お薬を飲み忘れないためには? 気になる服薬管理のコツをご紹介【医師監修】
ライター:発達障害のキホン
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「うっかり薬を飲ませるのを忘れてしまった…どう対処すればいいの?」「薬の管理が苦手…」など、薬物治療を始めてから生まれる疑問もあると思います。この記事では、飲み忘れにまつわる疑問の対処法と、服薬管理のコツをお伝えします。
監修: 岡田俊
奈良県立医科大学精神医学講座教授
博士(医学)
特別支援学校学校医
知的障害者施設非常勤医師
自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、トゥレット症などの発達障害(神経発達症)および、その併存症に対する医療、その他の多角的支援にかかわっている。
博士(医学)
特別支援学校学校医
知的障害者施設非常勤医師
飲み忘れ対策や薬の管理…どうしていますか?
子どもに毎日決まった時間に薬を飲ませることは、なかなか難しいですよね。注意欠如・多動症(ADHD)がありメチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)を服用中の子どもに朝、薬を飲ませる場面を考えてみましょう。
なかなか起きてくれない、やっとのことで起こしたとしても、ぼーっとしていて、準備に取りかかれない。やっとのことで家から送り出した。ほっとして、テーブルの上を片付け始めると、そのままになった薬があって、「あっ、また、忘れている」と気づく。このような場面に心あたりがある人、多いのではないでしょうか?
保護者の方々はいろいろな工夫をしています。例えば、朝ご飯のお箸のところにおく、それでも忘れるので、学校に行くときに携帯する水筒にくっつけてみるなど、お子さんにあった方法を試行錯誤されていると思います。けれでも子どもたちはどうしても「あとで」ということで、脇によけたり、ポケットに入れたりして結局飲み忘れてしまうことも往々にしてあるでしょう。思えば、こういったことを忘れがちな子だからこそ、この薬剤を服用しているわけです。
次の診察日に親御さんが報告しました。
「このまえ30日分処方してもらったのですが、飲み忘れることが多く、10日分残ってます。服用しなかった日は、やはり学校でも気がそれやすかったみたいで、この子自身もきちんと飲みたい、と言うのですが。飲み忘れた日に家に帰ってから飲ませることは可能でしょうか?」と。
同様の疑問を持つ読者の方は多くいらっしゃると思います。ここからは、そういった疑問にお答えします。
なかなか起きてくれない、やっとのことで起こしたとしても、ぼーっとしていて、準備に取りかかれない。やっとのことで家から送り出した。ほっとして、テーブルの上を片付け始めると、そのままになった薬があって、「あっ、また、忘れている」と気づく。このような場面に心あたりがある人、多いのではないでしょうか?
保護者の方々はいろいろな工夫をしています。例えば、朝ご飯のお箸のところにおく、それでも忘れるので、学校に行くときに携帯する水筒にくっつけてみるなど、お子さんにあった方法を試行錯誤されていると思います。けれでも子どもたちはどうしても「あとで」ということで、脇によけたり、ポケットに入れたりして結局飲み忘れてしまうことも往々にしてあるでしょう。思えば、こういったことを忘れがちな子だからこそ、この薬剤を服用しているわけです。
次の診察日に親御さんが報告しました。
「このまえ30日分処方してもらったのですが、飲み忘れることが多く、10日分残ってます。服用しなかった日は、やはり学校でも気がそれやすかったみたいで、この子自身もきちんと飲みたい、と言うのですが。飲み忘れた日に家に帰ってから飲ませることは可能でしょうか?」と。
同様の疑問を持つ読者の方は多くいらっしゃると思います。ここからは、そういった疑問にお答えします。
薬を飲み忘れたときの対応は薬剤によって異なる
この親御さんのケースでは、メチルフェニデート徐放錠の場合、1日1回服用しますが、薬の作用は毎日切れている状態です。また、親御さんの提案のように、帰宅後に服用すると、その効果が夜遅くまで持続してしまい、寝付けないなどの悪影響が出ると予測されます。これらの理由から、朝に服用できなかった場合、次の日からまた1日1回、服用したほうがよいでしょう。
朝と夕の2回に分けてアトモキセチン(ストラテラ®)を服用している子どもの場合であれば、服用を忘れた朝の薬を夕の薬とまとめて服用することは問題がないと思われます。1日1回、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)を朝に服用している場合であれば、その日は夕方に服用したとしても(翌日の朝の薬とは近くなりますが)問題はないと思われます。
問題になるのは、抗うつ薬の場合です。数日にわたり服薬を忘れた場合には、めまい、筋力低下、吐き気、頭痛、抑うつ、不安、不眠、集中力低下、インフルエンザ様の症状、知覚異常などの中止後発現症状(断薬や服用量の減量に続いて生じてくる一連の症状)が出現することがあります。これらの症状は、服薬を再開すると速やかに消えるのですが、中止後発現症状についての知識がないと、体の不調ではないかと思ってしまうことがあります。
服薬忘れとは異なりますが、このような中断がよくおこるのは以下の2つのパターンです。
ひとつめは、受診予定日に都合が悪くなり1週間後に予約を変更したが、薬がなくなったので1週間服薬しなかった、というケースです。
もう一つは、風邪を引いて風邪薬を服用することにしたが、飲み合わせが心配だったので抗うつ薬の服用を中止したというケースです。後者のケースでは、もともと風邪を引いているので、中止後発現症状が出ても風邪による不調と思ってしまうかもしれません。
何日か連続で服薬を忘れた場合には、服用量にもよりますが、投与を開始したときと同様に少しずつ量を増やしていく方がよいこともあります。医師と相談の上、服薬を計画的に再開する方がよいでしょう。
薬が処方されたタイミングで、以下の事項を医師・薬剤師それぞれに確認しておくと安心でしょう。
・薬を飲み忘れてしまった場合の対処法
・服薬がどのくらい空いてしまったら、医師・薬剤師に相談すべきなのか
朝と夕の2回に分けてアトモキセチン(ストラテラ®)を服用している子どもの場合であれば、服用を忘れた朝の薬を夕の薬とまとめて服用することは問題がないと思われます。1日1回、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)を朝に服用している場合であれば、その日は夕方に服用したとしても(翌日の朝の薬とは近くなりますが)問題はないと思われます。
問題になるのは、抗うつ薬の場合です。数日にわたり服薬を忘れた場合には、めまい、筋力低下、吐き気、頭痛、抑うつ、不安、不眠、集中力低下、インフルエンザ様の症状、知覚異常などの中止後発現症状(断薬や服用量の減量に続いて生じてくる一連の症状)が出現することがあります。これらの症状は、服薬を再開すると速やかに消えるのですが、中止後発現症状についての知識がないと、体の不調ではないかと思ってしまうことがあります。
服薬忘れとは異なりますが、このような中断がよくおこるのは以下の2つのパターンです。
ひとつめは、受診予定日に都合が悪くなり1週間後に予約を変更したが、薬がなくなったので1週間服薬しなかった、というケースです。
もう一つは、風邪を引いて風邪薬を服用することにしたが、飲み合わせが心配だったので抗うつ薬の服用を中止したというケースです。後者のケースでは、もともと風邪を引いているので、中止後発現症状が出ても風邪による不調と思ってしまうかもしれません。
何日か連続で服薬を忘れた場合には、服用量にもよりますが、投与を開始したときと同様に少しずつ量を増やしていく方がよいこともあります。医師と相談の上、服薬を計画的に再開する方がよいでしょう。
薬が処方されたタイミングで、以下の事項を医師・薬剤師それぞれに確認しておくと安心でしょう。
・薬を飲み忘れてしまった場合の対処法
・服薬がどのくらい空いてしまったら、医師・薬剤師に相談すべきなのか
薬の飲み忘れを防止する工夫
アドヒアランスに優れた処方を
以前は、医師の指示通りに患者は処方するものであり、服薬遵守(コンプライアンス)という表現が用いられていました。しかし、現在は、服薬は医師と患者の相談を通して患者自身が積極的に選択していくべきものであり、その処方の受け入れやすさをアドヒアランスと表現します。
アドヒアランスはさまざまな要因によって影響されます。効果を自覚できる、副作用が少ない、1日の服薬回数が少ない、服用錠数が少ない、服用しやすいタイミングでの服薬(患者のライフスタイルで異なる)であるほど、アドヒアランスが高いといえます。
また、薬の色や口に入れたときの感触や味なども影響します。錠剤、口腔内崩壊錠(水なし服用が可能)、散剤、液剤など剤型もさまざまです。また、医師との信頼関係や、服薬の動機づけや必要性の理解なども大きく影響するものです。薬の選択をいろいろと患者と話しあうこと自体が薬の受け入れやすさを改善し、目標とするアドヒアランスの高い薬物療法に近づくことになるといえます。
アドヒアランスはさまざまな要因によって影響されます。効果を自覚できる、副作用が少ない、1日の服薬回数が少ない、服用錠数が少ない、服用しやすいタイミングでの服薬(患者のライフスタイルで異なる)であるほど、アドヒアランスが高いといえます。
また、薬の色や口に入れたときの感触や味なども影響します。錠剤、口腔内崩壊錠(水なし服用が可能)、散剤、液剤など剤型もさまざまです。また、医師との信頼関係や、服薬の動機づけや必要性の理解なども大きく影響するものです。薬の選択をいろいろと患者と話しあうこと自体が薬の受け入れやすさを改善し、目標とするアドヒアランスの高い薬物療法に近づくことになるといえます。
生活習慣に組み入れる
朝起きてから出かけるまでの手順、帰宅してから寝るまでの手順、私たちは知らず知らずのうちに習慣化した一連の行動をしています。
自閉スペクトラム症の子どもは、かたくなに同一の手順に従うかもしれませんし、ADHDの子は手順としてシステムだった行動をとることが苦手なこともあります。その子にとって、一番安定して取り入れやすいタイミングで習慣化することが大切です。
最初の家庭の例であれば、朝、食事の前に服用するという習慣を形作っていく声かけをしていくのもよいかもしれません。その子がもし歯磨きが大嫌いであるとすれば、「早く歯磨きしなさい。その前に薬を飲んでね」では、なかなか習慣に取り入れることはできません。
食事の前に「2階に上がって薬箱の中からお薬をとってきて水をコップに入れて飲むのよ」などという複雑な手順では習慣化に時間がかかりますが、この例での保護者さんがやっているように、朝食の決まった皿の上に置く、などというのはよい方法であると思われます。生活習慣に組み入れるのは、さまざまな工夫が可能です。
自閉スペクトラム症の子どもは、かたくなに同一の手順に従うかもしれませんし、ADHDの子は手順としてシステムだった行動をとることが苦手なこともあります。その子にとって、一番安定して取り入れやすいタイミングで習慣化することが大切です。
最初の家庭の例であれば、朝、食事の前に服用するという習慣を形作っていく声かけをしていくのもよいかもしれません。その子がもし歯磨きが大嫌いであるとすれば、「早く歯磨きしなさい。その前に薬を飲んでね」では、なかなか習慣に取り入れることはできません。
食事の前に「2階に上がって薬箱の中からお薬をとってきて水をコップに入れて飲むのよ」などという複雑な手順では習慣化に時間がかかりますが、この例での保護者さんがやっているように、朝食の決まった皿の上に置く、などというのはよい方法であると思われます。生活習慣に組み入れるのは、さまざまな工夫が可能です。
学校での服薬に協力を求める
子どもが学校で薬を飲まなければいけない場合は、担任や養護教諭にあらかじめサポートをお願いしておくと安心です。子どもが服薬を管理することもありえないことではありませんが、他の子が誤って服用してしまう可能性もありますし、なかなかタイミングがなくて服薬ができないことのほうが多いと思われます。
しかし、学校生活の中で服薬することは、プライバシーの面でも子ども自身が嫌がることが多いものです。可能であれば、昼に服薬しなくてよい処方が望まれます。とはいえ、宿泊が伴う学校行事がある時は服薬の援助をお願いする必要があるでしょう。
服薬の援助だけでなく、本人が普段と異なる状況の中で混乱したときの対応や緊急時の連絡など、さまざまなケースを想定した話し合いをしておきましょう。
しかし、学校生活の中で服薬することは、プライバシーの面でも子ども自身が嫌がることが多いものです。可能であれば、昼に服薬しなくてよい処方が望まれます。とはいえ、宿泊が伴う学校行事がある時は服薬の援助をお願いする必要があるでしょう。
服薬の援助だけでなく、本人が普段と異なる状況の中で混乱したときの対応や緊急時の連絡など、さまざまなケースを想定した話し合いをしておきましょう。
服薬の管理と動機付けーお助けツールの活用
服薬の管理の難しさは、子どもに限ったことではありません。飲み忘れていないか、逆にすでに服薬したかを”見える化”するためのツールは、たくさんあります。
たとえば、以下のようなツールが挙げられます。
・服薬カレンダー
・薬管理ボックス
・服薬管理アプリ
・お薬日記・お薬手帳など
これらのツールには電子化されているものもあり、薬を飲んだかどうかを管理する機能付のものもあります。アナログがよいか、デジタルがよいかは、その子のライフスタイルによって大きく異なります。忘れ物をしないようにするためにはどうしたらいいだろう、と子どもと話し合うことは、どの親御さんも経験済みかもしれません。子どもと一緒にその子にあったお助けツールを見つけ出しましょう。
たとえば、以下のようなツールが挙げられます。
・服薬カレンダー
・薬管理ボックス
・服薬管理アプリ
・お薬日記・お薬手帳など
これらのツールには電子化されているものもあり、薬を飲んだかどうかを管理する機能付のものもあります。アナログがよいか、デジタルがよいかは、その子のライフスタイルによって大きく異なります。忘れ物をしないようにするためにはどうしたらいいだろう、と子どもと話し合うことは、どの親御さんも経験済みかもしれません。子どもと一緒にその子にあったお助けツールを見つけ出しましょう。
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まとめ
発達障害のあるなしにかかわらず、子どもに処方通りに薬を飲んでもらうことは容易ではありません。お子さんに納得させようと気合いで説得しても、逆効果であることが多いものです。
担当の医師や薬剤師と相談を重ね、自分たちにとって一番継続しやすい服薬環境を整えていきましょう。服薬が抜けがちな子どもの場合には、うまく習慣に取り入れることが大切ですが、それを少しでも助けるツールも活用できます。
さまざまな側面から服薬しやすい環境を整え、よりお子さんにあったスタイルを作っていきましょう。
担当の医師や薬剤師と相談を重ね、自分たちにとって一番継続しやすい服薬環境を整えていきましょう。服薬が抜けがちな子どもの場合には、うまく習慣に取り入れることが大切ですが、それを少しでも助けるツールも活用できます。
さまざまな側面から服薬しやすい環境を整え、よりお子さんにあったスタイルを作っていきましょう。
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