発達障害の二次障害とは?原因や症状、対応方法について詳しく解説します【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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発達障害がある人は、抑うつや不安障害といった二次障害を発症することがあります。発達障害があることに気がつかないまま大人になり、二次障害がきっかけで医療機関を受診し、そこで初めて発達障害と診断される人もいます。そんな発達障害の二次障害について、発症に至る原因や詳しい症状、家庭や学校での対応方法などについて解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

発達障害のある人が気をつけたい「二次障害」とは

発達障害は、注意欠如・多動性障害(ADHD)や、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)などの先天的な脳機能の障害のことを言います。

これらの障害のある人の中には、その人にあった支援やサポートが受けられない、自分の特性に合わない環境などの影響によって、精神障害の合併や社会適応を困難にする行動の問題に至ってしまうことがあります。二次障害とは医療的な診断ではなく、心身の症状や精神疾患、不登校や引きこもりなどの状態像を示すものです。二次障害の状態像は人により異なります。

また、大人になってから二次障害がきっかけで発達障害と診断されるという場合もあります。

発達障害の二次障害が起きる原因

発達障害の二次障害は、家庭や学校、職場などの環境とのミスマッチが要因となって生じることが多いと考えられています。

発達障害のある人は、その特性をまわりに理解してもらえないことが珍しくありません。そのため、発言や行動に対して、叱られたり否定的な対応をされたりすることもあります。また、感覚過敏やコミュニケーションの障害などがある人は、合わない環境で我慢を強いられたり、日常生活でも大きなストレスを感じていたりする場合もあります。

このような対応が積み重なると、発達障害のある人が自分に対して否定的な考えを持ってしまったり、自尊心を低下させたりしてしまいます。それが原因で、気分の落ち込みや不安、引きこもり、暴力的な行動などが二次障害として現れることもあるのです。

発達障害のある人すべてが二次障害を発症するわけではありませんが、ネガティブな体験の積み重なりや、いじめなどの大きな出来事の体験、ストレスへの対処がうまくいかなかった場合などに発症しやすくなります。

発達障害の二次障害、具体的な症状は?

二次障害の具体的な症状としては、引きこもりや暴力といった行動面の問題、不安や抑うつなどの精神的な問題、身体の不調として現れる心身症などが挙げられます。

これらの症状は、「内在化障害」と「外在化障害」の2つに大きく分類することができます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

内在化障害

自分に対するいら立ちや精神的な葛藤が、自分に向けて表現される症状のことを言います。分離不安障害、強迫性障害、気分障害などが典型的なケースとしてあり、具体的には、以下のような症状が当てはまります。

・不安
・抑うつ
・引きこもり
・対人恐怖
・心身症
・依存症
など

中でも抑うつ症状は、発達障害がある青年にもっとも多い二次障害だといわれています。また、義務教育を終えた年代以降で引きこもりを続ける人には、発達障害が隠れている場合が多いこと、また近年学齢期の子どものうつが注目されていますが、その背景に発達障害がある場合もあることも指摘されています。

外在化障害

精神的な葛藤などが他者に向けられる形で現れる症状のことを言います。反抗や暴力、家出、ときには非行などの反社会的な行動として現れることもあります。

特徴としては、思春期になってからこれらの問題を起こす子どもだけでなく、比較的小さいうちからそうした行動が目立つ子どものほうもいます。小学校低学年の頃から、他者への反抗が目立ったり、家出などを繰り返したりする子どもも一定数いるといわれています。

これらの内在化の問題と外在化の問題は、密接に関わりあって現れることもあります。

年代別に現れやすい症状

発達障害の二次障害は、年代によって出やすい症状が異なるといわれています。

幼児期:軽度な適応上の行動の問題が見られることもある。
学童期:適応行動の問題が中心。学業面での問題、集団活動や対人行動における問題が目立つようになる。その他、情緒面の不安定さなどが見られることもある。
青年期:情緒面の不安定さ、精神面や行動面の問題、心身症が中心となる。適応行動の問題も見られる。
成人期:適応行動の問題、精神面や行動面の問題が中心。情緒面の不安定さなどが見られることもある。

学童期において、対人関係などの問題が現れ始めた時点で適切な対応が得られない場合、思春期以降になって二次障害としてさまざまな問題が前面に出やすくなると考えられています。
参考書籍:齋藤万比古 (著)『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』(学研プラス,2009)
https://www.amazon.co.jp/dp/4054041698
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