張度合いも軽く、ゆっくりと楽しめていたように思います。

ところが、マイナス20℃の世界を体験できるというブースに入った時のことです。予想に反し、お化け屋敷のような造りになっていたため、息子は怖がって私の手を握り前に進めなくなってしまいました。早く脱出しようと、息子を抱っこして足早に出口に差し掛かったところで、「バーン!」という大きな音とともに冷風が吹きつけられてきました。

その瞬間、聴覚過敏の息子はパニックに陥りました。

私の胸にしがみついたまま目をつぶって大粒の涙を流し「怖い!怖い!」と泣き喚き、誰の声も届かない状態になってしまったのです。

息子を抱いたまま慌ててその場を離れ、花壇の側に腰を下ろして、息子の顔をそっと両手で挟んでこちらを向かせます。

私「大丈夫、大丈夫!ママはここにいるからね。とりあえず、あの呪文を言ってみるよ!せーの!」

二人「「ああ、ホッとした!」」

まだ小さい頃、しょっちゅうパニックに陥っていた息子と二人で決めた魔法の呪文、それが「ああ、ホッとした!」です。ママと目を合わせてこの呪文を唱えたら、心が落ち着くからね。パニックを終わらせられるからね。そうやって、何年も一緒に唱えてきた呪文のおかげで、息子は今回もあっさりとパニックから抜け出すことができました。

次の瞬間にはもう花壇を眺めながら「きれいねぇ」「ママはこの色のお花が好きそうだね」とのんびりとお話しています。

確かにあの大きな音には私も驚いたけれど、息子にとっては考えられないほどの衝撃があったんだな。そう考えつつも、こんなにあっさりと抜け出せるなら、さっきの大泣きは何の意味があったんだろう?そんな疑問もわいてきました。

一体、どうして息子はパニックに陥ってしまうのでしょうか?パニックに陥ることで、息子に何かメリットがあるのでしょうか?

パニックの時、息子の中で何が起こっている?

そんなことを考えながら息子の手を引いて歩いているうちに、とあるテレビ番組を思い出しました。

臆病な芸人さんたちをわざとビックリさせて、彼らが驚くようすを見て楽しむという番組です。テレビは作られた世界なのでやらせや演技だという意見もあるそうです。しかしわが子たちも、驚いた時や恐怖を感じた時は固まって動けなくなったり、飛び上って尻もちをついたりしています。それを思うと、番組での芸人さんの反応は、あながち演技ではないと感じたりもします。

さて、その番組の中で、ある芸人さんがパニックを脱するために必要なことを「怖いという気持ちを抜く」と表現していました。そして今回、息子がパニックから抜け出すまでの過程を見て、息子も怖いという気持ちを抜くために、パニック状態に陥ってるのかしれないなと思うようになりました。

感覚過敏の息子には、突然降りかかってきた大音量は恐怖以外のなにものでもなかったのだと思います。

私たちが「わぁ!ビックリしたなぁ!」と笑えるほどの音であっても、息子は何百倍、何千倍という強烈な感覚で受けて止めているのでしょう。そして、全身を襲う恐怖の感情をなんとか体から追いだそうと、大声で泣き叫んだり、逆に何も感じないように固まったりして、「怖いという気持ちを身体から抜く」作業を行っているのかもしれない。そう思うと、少し息子を理解できたような気がしたのです。

だから、私と「ああ、ホッとした」という呪文を唱えることで、「怖いという気持ちを身体から抜く」という作業は完了し、いつもの息子に戻れたのではないでしょうか。

今まで息子がパニックに陥るたびに、私は一刻も早くパニック状態から抜け出させてあげることだけを考えていました。周囲への配慮もありますが、なによりも息子が一番辛そうだったからです。

しかし、パニックに陥るのにも意味があるとわかったことで、「どうしようもないほど怖かったんだね」と共感し、「怖い気持ちは追いだせた?」と声をかけることができるようになりました。

息子が感じる恐怖がどれぐらいのものなのか、他人である私には本当の意味で理解することはできません。ですが、寄り添ってくれる人がいるということだけでも、安心して過ごせる材料になるかもしれないと思っています。

保護者として私たちにできること

発達障害を抱えるお子さまの中には、パニックを起こしてしまう人も多くいらっしゃると思います。それを支えるご家族の方も本当に大変です。でも、次にお子さまがパニックを起こした時には、「今、恐怖を追いだそうと戦ってるんだな」「行き場のない感情を処理しようとしているんだな」と少し視点を変えて見守ってみるのはいかがでしょうか?

パニックの内容を言語化してあげることで、お子さま自身も、なぜ自分がパニックに陥ってしまうのかがわかり、別の対処法が見えてくるかも知れません。

残念ながら、些細なことに恐怖を感じたり、上手く体を動かせなかったりすることで、からかいやイジメのきっかけになるようなこともあります。

今の私たちにできることは、苦手な刺激から子どもたちを守り、対処方法を一緒に探ること。そして、「自分を大切にしてくれない人からは全力で逃げなさい」と教えてあげることぐらいなのかも知れませんね。
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