困難を一人で乗り越えてきた娘の姿を知ることに…

そしていよいよ検査のために筑波大学東京キャンパスへ。
「アーレン症候群」を知っていますか。文字が回ったり歪んだり…娘の検査からアーレンレンズを手にするまでの画像
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この頃は学習面での困難が全く表面化していなかったため、私としては「アーレン症候群の疑いを今のうちに消しておくのもいいだろう。」くらいの軽い気持ちでの受診でした。


相談用の個室にて、アーレン協会のライセンスを持つ先生が、質問票を確認しながら娘に優しく語りかけ話を聞いてくださいました。

すると母である私は全く気がついていなかった、娘の「感覚」や「困難を感じたことへ自分で工夫し乗り越えてきた様子」を初めて知ることになりました。

こんなに小さな娘が一人で対処してきたのか、と驚きと共に申し訳ない気持ちになりました。

先生の的確な質問とご説明のおかげで、娘の感じている世界、見えている世界の一端を知る事ができました。

会話の多い子育てを心がけてきただけに、母親である私がいかに単一的な自分の視点ばかりで娘のことを捉えていたのかに気がつき、大きな衝撃を受けました。

当事者である娘は、自分の世界を理解してくれ言語化してくれる初めての存在に出会えた安堵感を感じ、少しほっとしていたように見えました。

そして幾つかの検査を経て、「アーレン症候群の可能性がとても高い。」との結果が出ました。

アーレンレンズのフィッティングで疲労困憊に。

アーレン症候群の症状は、その人に合ったアーレンレンズのメガネをかけることで解決出来る場合があります。どのレンズがその人に合うのかは個人差が大きく、フィッティングを通じて最も見やすいカラーのアーレンレンズを選ぶ事になります。

後日、アーレンレンズの色を決めるフィッティングの為、改めて筑波大学の心理発達教育相談室を訪れました。

文章を実際に見ながら、様々なカラーレンズを順に目に当て、自分にとって読みにくさが軽減する色を選んでいきます。

全体からこれぞという1枚を決めたら、次はそれに重ねるとさらに良いと感じる2枚目。そして3枚目・・・とできる限り読みやすくなるまで、繰り返しカラーレンズを重ねていきます。

8歳の頃は1枚のカラーレンズのみを選び、重ねない選択をしましたが、2度目のアーレンレンズフィッティングの際には、なんと13枚ものレンズが重なりました。

娘の場合は、それほどの枚数を重ねてようやく、80%ほど見えやすさが改善した感覚とのことで、先生も100%完全に見えやすい状態にする、というのは現時点では難しい、と仰っていました。

とはいえ、意味を持たないひらがなの羅列を読むテストでは、明らかに読むスピードに違いが見られました。
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一方でこのフィッティングはとてもとても疲れるようです。

目に当てる色によって、見えやすくなったかと思えば、次のレンズでは文字が途端に動き出し頭痛を引き起こすこともあり、1枚1枚レンズを変えるたびに目まぐるしく見え方が急変するからだと思われます。

無理をせずこのくらいでやめておきましょう、と早めに切り上げて下さったのですが、それでも次第に顔が青ざめ、ソファーで少し横になって、ひと眠りしてから帰宅するほどの疲労感に襲われます。

こうやってフィッティングしたカラーの組み合わせのデータを、筑波大学からアメリカへ発注して頂きます。ちなみに、13枚も重ねたレンズの色は1枚のレンズとなり届くのでご安心を。

発注のタイミングにもよるそうですが、娘の場合は数週間ほどでアメリカからレンズが自宅に届きました。

「アーレン症候群」を知っていますか。文字が回ったり歪んだり…娘の検査からアーレンレンズを手にするまでの画像
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実はこの時点ではまだ眼鏡に加工されず、丸いレンズの状態で届きます。

アーレンレンズをメガネに加工できるメガネ店も、現在はまだ日本に数件のみ!

アーレンレンズは日本ではメガネに加工することが難しく、合うフレームも少ないとのことで、アーレンレンズを加工してくれるメガネ店をインターネットで探し、東京都府中市にある「日本メガネ」に伺う事にしました。
プロショップ日本メガネ
http://www.nihonmegane.com/
事前に必ずメールにて来店予約をし、アーレンレンズを持って伺います。

日本メガネの店長さんもお仕事の枠を思い切り越え、とても親身になって対応してくださる方でした。

11歳になって再度訪れた時には、最初に伺った2年半前には無かった子ども用のアーレンレンズ専用メガネフレームも開発され商品化されていました。
「アーレン症候群」を知っていますか。文字が回ったり歪んだり…娘の検査からアーレンレンズを手にするまでの画像
店長さんの許可を頂き、写真を載せています。
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これ以外にも、フレームの一部を緑、青、ピンク、赤などのカラーにしたデザインもあり、とてもスタイリッシュで素敵でした。

「 2年かけて試行錯誤し、メーカーさんと一緒に開発しました」と店長さん。

娘も、これなら!と嬉しそうにメガネのフレームを手にしていました。
次ページ「アーレンレンズのメガネが娘の元に届いた日」

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