自分への問いかけかわからない!?クラスの会話すべてに首を突っ込む原因は聴覚の過敏性にあった!

ライター:林真紀
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発達障害児が悩まされることの多い「聴覚過敏」。大きな音や怒鳴り声などにパニックになってしまうことはよく知られています。そして息子の場合は、聴覚過敏が人間関係に大きな影響を与えてしまうという困難さを持っています。

「聴覚過敏」のもうひとつのカタチ

発達障害のある子どもの特性の一つに、感覚の過敏性があります。その中でも、触覚や聴覚に過敏性がある子がいるということは、かなり知られるようになってきました。

我が家の7歳児(自閉症スペクトラム障害・ADHDの診断済)も聴覚に過敏性があり、予告なく出される大きな音や人の怒鳴り声などでパニックになってしまいます。この点については、学校側も随分配慮してくださっています。今は、運動会のピストルの音を小さくしたり、大きな声で怒鳴らず耳元で穏やかに話をするなどの工夫をして頂いています。

けれども息子と小学校の話をしているうちに私は知ったのです。聴覚過敏のもたらす困難の、もう一つのカタチ。聴覚過敏を和らげるアイテムであるイヤーマフなどが役にたたない、もう一つの困難があることを。

そしてその困難は息子にとって、予期せぬ大音量よりも辛いものだったのです。

聴覚過敏とコミュニケーション

学校の休み時間。給食の時間。登下校の時間。子どもたちの楽しいお喋りの声があちこちから聞こえてきます。女の子たちは秘密のひそひそ話。男の子たちはアニメやゲームの話。

そしてそれは、息子にとって苦難の時間の訪れです。

教室のみんなが一斉にお喋りに興じ始めると、息子はありとあらゆる会話に首を突っ込みます。時には女の子たちの秘密のひそひそ話にも遠慮なく乗り込んで行ってしまうのです。

「え!?君は〇〇ちゃんが嫌いなの!!?なんで!?」

息子はこんなデリカシーのないことを、大声で言ってしまいます。当然、言われた女の子たちは激怒です。

「あなたに話しかけてない!!」「こっちで話してたのに、入ってこないで!!」

別のグループの男の子たちも息子に怒鳴りつけます。

「おまえに話しかけてない!!」「向こう行け!!!」

息子はそのたびに落ち込んで、家に帰ると堰を切ったように泣きます。それでも翌日からは同じことを繰り返してしまうようです。聞こえる会話全てに首を突っ込み、クラスメイトに怒鳴られて帰ってくるのです。

私はこの息子の行動は、ADHDの「衝動性」が関係しているのだと思っていたので、どうしたら衝動性を少しでも抑えることができるのか、必死に考えていました。

けれども、息子の話をよくよく聞いているうちに、これは衝動性の他にも別の要因が引き起こしていることだということが分かったのです。

「聴覚過敏」の引き起こしていたもの

「また友達にうるさい!って言われた…」と言いながら帰ってくる息子に、私は「自分に話しかけてくる会話以外には入っちゃいけないよ」と言いました。すると、息子からは意外な一言が飛び出しました。

「お友達の会話が、全部僕に話しかけてくるように聞こえる…」「声の大きさも全部、同じに聞こえるよ」

そして息子はこう続けます。

みんなは、自分にだけ話しかけてくる声がどうして聞き分けられるの?

私は「なるほど…」と頷きました。息子は衝動的に人の話に首を突っ込んでいたわけではなく、自分にだけ語りかけてくる声、とりわけその音量を判別する力が弱かったのです。

人には「カクテルパーティ効果」と呼ばれるような必要な情報だけを無意識に選択する能力が備わっていると言います。けれども、聴覚過敏がある子どもは、その過敏性がゆえに、音からの情報を取捨選択する力が弱いのかもしれないと思い至ったのです。

息子がみんなの会話に首を突っ込んでしまうのは、まさにこの聴覚過敏が引き起こしていたものかもしれません。
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