女の子の発達障害特有の思春期の問題

「ママ、20歳になったら胸を取る手術していい?」第二次性徴を迎えたアスペルガーの娘の言葉に母は、の画像
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そんな娘の気持ちを受け止められるのは、私自身も近しい気持ちを抱いていたからだと思います。

私もアスペルガー症候群の診断を受けており、40歳を過ぎても化粧はしないし、「口紅だけは塗らなきゃ怒られる」と思ってもすぐ忘れる、つい足を開いて座ってしまうという有様で必要最低限のマナーも身についていません。

言葉遣いについても、外向きには穏やかに話すことができますが、身内(弟や子ども)には「よう、元気か?」といったような男言葉が口から飛び出る始末。自分の娘にはできるだけ気を付けたつもりですが、普通のお母さんよりは男性的な接し方で育ててきたような気がします。

思い返せば私が幼いときも、両親はやいのやいの言葉遣いを注意してきましたが、私はかえって反発するばかり。「大人になってからごまかせるようになったらいいじゃない」と思って右から左へと聞き流していました。

いまだに「女性の常識」というものは分かりませんが、分かりたくもないという気持ちも理解することができます。そんな自分を「これが私だ」と開き直る一方、「私って大人としていまだに成熟していないってことなのかな」と自信がなかったのも事実です。

そんな中、発達障害と女性をテーマにした書籍で私の心を代弁するような記述と出会うことがありました。
「女性らしさ」は形のないもの。誰にとっても、わかりにくいものかもしれません。しかし多くの女性は、大人になるにつれ、必要最低限の習慣やマナーは身につけていきます。
アスペルガー症候群の女性の場合、そういった習慣やマナーの習得にも悩みます。「足を開かずに座る」というような、多くの人が常識として覚えることが、なかなかできないのです。
 そもそも女性らしさに価値を感じていないため、家族や友達が多少、注意したくらいでは、改善しません。明確に、具体的に教えられなければ、わからないのです。

(『女性のアスペルガー症候群』 宮尾益知監修 講談社 P19より)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/406259790X/
この一文を読んで、それが女性のアスペルガー症候群の特徴の一つだと知り女性の"常識"が身につきにくいのには訳があるのだと知って正直ホッとしたのです。

もうひとつ、「女性らしくなりたくない」という気持ちのもとになったのは、ジェンダー的役割に対する不快感でした。どうして望んでもいないのに女性らしくしなければならないのか。

日本の文化は女性に求めるものがたくさんあります。男女平等の思想は少しずつ浸透しているとはいえ、どこかに透けて見える「女は男を立てて家を守りかわいくあれ」という教育は、私にとってとても不快なものでした。

「好きなものは好き、嫌いなものは嫌い」という気持ちが人一倍強く頑固だった私は、そうした気持ちを飲み込むことは絶対にしないとと誓ったのです。たまたま生まれついた性別だけで生き方を決められるなんてやってられない。これは今も私の核になっています。

そんな私の気持ちを説明するような一節にも出会いました。
女性として期待される役割について、私は思春期から悩んでいます。思春期になると、小さいときから仲が良かった女の子の友だちは、いっせいに、本などよりも自分の外見に注意を払い出し、男の子には私に対するよりも優しくふるまうようになりました。あの頃から、ジェンダーの役割には不快感を覚えてきました。
(中略)
自閉症スペクトラムの人たちの多くは、ASの症状も男女で分けて考える必要はないと考えるのではないでしょうか。ほとんどの場合、本質的に、私たちAS者は、身振りなどの癖や行動において、両性具有的だからです。

(『アスパーガール』 ルディ・シモン著 スペクトラム出版社 P83より)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/490208211X/
気持ちがぴったり一致したのは、「ジェンダーの役割には不快感を覚えてきました」の部分です。今の自分は男性的な面もあれば女性的な面もあって、「あなたのジェンダーは何ですか?」ともし問われても答えようがなく、まさに「両性具有的」というのがぴったりくる表現だと強く感じました。

違う国、違う文化に住む人が同じ思いを抱いている。そのことは「アスパーガール」の一人としてとても心強い気持ちになりました。

だからこそ、娘の「性」の違和感や、ジェンダー感にはしっかりと向き合っていきたいと思うし、どんな選択をしてもそれを尊重して受け入れる強い意志を持つことができたのです。

あれから5年。中3になった娘が思うこと

娘の第二次性徴期が始まって5年。この機会に娘に直接質問をしてみました。

「今でも胸を締め付けるブラジャー欲しい?」

「スポーツブラでも目立たないから別にいいかな」

「胸を取る手術はどう?」

「今くらいで止まってくれたらそのままでもいいかも。でももっと大きくなって『イーッ』となったらやっぱり手術するかもしれない。」

「男性器は欲しい?」

「う~ん、一人暮らしとかしてるとふっと欲しくなったりするかも」(これはちょっと突っ込めませんでした…。)

普段の娘の服装は、通年スポーティなTシャツと半ズボン、わらじのようなサンダルです。冬はそこにフリースの上着とダウンジャケットを着ますが、帰るなり脱ぎ捨てています。

小学校2年生から不登校で家にいるので恋愛してる様子もありませんし、アイドルにも興味はありません。子どものころと変わらず戦隊ものやヒーローもの、あとかわいい女の子が出てくるゲームも好きみたい。男性主人公のゲームも好きですし、趣味は男性寄りみたいだけど、何が好きのポイントなのかはどわからないなぁというところです。

なんだか性別を超越してるようなところがありますね。

今、娘は「別に今は何も悩んでいない」と言いますし、特に相談などは考えていませんが、もしこの先深く悩んだり落ち込むことがあれば迷わず専門のクリニックに相談に行こうと考えています。

フィットしない性別に悩み苦しむより、専門家の助けを得て一番自分の望む形を見つけて幸せに生きていてほしいから。そして望まない性別でパートナーを得られず一人で生きていくより、どのような形であれ心預け合えるような人に出会って一緒に生きていってほしいから。

娘の本当の気持ちや将来のことは分かりませんが、自分らしく幸せに生きてくれたらいいなと思います。
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