青年期を迎えた自閉症の息子。生きる力をつけるための“小さなハードル”を

ライター:立石美津子
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障害のある子どもを育てる人の中には「少しでも自分でできることを増やさないと」「将来の自立のために、あれもこれもできるようにさせないと」と考える人もいます。

けれども、越えられない高いハードルばかり与えていると、子どもはやる気も自信も失ってしまうことがあります。では、子どもの力を育む最適なハードルとはどんなものなのでしょう。

”期限切れの定期券”が教えてくれた息子の成長

『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。

息子は中学の頃、特別支援学級がある学校に通うため、一人で電車通学をしていました。3ヶ月分の定期を購入していましたが、ある時、うっかり期限が過ぎていることに気付かず、登校させてしまいました。

息子は帰宅するなり、「お金使った」と言いました。お財布には常に400円ほど入れていたのですが、それを使ったようでした。顔を見ても泣きはらした涙の跡がありませんでしたから、パニックにはならなかったようです。

期限切れの定期で改札を通れば、ピピーッと警報音が鳴ります。聴覚過敏のある息子にとって、聞きなれない音は恐ろしかったでしょう。さらに、駅員に注意されもしたでしょう。それでも、落ち着いてお財布からお金を出せたのだと思います。

これは「自閉症である息子にとってはかなりの成長だ」と感じました。

過保護から卒業しよう、と決めた

私は「息子がパニックを起こす状況を避けよう避けようとしていた幼児期、小学校時代はもう終わったのだ」、「細やかな配慮をし“この世は安全なんだ”という安心感を持たせることは今までずっと続けてきたのだから、心は安定しているはず」と思うようになりました。

そして、「これからは、予測しない事態を乗り越える経験をさせる年齢に差し掛かっているんだ。」と気づき、「過保護、過干渉の代表である“危険物がないか子どもの頭上を旋回するヘリコプターペアレント”、“障害物を取り除く除雪車のようなスノウプラウペアレント”にならないように気を付けよう」と決めました。

スーパーの中にもある、様々なハードル

「息子はこれから、どんな力を身に付ける必要があるんだろう?」そう考えたとき、日常生活の中で欠かすのとのできない、スーパーマーケットでの買い物が思い浮かびました。 

買い物の場面でも、乗り越えなくてはならない様々なハードルがあります。そこで、思いつくものをまず書き出してみました。

① 店までの道のり、信号機が緑になったら渡る
② 消費期限や賞味期限を見て商品を選ぶ
③ ②の中でも、より新しい商品選ぶ
④ レジ前の列に並ぶ
⑤ お店の人と会話する
⑥ 財布からお金を出す
⑦ お釣りをもらう
⑧ 袋に詰める

この8点の中で、できていること、できていないことに分けてみました。

○ 信号機が緑になったら横断歩道を渡る
× 消費期限、賞味期限を見て商品を選ぶ
× より新しい商品を選ぶ
○ レジ前の列に並ぶ
× お店の人と会話する
△ 財布からお金を出す
△ お釣りをもらう
○ 袋に詰める

×はなかなかできそうもないので後回しです。今の息子の能力では超えられない高すぎるハードルだからです。△を〇にするのがまずクリアすべき課題です。
次ページ「チャレンジさせたい”小さなハードル”をあえて作る」

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