起立性調節障害(OD)とは?診断基準・種類・治療法・相談先・周囲の対応法まとめ

起立性調節障害は、思春期の子どもに起きやすい自律神経機能不全のうちのひとつです。起床時にめまいや動悸、頭痛といった症状が起こることが特徴的な疾患ですが、気持ちの問題と誤解されることも多くあります。そんな起立性調節障害について、疾患の概要や治療方法、日常におけるサポート方法などを解説します。

起立性調節障害(OD)とは?
具体的な症状としては、立ちくらみや失神、朝起きられない、倦怠感(だるさ)や動悸、頭痛といったものがあります。軽症であれば治療が必要ないことも多いのですが、重症になると日常生活に支障が出て、不登校やひきこもり状態になることもあります。症状が長く続くと、その後の社会生活にも大きな影響を及ぼすため、早い段階で適切に対処することが重要です。
しかし、一部ではまだ理解が進んでおらず、周囲に「ただのなまけ」「気持ちの問題」と誤解されてしまう場面も多いといわれています。
起立性調節障害の主な症状
出典:http://www.jisinsin.jp/detail/01-tanaka.htm・立ちくらみ、朝起床困難、気分不良、失神や失神様症状、頭痛など。症状は午前中に強く午後には軽減する傾向があります。
・症状は立位や座位で増強し、臥位にて軽減します。
・夜になると元気になり、スマホやテレビを楽しむことができるようになります。しかし重症では臥位でも倦怠感が強く起き上がれないこともあります。
・夜に目がさえて寝られず、起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活になることもあります。
日本小児心身医学会が定めたガイドラインでは、起立性調節障害の診断方法が定められています。
出典:http://www.jisinsin.jp/detail/01-tanaka.htm1)立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する、食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑います。
2)鉄欠乏性貧血、心疾患、てんかんなどの神経疾患、副腎、甲状腺など内分泌疾患など、基礎疾患を除外します。
3)新起立試験を実施し、以下のサブタイプを判定します。
(1) 起立直後性低血圧(軽症型、重症型)
(2) 体位性頻脈症候群
(3) 血管迷走神経性失神
(4) 遷延性起立性低血圧
病気の有無を調べるためには、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などが必要に応じて行われます。この時点で原因となっている病気が分かれば、適切な治療を行うことで改善する可能性があります。
他の病気でないことが分かった場合、起立性調節障害と確定するために新起立試験が行われます。新起立試験とは、起立前後の血圧や心拍数がどのくらい変化するかを見る検査のことです。この変化の度合いによって、起立性調節障害の中でどのサブタイプに属するか、重症度はどのくらいかを見ることができます。
起立性調節障害の4つのタイプ
起立直後性低血圧
起立直後性低血圧と診断する具体的な値として、以下のような条件が定められています。
・起立後血圧回復時間≧25秒
または、
・起立後血圧回復時間≧20秒かつ、非侵襲的連続血圧測定装置で求めた起立直後平均血圧低下≧60%
軽症型の場合は、起立中に徐々に血圧が回復していきますが、重症型の場合は血圧低下が一定時間持続すると言われています。
体位性頻脈症候群
具体的な数字としては、以下のように定められています。
・軽症〜中等症: 起立時心拍数≧115 または 心拍数増加≧35
・重症: 起立時心拍数≧125 または 心拍数増加≧45
起立直後性低血圧や遷延性起立性低血圧といった、別のサブタイプと合併していることもあります。
血管迷走神経性失神
軽症であれば、約4割の人が大人になるまでに経験すると言われており、治療をする必要がないことも多いです。しかし、起立直後性低血圧や体位性頻脈症候群と合併していることもあり、その場合には治療が必要となります。
遷延性起立性低血圧
起立性調節障害の多い年代
起立性調節障害の合併症
・身体面: 睡眠障害、ときに痙攣を伴う失神、著しい頻脈
・心理面、行動面:: 集中力や思考力の低下、日常生活の活動量の低下、長期間にわたる欠席
また、発達障害のある子どもが起立性調節障害を発症することも少なくありません。発達障害のある子どもは、ストレスを感じやすい傾向があると言われています。これが原因で自律神経に影響を及ぼし、起立性調節障害を起こしやすいと言われています。
起立性調節障害と似た病気
うつ病
起立性調節障害ではなくうつ病だと診断された場合、抗うつ薬の服用によって起立性低血圧が起きてしまうこともあり、症状が悪化する可能性もあります。
脳脊髄液減少症
脳脊髄液が減少すると起こる症状の中に、起立したときの頭痛やめまい、血圧・脈拍の異常などがあります。このような症状があることから、起立性調節障害と間違えられやすいのです。
発症する原因には、交通事故でのむち打ちといった外傷などがありますが、原因不明な場合も少なくありません。病気としてはまだ広く知られておらず、発見されるのに時間がかかることも多いようです。
起立性調節障害が疑われるとき、病院はどこを受診したらいい?
ただし、サブタイプを診断するために必要な機械が備わっている医療機関は、まだ全国でも数ヶ所しかありません。そのため、機械がない医療機関では簡易的な方法を用いて検査を行っています。診断か可能かどうか、事前に医療機関に確認してみても良いでしょう。
起立性調節障害は治るの?
起立性調節障害の治療と対処法
・疾病教育
・非薬物療法
・学校との連携
・薬物療法
これらに加えて、必要に応じて心理療法が行われることもあります。それぞれの内容について、以下で具体的に見ていきましょう。
親子で病気について理解する(疾病教育)
まずは、起立性調節障害がどのような病気なのか、治療して改善するには時間がかかることなどを説明します。本人と保護者が治療が必要であることを理解した上で、正しい治療が行えるようにしていきます。
非薬物療法(日常生活における注意点)
▪️体を起こすときの動作に注意する
寝た状態や座った状態から急に立ち上がると、脳の血流が一気に低下して気分不快などを生じやすくなるため、ゆっくりと体を起こすようにします。特に、朝は脳の血流が悪い状態なので、注意が必要です。頭を起こさず、下げた状態でゆっくりと立ち上がることが大切です。
▪️水分と塩分をしっかりととる
水分摂取量が少ないと、体の中の血液量が少なくなり、血圧を維持することが難しくなってしまいます。塩分は通常であれば控えた方が良いとされていますが、起立性調節障害の子どもは塩分摂取量が少ない傾向にあります。塩分を摂取すると体は水分を維持しようとするため、血圧低下を防ぐことができるとされています。水分は1日1.5〜2リットル、塩分は1日10〜12gを目安に摂取します。
▪️生活リズムを整える
起立性調節障害の子どもは、朝起きられないために起床が遅くなり、寝る時間も遅くなりがちです。寝る時間が遅くなりすぎないよう、毎日23時には布団の中に入るようにしましょう。できるだけ入眠しやすくなるよう、環境を整えることも大切です。寝る前には早めに部屋の明かりを落としたり、朝は早い時間にカーテンを開けて、日光に当たるようにします。
▪️適度な運動を行う
毎日の適度な運動も、起立性調節障害を治療する上で大切です。筋力が低下すると血圧が下がりやすくなるほか、自律神経のバランスを崩しやすくなって、症状が悪化してしまいます。
▪️暑い場所を避ける
気温や室温が高いと、血管が広がって血圧が下がりやすくなります。さらに汗をかくと体内の水分が少なくなり、より症状を悪化させてしまいます。外にいる場合は日影にいるようにしたり、空調を調節したりといった工夫をするようにします。
学校との連携
学校側に依頼する具体的なサポート方法としては、以下のような項目が挙げられます。
・体調不良が起こったときには速やかに横にする
・静止した状態での立ちっぱなしの姿勢を3〜4分以上続けない
・暑さは避け、水分補給を欠かさないようにする
・登校する時間は本人の体調に合わせるようにする
・登校を促すために、教師やクラスメートが迎えに行くことはストレスとなる可能性があるので、本人と保護者の希望を聞く
・欠席が何日も続くようなときは、毎日の連絡は保護者の負担になることがあるため、行ける日の朝に連絡をするようにする
適切なサポートをすることで、起立性調節障害を持つ子どもの精神的な負担は軽減することができます。実際にどのようなサポートを依頼するかについては、担当医とも相談して、学校側に伝えると良いでしょう。
薬物療法
薬の種類は、主に以下のようなものがあります。
・ミドドリン塩酸塩: 血管を収縮させて、血圧を上げる薬。起立直後性低血圧と対位性頻脈症候群の第1選択薬
・アメジニウムメチル硫酸塩: 交感神経の機能を亢進させる薬。副作用として、起立時に頻脈を起こすことがある
・プロプラノロール: アドレナリンなどの作用を弱め、心拍数を低下させて、血管を収縮させる薬。起立性調節障害では、対位性頻脈症候群だけに使われる
効果が現れるまでに1〜2週間かかることもあるため、その点を子どもにも理解できるように説明しておきましょう。
子どもが起立性調節障害と診断されたら、どんなことに気をつけたらいい?
平常心を保つ
しかし、不安から子どもを叱ってしまったり、イライラした気持ちを表に出したりしてしまうと、子どもとの関係が悪くなってしまうかもしれません。まずは平常心を保つという心構えを大切にした上で、日常生活のサポートをしていきましょう。
生活リズムを保つようにする
また、家族全体でルールを共有し、一定の生活パターンを送ることも有用です。テレビを見る時間を決める、夕食は全員で食べるなど、家族と話し合って可能なものからルールを作ってみると良いでしょう。それらの生活パターンが、子どもの体のリズムにも良い影響を与えてくれます。
勉強の遅れをサポートする
起立性調節障害の場合、夕方から夜は比較的元気に過ごせることも多いです。学業面が心配な場合、学校に放課後の補習をお願いしたり、塾や家庭教師を活用したりしても良いでしょう。
無理をせず、家族でよく話し合う
また、保護者が心配しすぎないようにしましょう。起立性調節障害の治療には時間がかかりますし、考えすぎると保護者も精神的に疲れてしまいます。治療やサポートは、子どものペースに合わせて進めていくことが大切です。
まとめ
適切な治療をすることで、起立性調節障害の症状は改善する可能性があります。もし該当する症状や心配な症状があるようであれば、診断が可能な小児科のある医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。
参考

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発達障害のキホン さんが書いた記事

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