起立性調節障害(OD)とは?診断基準・種類・治療法・相談先・周囲の対応法まとめ

ライター:発達障害のキホン
起立性調節障害(OD)とは?診断基準・種類・治療法・相談先・周囲の対応法まとめのタイトル画像

起立性調節障害は、思春期の子どもに起きやすい自律神経機能不全のうちのひとつです。起床時にめまいや動悸、頭痛といった症状が起こることが特徴的な疾患ですが、気持ちの問題と誤解されることも多くあります。そんな起立性調節障害について、疾患の概要や治療方法、日常におけるサポート方法などを解説します。

目次

起立性調節障害(OD)とは?

起立性調節障害(OD)とは、思春期に起こりやすい自律神経機能不全のことで、立ちくらみや失神、朝起きられない、倦怠感や動悸、頭痛などの症状が表れます。
Upload By 発達障害のキホン
起立性調節障害(OD)とは、思春期に起こりやすい自律神経機能不全のことで、立ちくらみや失神、朝起きられない、倦怠感や動悸、頭痛などの症状が表れます。自律神経がうまくはたらかず、立ち上がるときに起こる血圧の低下や心拍数の増加を抑えられないことが原因と考えられています。

軽症であれば治療が必要ないことも多いのですが、重症になると日常生活に支障が出て、不登校やひきこもり状態になることもあります。症状が長く続くと、その後の社会生活にも大きな影響を及ぼすため、早い段階で適切に対処することが重要です。

しかし、一部ではまだ理解が進んでおらず、周囲に「ただのなまけ」「気持ちの問題」と誤解されてしまう場面も多いといわれています。

起立性調節障害の主な症状

日本小児心身医学会によると、起立性調節障害には主に以下のような症状があるとされています。
・立ちくらみ、朝起床困難、気分不良、失神や失神様症状、頭痛など。症状は午前中に強く午後には軽減する傾向があります。
・症状は立位や座位で増強し、臥位にて軽減します。
・夜になると元気になり、スマホやテレビを楽しむことができるようになります。しかし重症では臥位でも倦怠感が強く起き上がれないこともあります。
・夜に目がさえて寝られず、起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活になることもあります。
出典:https://www.jisinsin.jp/detail/01-tanaka.htm
実はこれらの症状は、生活習慣の乱れや、不登校でも起きうる症状です。そのため、体の病気ではなく気持ちの問題だと誤解されることが多くあるのです。

日本小児心身医学会が定めたガイドラインでは、起立性調節障害の診断方法が定められています。
1)立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑います。
2)鉄欠乏性貧血、心疾患、てんかんなどの神経疾患、副腎、甲状腺など内分泌疾患など、基礎疾患を除外します。
3)新起立試験を実施し、以下のサブタイプを判定します。
(1) 起立直後性低血圧(軽症型、重症型)
(2) 体位性頻脈症候群
(3) 血管迷走神経性失神
(4) 遷延性起立性低血圧
出典:https://www.jisinsin.jp/detail/01-tanaka.htm
起立性調節障害が疑われる場合、まずは他の病気が原因になっていないかを調べる必要があります。貧血や心臓の病気などでも、立ちくらみなどの似たような症状を起こすことがあるためです。

病気の有無を調べるためには、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などが必要に応じて行われます。この時点で原因となっている病気が分かれば、適切な治療を行うことで改善する可能性があります。

他の病気でないことが分かった場合、起立性調節障害と確定するために新起立試験が行われます。新起立試験とは、起立前後の血圧や心拍数がどのくらい変化するかを見る検査のことです。この変化の度合いによって、起立性調節障害の中でどのサブタイプに属するか、重症度はどのくらいかを見ることができます。

起立性調節障害の4つのタイプ

新起立試験によって分類されるサブタイプは4つあります。それぞれのサブタイプについて、以下で説明していきましょう。

起立直後性低血圧

起立直後性低血圧は、立ち上がった直後に血圧低下や血圧回復の遅れが見られる状態のことを言います。通常、人間は立ち上がったときの血圧低下を予防するため、交感神経が活発になってノルアドレナリンという物質が出るようになっています。しかし、起立性調節障害の子どもは、このノルアドレナリンの分泌量が少ないために、血圧を維持することができないのです。

起立直後性低血圧と診断する具体的な値として、以下のような条件が定められています。

・起立後血圧回復時間≧25秒
または、
・起立後血圧回復時間≧20秒かつ、非侵襲的連続血圧測定装置で求めた起立直後平均血圧低下≧60%

軽症型の場合は、起立中に徐々に血圧が回復していきますが、重症型の場合は血圧低下が一定時間持続すると言われています。

体位性頻脈症候群

体位性頻脈症候群の場合は、立ち上がるときに血圧低下が見られません。その代わり、心拍数に著しい増加が見られるのが、体位性頻脈症候群です。立ち上がったときに、下半身に血液がたまっていると、上半身の血液量が少なくなるため、心臓の動きは遅くなります。この動きを維持しようとするため、心拍数が速くなってしまうのです。

具体的な数字としては、以下のように定められています。

・軽症〜中等症: 起立時心拍数≧115 または 心拍数増加≧35
・重症: 起立時心拍数≧125 または 心拍数増加≧45

起立直後性低血圧や遷延性起立性低血圧といった、別のサブタイプと合併していることもあります。

血管迷走神経性失神

血管迷走神経性失神は、起立中に突然血圧が下がって意識レベルが下がったり、意識を失ったりする状態を指します。立ち上がったときに、静脈を流れる血液量が少なくなって、心臓が激しく動くようになると、反射的に自律神経が興奮し、活動を止めてしまうことがあります。その結果起こるのが、血管迷走神経性失神なのです。ひどい場合には、心停止することもあるとされています。

軽症であれば、約4割の人が大人になるまでに経験すると言われており、治療をする必要がないことも多いです。しかし、起立直後性低血圧や体位性頻脈症候群と合併していることもあり、その場合には治療が必要となります。

遷延性起立性低血圧

遷移性(せんいせい)起立性低血圧は、起立直後の血圧や心拍数は正常であるものの、3〜10分たってから血圧低下(収縮期血圧が横になっているときの15%以上、あるいは20mmHg以上の低下)が見られるというものです。軽症であれば日常生活への影響は少ないものの、中等症ではやや影響が見られるようになり、重症ではほぼ毎日支障をきたすようになります。
次ページ「起立性調節障害の多い年代」

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。