今はまだ選択肢の少ない「障害がある人の働き方」。自閉症の息子の、やりがいある仕事との出会いを願って

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自閉症の息子は、もうすぐ特別支援学校高等部を卒業します。

息子が高等部に進学してから、私は卒業後の進路選びのために、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所を見学しました。息子は企業実習を行い、採用見送りを申し渡されもしました。

息子と私とで、3年間かけて選んだ、進路とは。そして今、強く願っていることとは――。

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就労支援事業所を見学して

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。

自閉症の息子も特別支援学校高等部3年生となり、もうすぐ卒業を迎えます。

息子のように障害がある子どもが社会に出るとき、その進路の幅は、広いとは言えません。障害者就労が可能な企業の数もまだ十分とは言えず、就労継続支援事業所や、就労移行支援事業所、生活介護事業所などを利用する場合が多くあります。

私も、息子の卒業後の進路選びのために、息子が高等部に進学したころから、就労移行支援事業所(※1)や就労継続支援事業所(※2)の見学に足しげく通いました。どのようなところが息子に合うのか、見てみたかったからです。

※1就労移行支援事業所…就労を希望している障害・難病がある方に対して、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアを行う。利用期間は原則2年間以内で、2年の間に職業訓練や職場探しなどのサポートを受けて就労を目指す。

※2就労継続支援事業所…一般就労が難しい方や、就労移行支援を利用したものの就職に結びつかなかった方が利用できる福祉的就労サービス。事業所での職業訓練や企業から受託された作業活動などを通じ、働くために必要な知識や能力を高めていく。事業所で行われた生産作業に対しては報酬も支払われる。
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事業所ごとの取り組みはさまざまなようですが、私が見学した就労継続支援事業所の中には、障害のある人たちが1日中、同じ作業をしているところもありました。

息子は知的障害を伴う自閉症で、コミュニケーションが苦手です。高等部2年生の頃授業の一環で行った「接客」は好きだと言っていました。でも、お客さん役とのやりとりは、どうしてもちぐはぐになってしまいました。ですから、サービス業ではなく、やることが明確な作業のほうが向いているのかもしれません。

ただ、集中力が続かないこともあり、ずっと同じ業務に取り組むのは難しいという面もあります。私語厳禁の環境のもと、特性に合っているとはいえない仕事に一日中取り組む…。息子は、辛く感じないだろうか?というのが、私が抱いた率直な気持ちでした。

企業実習でのできごと

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息子は一昨年、企業実習をしました。そこで「封筒にハンコを押して、それを封入する」という仕事を、9時~16時まで行いました。私はたった20分しか見学しませんでしたが、息子は終業時間まで取り組みました。私は、「ああ、すごく頑張っているなあ…健気だなあ…」と思いました。

私は、大変そうだと感じましたが、そこで働くのは息子です。本人がどう感じるが一番大切です。本人が達成感ややりがいを感じていれば、親目線で「ああでもない、こうでもない」と言ってはいけないのです。

息子がどう感じていたかと言うと…。同じ作業を長時間座って行うのが辛かったのか、途中で離席する回数も多かったようです。実習先の企業からも「集中力がないので、採用することはできない」という返事をもらいました。多動性のある息子には、少し動きがある作業のほうがよかったのかもしれません。
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その仕事を本人が望んでいるか?という視点

一口に「障害がある」と言っても、それぞれ異なった状況があり、できることやできないこともさまざまです。息子と同じ学校に通う仲間も、障害者雇用枠で企業就労する子もいれば、卒業後は生活介護事業所(※)を利用する子もいます。就労した場合の仕事内容もさまざまです。

すべての人がやりたい仕事についているわけではないですし、会社の一員としてやらなくてはいけない業務を、皆それぞれこなしてもいるでしょう。

でも、「障害がある人にはこういう仕事を」という、決めつけのようなものがどこかにあるのではないかなとも感じるのです。障害のある人それぞれの特性を活かした仕事の切り出しができているだろうか。社会が、保護者が、やらせたいと思う仕事は、本当に「本人が望んでいる仕事」なのだろうかと。

※生活介護事業所…常時介護が必要とする人に、昼間、入浴、排泄、食事等の介護を行うとともに、創作活動または生産活動の機会を提供する。

やりがいのある仕事との出会いを願いつつ、親としてできることを

息子は4月から、就労移行支援事業所に通います。ここで過ごす2年間で、どんな力を身につけ、仕事に対してどんなふうに感じたり考えたりするようになるのでしょうか。

「障害がある人はこの仕事」というなかば決められた枠の中ではなく、「自分の特性に合っていて、やりたい仕事、やりがいのある仕事」を見つけられたらと、息子の就労を見守る母として切に思います。息子に合う仕事先とマッチングされるよう願うばかりです。

障害者雇用には厳しい現実も多く、親として悩み考えることもあります。でも、悩んでいるだけでは、前に進むことはできません。

障害のあるわが子のためにコーヒー店を開業したり、うどん屋を開店したりする親御さんもいると聞きます。他力本願ではなく、私も先輩ママ達に学んで、もっと努力することも必要だと感じています。

息子は間もなく高等部卒業を迎えます。学校卒業後の人生は長く、試練もあると思いますが、今は心から「おめでとう」と祝ってやりたいです。
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著者親子のルポルタージュ

松永正訓
中央公論新社

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