起立性調節障害が疑われるとき、病院はどこを受診したらいい?

起立性調節障害は思春期特有の疾患であることから、診察は主に小児科で行われています。診断は、日本小児心身医学会が定めたガイドラインに沿って行われます。

ただし、サブタイプを診断するために必要な機械が備わっている医療機関は、まだ全国でも数ヶ所しかありません。そのため、機械がない医療機関では簡易的な方法を用いて検査を行っています。診断か可能かどうか、事前に医療機関に確認してみても良いでしょう。

起立性調節障害は治るの?

起立性調節障害は、軽症であれば適切な治療によって2〜3ヶ月程度で改善すると言われています。しかし、中には学校生活や日常生活に支障をきたす重症例もあり、その場合は社会復帰に2〜3年以上という長期間を要することもあります。

起立性調節障害の治療と対処法

起立性調節障害の治療と対処法は、大きく以下の4つに分けられます。

・疾病教育
・非薬物療法
・学校との連携
・薬物療法

これらに加えて、必要に応じて心理療法が行われることもあります。それぞれの内容について、以下で具体的に見ていきましょう。

親子で病気について理解する(疾病教育)

起立性調節障害を治療する上で重要なポイントは、本人と保護者が「起立性調節障害は体の病気である」と理解できることです。本人がいくら不調を訴えても、保護者が「夜更かしするからだ」「なまけているだけだ」として叱ったり、無理やり起こそうとすることも多く、親子関係が悪化している場合も少なくありません。

まずは、起立性調節障害がどのような病気なのか、治療して改善するには時間がかかることなどを説明します。本人と保護者が治療が必要であることを理解した上で、正しい治療が行えるようにしていきます。

非薬物療法(日常生活における注意点)

起立時に症状が起こる起立性調節障害では、日常生活の中で動作や食事に気をつけることで、症状を起こしにくくすることができます。

▪️体を起こすときの動作に注意する
寝た状態や座った状態から急に立ち上がると、脳の血流が一気に低下して気分不快などを生じやすくなるため、ゆっくりと体を起こすようにします。特に、朝は脳の血流が悪い状態なので、注意が必要です。頭を起こさず、下げた状態でゆっくりと立ち上がることが大切です。

▪️水分と塩分をしっかりととる
水分摂取量が少ないと、体の中の血液量が少なくなり、血圧を維持することが難しくなってしまいます。塩分は通常であれば控えた方が良いとされていますが、起立性調節障害の子どもは塩分摂取量が少ない傾向にあります。塩分を摂取すると体は水分を維持しようとするため、血圧低下を防ぐことができるとされています。水分は1日1.5〜2リットル、塩分は1日10〜12gを目安に摂取します。

▪️生活リズムを整える
起立性調節障害の子どもは、朝起きられないために起床が遅くなり、寝る時間も遅くなりがちです。寝る時間が遅くなりすぎないよう、毎日23時には布団の中に入るようにしましょう。できるだけ入眠しやすくなるよう、環境を整えることも大切です。寝る前には早めに部屋の明かりを落としたり、朝は早い時間にカーテンを開けて、日光に当たるようにします。

▪️適度な運動を行う
毎日の適度な運動も、起立性調節障害を治療する上で大切です。筋力が低下すると血圧が下がりやすくなるほか、自律神経のバランスを崩しやすくなって、症状が悪化してしまいます。

▪️暑い場所を避ける
気温や室温が高いと、血管が広がって血圧が下がりやすくなります。さらに汗をかくと体内の水分が少なくなり、より症状を悪化させてしまいます。外にいる場合は日影にいるようにしたり、空調を調節したりといった工夫をするようにします。

学校との連携

起立性調節障害と診断された場合、学校との連携も大切なポイントです。教師も起立性調節障害について十分な知識がないために、「なまけている」「気の持ちようだ」と思われてしまうことも少なくありません。起立性調節障害は体の病気であること、いつ体調不良が起きてもおかしくないことを理解してもらい、子どもが適切なサポートを受けられるよう、協力を仰ぎましょう。

学校側に依頼する具体的なサポート方法としては、以下のような項目が挙げられます。

・体調不良が起こったときには速やかに横にする
・静止した状態での立ちっぱなしの姿勢を3〜4分以上続けない
・暑さは避け、水分補給を欠かさないようにする
・登校する時間は本人の体調に合わせるようにする
・登校を促すために、教師やクラスメートが迎えに行くことはストレスとなる可能性があるので、本人と保護者の希望を聞く
・欠席が何日も続くようなときは、毎日の連絡は保護者の負担になることがあるため、行ける日の朝に連絡をするようにする

適切なサポートをすることで、起立性調節障害を持つ子どもの精神的な負担は軽減することができます。実際にどのようなサポートを依頼するかについては、担当医とも相談して、学校側に伝えると良いでしょう。

薬物療法

薬を使った治療は、非薬物治療を行った上で進めていきます。起立性調節障害の治療に使用される薬にはいくつか種類があり、ガイドラインではサブタイプごとに適した薬剤が掲載されていますが、効果は個人差があるので、必ずしもこれでなければならないというわけではありません。

薬の種類は、主に以下のようなものがあります。

・ミドドリン塩酸塩: 血管を収縮させて、血圧を上げる薬。起立直後性低血圧と対位性頻脈症候群の第1選択薬
・アメジニウムメチル硫酸塩: 交感神経の機能を亢進させる薬。副作用として、起立時に頻脈を起こすことがある
・プロプラノロール: アドレナリンなどの作用を弱め、心拍数を低下させて、血管を収縮させる薬。起立性調節障害では、対位性頻脈症候群だけに使われる

効果が現れるまでに1〜2週間かかることもあるため、その点を子どもにも理解できるように説明しておきましょう。
出典:ミドドリン塩酸塩錠2mg「オーハラ」|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/180095_2160002F1095_2_04
出典:アメジニウムメチル硫酸塩錠10mg「オーハラ」|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/180095_2190022F1180_1_02
出典:プロプラノロール塩酸塩錠10mg「トーワ」|独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/480235_2123008F1285_1_01
次ページ「子どもが起立性調節障害と診断されたら、どんなことに気をつけたらいい?」

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