共感覚の種類や判断法や原因、トレーニングで共感覚になれるのかまで解説(2ページ目)

共感覚の原因

共感覚の原因

脳は視覚情報や聴覚情報などを、それぞれ別の領域で処理していますが、共感覚の人はこの領域同士の結びつきが強い傾向にあることがわかりました。この結びつきの強さの理由には、複数の仮説が考えられています。

ヒトは様々な情報を脳の別々の領域で処理していますが、最終的には処理した情報を集めなければいけません。たとえば、「りんご」であれば「赤い球体」という視覚情報と「甘くておいしいもの」という味覚情報を合わせて記憶する必要があります。

もし、この情報が統合されていないと、りんごを見たときにも、視覚情報から食べられるのかどうかを判断できず、毎回一口食べてから過去の経験に照らし合わせて食べられると判断することになります。

ヒトの脳は、多様な情報を処理するために各領域でそれぞれの情報を処理するように発達していきます。しかし、各領域の分化が進み過ぎると情報を統合することができなくなるため、領域同士の結びつきをちょうどよくしなければいけません。

共感覚の人は、そうでない人に比べてこの領域同士の結びつきが強いです。共感覚のメカニズムについてはいまだに解明されていないことも多いですが、いくつかの仮説が提唱されています。

結合が多い

1つ目の仮説はそれぞれの領域を結ぶ配線の数が多いために、結びつきが強くなっているという考え方です。

新生児は、脳の領域同士の結びつきが過剰な状態で生まれてきます。多くの人は、過剰な結びつきを減らしますが、共感覚の人は過剰な結びつきを減らしきれていないのではないかと考えられています。

抑制が少ない

2つ目の仮説は、それぞれの領域を結ぶ配線の数に違いはないが、本来かかるはずの抑制がかかっていないために共感覚が起こるという考え方です。

私たちは、脳の領域同士の配線を持ってはいますが、それをオンオフに無意識のうちに切り換えているという考えに基づいています。

可塑性が少ない

3つ目の仮説は、一度ついた結びつきがなかなか元に戻らないという考え方です。可塑性とは、一度変化したものの元に戻りやすさのことです。

脳の領域の結びつきは、同時に活発になったときに強くなります。

そのため「赤色で書かれた2」を見ると、2に対してなんとなく赤のイメージがつきます。しかし、多くの人はその後にさまざまな色のついた2を見たとしても、なにか1つの色に対して強いイメージが残ることはありません。

可塑性が少なく、ある特定の結びつきが残ってしまった結果、共感覚になる可能性があります。

共感覚と自閉症スペクトラム

これまで、共感覚と自閉症スペクトラムを長年研究していた専門家のあいだでは、一般的に共感覚と自閉症スペクトラムには関係がないとされていました。

しかし、ケンブリッジ大学のチームが2013年に、「自閉症スペクトラムのある人は定型発達の人に比べて、共感覚のある割合が高い」と報告しました。

ケンブリッジ大学のチームの見解では、自閉症スペクトラムと共感覚には、「脳の領域同士の結びつきが過剰である」という共通性があるために、自閉症スペクトラムである人の中に、共感覚である人が多いのではないかとしています。

今回の発表チームのメンバーであるSimon Fisher教授は、この発見によって、自閉症スペクトラムと共感覚が発生するメカニズムを探るヒントになると考えています。

自閉症スペクトラムと共感覚がどちらも「脳の領域同士の過剰な結びつき」から生じているとすれば、「自閉症スペクトラムと共感覚を同時に引き起こす遺伝子」や、「脳がどのように結びつきを形成するのか決めている遺伝子」を探すという方向性が提示されたことになるからです。

このように、自閉症スペクトラムと共感覚はそれぞれ遺伝的な側面があると考えられ、現在どの遺伝子が原因なのか研究されています。しかし、未だ遺伝子の特定には至っていません。
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共感覚は後天的に獲得できるのか

共感覚は、親子で互いに共感覚が見られるなど遺伝との関わりがあると考えられています。その一方で、目や髪の色とは異なり先天的な遺伝要因だけですべてが決まるわけではなく、教育や幼少期の環境などの後天的要因とも関わりがあると考えられます。

それでは、いま共感覚でない人が、共感覚を体験したり、共感覚を獲得したりすることはできるのでしょうか。

2014年にトレーニングで共感覚を獲得できるかもしれないことを研究した論文が発表されました。

本論文では、共感覚の体験をしたことがない学生を対象にして訓練を行ったら共感覚になるかどうかを調べています。

結果、訓練を行った学生の多くは、共感覚かどうかを調べるテストにおいてハイスコアであるとともに、日常生活の中で共感覚的な経験をしました。

このことから、論文では共感覚は後天的に身につけられる可能性を示唆しています。これは「共感覚は後天的に身につけられる」と断言できるということではありません。ですが、今後のさらなる研究によって共感覚になるメカニズムや後天的に共感覚を身につけられるのかどうかが解明されるかもしれません。

トレーニング以外に、日本で禁止されているLSDと呼ばれる麻薬を服用することで共感覚が疑似体験できたという報告がされています。他にも、統合失調症などの精神障害者がまれに共感覚のような症状を見せます。

しかし、あくまで本人が五感が混じると話しているだけで、生まれながらの共感覚と後天的に体験した共感覚が同じかどうかは確かめられていません。

まとめ

共感覚の人は物心つくころから、共感覚の世界で生きているため、自分の生きている世界が他の人の世界とは異なることを気づくことが遅れることもあります。

共感覚は歴史的に見ても、なかなか認めてもらえず、目立ちたがり屋の作り話だと思われたり、ドラッグをやっているのだと誤認されたりしてきました。しかし現在、共感覚の存在が科学的に研究されるようになってきました。

脳の理解のアプローチの側面として、共感覚が注目を浴びるようになったのはごく最近のことです。そのため共感覚については、まだまだわかっていないことが多くあります。

今後、自閉症スペクトラムと共感覚との関係性のように、共感覚の研究を通して、発達障害や脳の発達メカニズムなどが明らかになっていくことが期待されます。
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