障害児は「入会お断り」。傷つく言い方、納得できた伝え方…その差とは?

ライター:立石美津子
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「思いやりの心を持ちましょう」「相手の立場に立ちましょう」。学校でもよく使われる言葉です。もしかしたら、障害のある子を持つ以前は、私自身もこの言葉を深く考えずに使っていたかもしれません。

今、私は「本当に心のこもった言葉を使いたい」と考えています。その理由は自閉症の息子が幼かった頃にかけられた、ある心ない言葉にあります。

『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子です。

障害のある子を育てる人は、周りからかけられる言葉に、傷ついたことがあるのではないでしょうか?

私は、自閉症の息子を育てる中で、言葉の裏にある相手の気持ちに敏感になりました。ビジネスライクな冷たさ、拒絶を感じることもあれば、思いやりに裏打ちされた言葉に感謝することもありました。

そんな中、たとえ丁寧な言葉遣いであっても、「真剣に言われた側の気持ちになって考える」ことが欠落していたら、相手を深く傷つけてしまうことがあります。

人はかけられる言葉ひとつで、救われたり、傷ついたりします。大切なのは、相手に寄り添う心です。「未来を担っていく子どもたちには、単にきれいな言葉遣いを学ぶのではなく、心のこもった言葉を話せる大人に育ってほしい」と思います。
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励ましの言葉は時に相手を傷つける。障害児の母として伝えたいこと

「入会お断り」、同じ内容でも”言い方”次第で天地の差

自閉症の息子が小学校1年生の頃の話です。

喘息の息子に体力をつけさせたかったので、水泳教室の体験授業に連れて行きました。プールサイドでじっとしていられない多動な子どもでしたので、結局、どの水泳教室にも受け入れてもらえませんでした。

スイミングスクールを運営している側に立てば、コーチの人数にも限りがある中で大勢の生徒さんを預かるわけですから、手のかかる子どもに入会許可を出すことはできません。

ですから、結局は「入会お断り」されたのですが、「そうだよね」と納得できる言い方から、「そこまで言われなきゃいけないのか」という言い方まで、さまざまな言葉を言われたのです。

心をえぐり取られた、「お断わり」の言葉

以下は、私が傷ついた断り文句です。

① A水泳教室
「せっかくお越し下さったのに申し訳ございません。障害のあるお子さんは対象外ですから、入会をお受けすることは出来かねます」

② B水泳スクール
「他のお子さんに迷惑がかかってしまいます。誠に申し訳ございませんがお引き取りください」

①②はとても丁寧な言い方です。でも、私は「結局、うちの子はみんなと一緒にできる子ではないから、来てもらっては困るということでしょ」と思いました。

でも、一番、心をえぐり取られたきつい言葉は…

③ Cスイミングスクール
「お母さま、あなた、一体何を考えているんですか。こんな程度の低い子、うちで水泳習える訳ないでしょ。入会はお断りします!」

ここは、大きな大会に選手を輩出することでも有名な教室でした。そんな場所に足を運んでしまった自分もいけなかったのですが、こんな風に言われたのです。

このスイミングスクールの体験を受ける前、何とか入会許可が下りるように、息子に「コーチの言うことを聞いてじっとしているのよ。動いたり走ったり暴れては絶対にダメよ」と何度も言い聞かせました。

保護者観覧席から見学していると、その言葉をきちんと守り、普段は落ち着きのない息子が、それなりに頑張っていました。でも、他の子どもたちのようには、じっと待っていることができず、順番待ちの間にモゾモゾ、ゴゾゴソし身体を動かし始めました。

すると突然、コーチが息子の腕をわしづかみにして、私のいる保護者席まで連れてきたのです。

「ああ、もうだめだ」と悟りました。息子は自分の身に何が起こったのか状況がわからない様子で、急に水から上げられ、外に出されキョトンとしていました。

その息子と私を前に、コーチは言ったのです。

「お母さま、あなた、一体何を考えているんですか。こんな程度の低い子、うちで水泳習える訳ないでしょ。入会はお断りします!」

私は濡れたままの息子の体をバスタオルで拭きながら、「よく頑張っていたね。偉かったね。もう帰ろう。帰りにお菓子買ってお家で食べようね」と言うのがやっとでした。

「他の子は体験授業に行けば『入会しませんか?』」と声をかけられるのに、私たち親子はこんな風に言われてしまうんだ」と思うと、悲しく、情けなくなりました。

17年間の子育てで、バスの中で見知らぬおじさんに「しつけがなっちゃない!」と罵倒されることなどしょっちゅうありました。でも、今までで一番つらかったのは、このプールでかけられた言葉でした。

伝え方次第で納得できることもある。それを教えてくれた水泳教室の言葉

それでも、泳ぎを習わせたかったので、ある水泳教室の体験授業に行きました。
そして、この教室では、このように言われました。

「お子さんは障害をお持ちなんですね。それではプールサイドでじっと座っていることは難しいかもしれませんね。

こちらのスクールでは障害のある方を指導できる専門のコーチがおらず、スタッフの数も限られています。また、水泳は一つ間違えば命に関わるスポーツです。生徒10人対コーチ1人なので、立石さんのお子さんに何かあったり、溺れたりしたら大変です。

お子さんのために入会をお受けしたいのは山々なのですが、誠に残念なのですが、現状ではご希望をお受けすることができないのです」


断わり文句には変わりないのですが、「プール側に迷惑がかかる」という企業サイドの理屈ではなく、保護者の気持ちに配慮して「お子さんの安全のためにも、この教室に入会しない方が賢明だ」と伝えてくれ、納得することができました。
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