”大人の都合に合わない子ども”を否定するのはやめよう

かくいう私にも、20年間学習塾を経営してきた経験があります。通ってくる生徒は主に健常児でしたが、発達障害がある子どもや落ち着いて勉強ができない子どもなど、さまざまな生徒が入会を希望してきました。

学習塾は、生徒10人対先生1人の定員でした。いただく授業料は決まっていますから、手のかかる子を受け入れたからといって、先生の数を増やすことは経営上できませんでした。そんな理由で、走り回ったり、大声を発して周りの子どもの学習に影響を与えてしまう子どもの入会をお断りすることがあったのは事実です。

そんなとき私は決して「他のお子さんにご迷惑をかけることになるので、入会をお断りいたします」とは言えませんでした。スイミングスクールでの苦い経験があるからです。

「この塾は、集団授業の形態をとっています。マンツーマンでお子さんに合わせた指導することができません。お子さんは今、一時間集中して、椅子に座って学習できる段階ではないように感じます。教室に来たら椅子に座らなければいけず、お子さん自身が辛い思いをすることになります。もう少し、時期をずらしてから、入塾をご検討されてはいかがでしょうか」

断っていることには変わりないのですが、「あなたのお子さんはダメな迷惑をかける存在」とは決して言っていません。子どもや保護者の心によりそい、「まだこの形態は早すぎるかもしれない、もっと子どもに合った方法があるのではないか」と、別の方法を考えたり、伝えたりするよう心がけていました。

仮にも教師なら、子どもの存在を全面否定してはなりません。子どもに合った環境を準備できない大人側の都合を押し付けてはいけないのです。

きれいでも、“心がこもっていない言葉”はいらない

Cスイミングスクールの前を通るたびに、今でも何とも言えない感情が湧き起こります。当時よりも少しは強くなりましたが、この文章を書いているだけで、あの言葉を言われた場面がフラッシュバックし、心が締めつけられます。

他人との関係、夫婦、親子とも人間関係を作っていく上でなにより大切にすべきなのは、「自分だったらどう言われたら、納得できるか」という視点を持つことなのだと、シミジミ思います。そのことに気づかせてくれたという点では、Cスイミングスクールには感謝しなくてはならないのかもしれませんね。

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