ノーマライゼーションとは?ノーマライゼーションの歴史や時代背景、身近な例を紹介します!

2017/04/19 更新
ノーマライゼーションとは?ノーマライゼーションの歴史や時代背景、身近な例を紹介します!のタイトル画像

ノーマライゼーションは、どの人にとっても「当たり前のことを当たり前に」を実現するために、社会の環境側を整備していこうという考えです。この記事では、社会福祉の基本原理であるノーマライゼーションの解説、理念が生みだされた歴史的背景などについて詳しくお伝えします。他にも、ノーマライゼーションが生まれた経緯やユニバーサルデザインなどの身近な例を紹介します。

発達障害のキホン
116495 View
目次 ノーマライゼーションとは ノーマライゼーションのよくある誤解 社会福祉の基本原理 ノーマライゼーションの歴史 ノーマライゼーションの基本原理 インクルーシブ教育って? ノーマライゼーションの教育分野での取り組み ノーマライゼーションに基づく就労への取り組み 身近なノーマライゼーション 商品などのユニバーサルデザインって? まとめ

ノーマライゼーションとは

ノーマライゼーションは、どの人にとっても「当たり前のことを当たり前に」を実現するために、社会の環境を整備していこうという考えです。

そもそも、当たり前とはどういうことでしょうか。
・基本的な人権が保障されている。
・自分のできる範囲で、身のまわりのことをする。
・自らの意志にもとづいて行動する。
・個人としてアイデンティティを確立する。
・一生を通じて一人の人間として成長する。


「当たり前のことを当たり前に」というのは、これらのことを誰もが自然にできるようにということです。

ノーマライゼーションの考えでは、障害があるかどうかや、その障害が軽度か重度かに関係なく、誰もが同じように上記のような権利や生活環境を享受できる社会が当然の姿だと考えられています。

例えば、学校の入口に階段しかない場合、車椅子の子どもはほかの子が当たり前にしている通学ができません。でも、スロープがあれば車椅子で学校に入ることが当たり前にできます。

ノーマライゼーションは、障害のない人が障害のある人を特別視するのではなく、障害のある人でも普通の生活を送れる環境を整えて、共に協力しながら生活していくことを目指しています。

ノーマライゼーションのよくある誤解

ノーマライゼーションは、シンプルで誰にとっても理解しやすい考えですが、誤解を招きやすい考えでもあります。よくある誤解を解き、ノーマライゼーションを正しく理解しましょう。

◇「ノーマライゼーションとは人間を“正常”にすること」ではない
ノーマライゼーションは、障害のある人の行動をなかば強制的に障害のない人に合わせるということではありません。ノーマライゼーションとは、障害のある人が社会で生活している多くの人と同様に多様性と選択性のある生活を送るためのものです。ノーマライゼーションでは、その社会の実現のために必要な支援は社会側がすべきだと考えられています。

◇「ノーマライゼーションは特別な支援をなくすこと」ではない
ノーマライゼーションは、障害のある人が支援を受けずに生活できるようにするということではありません。例えば、目が悪くてもメガネやコンタクトなどの補助器具があるおかげで不自由なく生活できます。ノーマライゼーションは、障害のある人が不自由なく生活できる助けになる支援・サービスを推奨している考えです。

◇「ノーマライゼーションは軽度な障害にのみ適用される考え」ではない
ノーマライゼーションの考えは、重度の障害を抱える人にも適用されます。ノーマライゼーションの原理は、重複障害者が当たり前のことをするためにはたくさんの支援が必要になると指摘しています。

◇「ノーマライゼーションは完璧を目指すもの」ではない
ノーマライゼーションは、誰もが完璧に自立した生活を送れる社会を目指す考えではありません。一人ひとりの、障害や能力などに応じて最適な支援や環境を整えることを目指す考えです。

社会福祉の基本原理 ノーマライゼーションの歴史

デンマークにおけるノーマライゼーションの誕生

ノーマライゼーションはデンマークで生まれました。ノーマライゼーションの誕生に偉大な功績を残した人物が、バンク・ミケルセンです。彼はデンマーク社会省で働きながら、1951年に結成された知的障害児親の会に共感します。

知的障害児親の会は以下の3つのことをスローガンとして掲げていました。
・1500人収容する大型施設を20~30人の小規模な施設にすること
・社会から分離されていた施設を親や保護者の生活する地域に作ること
・ほかの子どもと同じように教育を受ける機会を作ること


ミケルセンは、親たちの願いを象徴的に表現する言葉として「ノーマライゼーション」を採用しました。

ミケルセンの活躍もあり、1959年に世界で初めて「ノーマライゼーション」という言葉が用いられた「知的障害者福祉法」がデンマークで制定されました。

世界へのノーマライゼーションの広がり

ノーマライゼーションは今日では、世界的に社会福祉の基本原理として広がっています。これに大きく貢献したのは、スウェーデンのベンクト・ニィリエです。

彼が、普通の生活を測るものさしとしてノーマライゼーションの基本原理を明らかにし、英文にしたことで各国に広がりました。

また、1981年の「国際障害者年」の制定もノーマライゼーションの理念が広がる大きなきっかけになりました。「国際障害者年」の制定は、国連が障害のある人々の問題を世界的な規模で取り上げ、啓蒙を行う世界最初の出来事でした。

日本でのノーマライゼーションの広がり

日本でノーマライゼーションが理解されはじめたのは1970年代ですが、「国際障害者年」の制定をきっかけに広く知られるようになりました。

「国際障害者年」の制定は日本の社会福祉政策を後押しし、「障害者のすみよいまちづくり推進事業」や「障害者プラン ノーマライゼーション7か年戦略」が発表されました。

「ノーマライゼーション7か年戦略」には、7つのガイドラインが盛り込まれましたが、その一つにバリアフリーの推進がありました。バリアフリーとは、障害のある人の社会参加や、自分らしく生活するときに妨げになる障壁をなくすことです。

例えば、多くの駅でエレベーターやエスカレーターの設置が行われていることもバリアフリーの一つだということができます。

バリアフリーの推進は障害のある人がノーマルな生活を送るために重要なことであり、2006年に制定された「バリアフリー新法」など現在でも継続的に行われています。

ノーマライゼーションの基本原理

ニィリエが提唱した、ノーマライゼーションの8つの基本原理を紹介します。ニィリエが基本原理を提唱した当時は、知的障害者は大型施設で生活し、社会から分離されることが当たり前とされる時代でした。

そのため、ニィリエの提唱した基本原理には、大型施設に対して批判的な側面がありますが、ノーマライゼーションの基本原理は現在にも通じる点が多くあります。

1. ノーマルな一日のリズムを送る
1つ目の基本原理は、障害のある人でも、ない人と同じような一日の生活のリズムが送れるような環境をつくりだすべきという考えです。これは、例えば障害のある人も毎朝ベットから出て着替え、朝食を食べるのが好ましいということです。

障害があるという理由で自分の意志に逆らって、不必要に家族よりはやく就寝したり、外出したりしないという社会ではなく、誰もが各々のリズムで生活できる社会を目指すのがノーマライゼーションの考え方です。

2. ノーマルな一週間のリズムを送る
多くの人は、平日は自宅や職場、学校など複数の場所で活動しています。週末は、さらに他の場所で余暇活動をすることも珍しくありません。施設で生活している人は、平日週末を問わず施設が活動場所の中心になっています。

2つ目の基本原理は、障害があり施設に入所している人でも、地域社会におけるいくつかの異なるグループに所属し、日々の生活に刺激があることが自然という考え方です。

3. ノーマルな一年のリズムを送る
ノーマルな一年には、季節の変化や、こどもの日やひなまつりなどの伝統行事、誕生日などさまざまなイベントがあります。

3つ目の原理で大切なことは、障害があるかどうかでこれらのイベントに参加できるかどうかが決まってはいけないということです。これは、障害のある人が地域社会に関わっていく面でも大切な考え方です。

4. 個人のライフサイクルを通してのノーマルな発達的経験をする機会を持つ
誰しも、生まれてから幼児期、学童期、成人期、高齢期のライフサイクルを順に経験していきますが、障害のある人のライフサイクルは多くの人のライフサイクルとは異なっている場合があります。

例えば、家族と一緒にいられる時間が極端に短い幼児期を過ごす子どももいます。

そうではなくて、誰もが同じようなライフサイクルを経験できるようにしようというのが、4つ目の原理です。

5. 障害者の選択や願い、要望ができる限り考慮され尊重される
5つ目の原理は、本人自身の選択や希望はできる限り、尊重されるべきという考え方です。

そのためには、考えていることや意見をうまく言葉で伝えることが困難な人に対しても、注意深く耳を傾け、その人の意志や要望を聞く必要があります。

6. 男女が共に住む世界での生活を送る
社会では、男性と女性が協力して生活しています。しかし、それらしい理由がないにも関わらず、男女が離れて生活している施設も少なくありません。6つ目の基本原理は、男女を不必要に分離するのではなく、協力しあえる環境を作るべきという考えです。

7. ノーマルな経済水準を得る
7つ目の基本原理は、障害のある人も、社会に参加して、基本的な経済活動を行えるようにするべきという考え方です。そのためには、児童手当や早期年金、住宅手当、年金、最低賃金などの経済支援が必要になることもあります。

8. 設備が、障害のない人を対象とする施設と同じレベルのものである
障害者を対象とする施設と一般市民を対象とする施設の設備のレベルが異なっていることがあります。

例えば、一人あたりの居住空間を考えてみても、一般的な家のほうが、入居施設よりもプライベートな空間は広い傾向があります。

このように、理由もなく障害の有無によって施設の環境にギャップがあるのは好ましくありません。障害者向けの施設をより一般的な施設に近づけていくべきであるというのが8つ目の基本原理です。

ノーマライゼーションの8つの基本原理は、一見それぞれ言っていることがばらばらのようにも感じられますが、どれも障害のある人とない人の日常生活におけるギャップを埋めていこうという側面があります。

インクルーシブ教育って? ノーマライゼーションの教育分野での取り組み

当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
あわせて読みたい関連記事

あわせて読みたい関連記事

発達障害のキホンを知る

発達障害のキホンを知る

この記事を書いた人

発達障害のキホン さんが書いた記事

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?原因、症状、治療、PTSDに似た発達障害の症状まで解説のタイトル画像

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?原因、症状、治療、PTSDに似た発達障害の症状まで解説

PTSDは、つらいできごとがトラウマとなり、さまざまな症状を発症する疾患です。発症すると、そのできごとに関わる人・場所を過度に避けたり、考...
発達障害のこと
255771 view
2018/12/09 更新
子どもの癇癪(かんしゃく)とは?原因、発達障害との関連、癇癪を起こす前の対策と対処法、相談先まとめのタイトル画像

子どもの癇癪(かんしゃく)とは?原因、発達障害との関連、癇癪を起こす前の対策と対処法、相談先まとめ

大声で泣き叫んだり、暴れたりする子どもに困っている…。一旦気持ちが爆発するとなかなか収まらない癇癪ですが、子どもが癇癪を起こす背景には必ず...
発達障害のこと
662361 view
2018/12/07 更新
難病の軽症高額該当で、医療費助成の対象外でも支援が受けられる?制度該当条件などを詳しく解説します!のタイトル画像

難病の軽症高額該当で、医療費助成の対象外でも支援が受けられる?制度該当条件などを詳しく解説します!

難病法には重症度基準が設けられ、病状の程度が一定以上の人は、医療費助成の対象となります。しかし、指定難病の診断を受けていても、治療により症...
身のまわりのこと
4431 view
2018/12/04 更新
放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。