保護者も簡単、使いやすい!成長と発達を見える化する「アセスメントツール」、特別支援教育のプロの経験が詰まった1冊

2019/03/18 更新
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「発達が気になるわが子をどのように育てたらよいのか」「園児(児童)の発達をどうとらえ、支援したらよいのか」保護者や先生の中には、不安や疑問を抱きつつも、専門家による発達検査を受けることはハードルが高いと感じる人もいるでしょう。
『子どもの発達を支える アセスメントツール』(合同出版)は、子どもの一番身近な存在である保護者や先生が発達の段階や課題を把握でき、かつ支援に直接活かせるよう作成されました。記入式シートつきなので、お子さんの実態によりフィットした支援がすぐに始められます!

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子どもの発達を見える化!『子どもの発達を支えるアセスメントツール』

発達が気になるお子さんを育てる保護者、または日々接する先生の不安の多くはどのように接すればよいのか、どんな支援が必要なのかといった見通しが立たないということではないでしょうか。逆に、子どもの発達の段階と現状の課題が把握できると、接し方が分かるようになります。

その子の発達段階や困りごとを”見える化”するシートで、子育てや支援の見通しを立てられるようにし、支援のヒントをまとめたのが『子どもの発達を支えるアセスメントツール』です。
子どもの発達を支えるアセスメントツール
安部博志 (著)
合同出版

支援に欠かせない3ステップとは?

個人の能力や特徴などの情報を整理・分析し、子どもに合う支援をするためには、次の3つのステップが必要となります。

1. SEE: 発達段階を知る
2. PLAN: 指導計画をつくる
3. DO: 支援する


たとえば、いつもうまく手を洗えない子がいるとします。これを3つのステップに当てはめて整理・分析すると、次のようなことが分かるかもしれません。

SEE: 「ちゃんときれいに手を洗いなさい」という指示の意味が抽象的で理解できない
PLAN: こちらの求めていることが子どもにはっきりとイメージできるように伝える
DO: 「手のヌルヌルがなくなるまで洗おうね」と具体的に指示をする


このように保護者や先生が子どもの実態を把握することで、「どう接したらいいか」といった支援の方法が明確に見えてきます。

子どもの実態を具体的にとらえる

本書には実際に記入できる「発達段階アセスメントシート」と「困っていること確認シート」がついています。

・発達段階アセスメントシート
「運動」「日常生活」「社会性」「知的発達(ことば)」「知的発達(描画)」の5つの領域ごとに、「何ができるか」の項目が、年齢別(1~7歳)に列記してあります。

実年齢より1歳上の項目から、下の年齢に向かってさかのぼるようにしてチェックしていくと「現時点での子どもの達成度」が分かるようになっています。

3項目連続で達成している場合、それ以下の項目は全てできているとみなします。発達には順序があるので、たとえば「クレヨンの『赤』『青』『黄』が指差しできる」から「『パパ・カイシャ・イッタ』などの三語文を話せる」までできていれば、そこから以下の項目は全て達成しているということです。
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発達段階アセスメントシートの記入例。実年齢より1歳上の項目から下に向かってチェックを入れます
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・困っていること確認シート
子どもが困っている理由や状況を理解するもの。「理解」「行動」「社会性」「その他」の4項目があり、子どもの視点から困っていることをチェックします。

これは、大人が対応に困っていることを解決するのではなく、子どもが困っていることを支援・解決するためのものです。
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困っていること確認シートの記入例。大人が困っていることではなく、子どもが困っていることを見える化することが大切です
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「SEE ➡ PLAN ➡ DO」の3ステップすべてを保護者だけで行う必要はありません。親が保育・療育の専門家のようになると、子どもは息が詰まってしまうので、困ったときは、専門家に相談しましょう。そんなときにも、本書のアセスメントシートを活用できます。

著者・安部先生にきく、「アセスメントツール」作成の背景とは?

本書を手がけたのは、筑波大学附属大塚特別支援学校の地域支援部長であり、特別支援教育コーディネーターでもある安部博志先生。本書をつくられた背景などをお聞きしました。

※特別支援教育コーディネーターとは、その子に合った適切な支援を行うため、保護者・園・学校・療育機関など各関係者・機関との連絡や調整を行い、子どもにかかわるすべての人が、協同的に対応できるようにする仕事です。

――特別支援教育コーディネーターとしてのお仕事と本書のかかわりはどんなところでしょうか?

安部: 私は地域の特別支援教育コーディネーターとして、保護者や先生たちの相談や支援に携わってきました。この16年間で、園や小中学校を10,000クラス以上見てきました。

そうした支援の実践の中で、この10年間、アセスメントシートを現場で使いながら、より活用しやすいものになるようバージョンアップを繰り返してきました。そして、これまでの試行錯誤を経て生まれたのが本書なのです。

――保護者や園・学校の先生向けにアセスメントツールをつくろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

安部: 「子どもの成長が少し遅れているような気がする」「これからどんなふうに成長していくのかイメージできなくて不安」という保護者からの声をよく聞きました。

また、現場の先生からも、「この子の発達をどのようにとらえたらよいのか」「クラスの中で、具体的にどのように支援したらよいのか」という悩みを頻繁に聞きました。

専門家に発達検査してもらわなければ、子どもの特性や発達の課題の詳細は分かりませんから、こういった不安や戸惑いは当然のことですよね。

でも、子どものことを一番よく知っていて、日々格闘しているのは、専門家ではなく保護者や先生です。専門家による発達検査を受けないと支援の方法に自信が持てないというのが、少し引っかかっていました。

そこで、保護者と園や学校の先生でも比較的容易に子どもの状態像をアセスメントすることができ、子育てや支援に結びつけられるようなツールがつくれないものかと考えたのが、きっかけです。
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アセスメントシートを手にする著者の安部先生
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発達障害のある子どもが安心して過ごせるためには?

マイナスな言葉も、見方を変えればプラスの言葉になる

――発達障害がある子・発達が気になる子は、どんな困りごとが多いと感じていますか?

安部: 本人は、みんなのように何とかうまくやろうと思ってはいるけれど、どうしてもうまくいかない。いつも失敗してしまう。そうすると、周囲からマイナスの評価を受けたり、ネガティブな言葉を浴びせられたりすることが、どうしても多くなってしまいます。

その結果、「わたしは、ダメな子なんだ…」という自己否定の気持ちが膨らんでいきます。つまり、失敗体験とそれに伴う自尊感情の低下という悪循環の中で、もがき苦しんでいる。何とか、その悪循環から抜け出させてあげたいですね。

――周囲の大人からどんな支援があれば安心して過ごすことができると考えますか?

安部: 支援のポイントは2つあると思います。第一は、子どもが失敗してしまう前に成功体験へと導いてあげることです。

たとえば、難しい課題は、取り組みやすいようにスモールステップで細かく分解して提示してあげること。子どもが読み取れないその場の空気や求められていることを、さりげなく伝えてあげること。課題を解決するためのツール(教材教具)を持たせてあげること、などです。
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本書では、教育・療育の現場で実践されている接し方のコツも紹介。
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第二は、子ども自身が納得できたり、ホッとしたりできるような温かい言葉をかけてあげることです。

「走っちゃダメ!」ではなく、「廊下は歩きます」と伝えてあげる。「いい加減にしなさい!」ではなく、「あと何分でゲームを終わりにするの?」と本人に決めさせる。「早く片づけなさい!」ではなく「お片づけしたら、夕飯は唐揚げだよ!」と言ってみることです。

マイナスの言葉も、見方(フレーム)を変えると、今までと違うようにとらえられます。これを、心理学では「リフレーミング」と言います。この技を身につけると、大人にとってもイライラ感やストレスがびっくりするほど軽くなります。

アセスメントとは、成長を見られる「ワクワク体験」

――専門家ではない保護者や先生が活用できるアセスメントツールをつくるにあたって、工夫された点はどんなところでしょうか?

安部: 家庭や園・学校でも使ってもらえるように、具体的で分かりやすく、コンパクトな実用的なグッズになるように工夫しました。

本書がめざしたのは、「客観的な数値を出すこと」ではなく、専門家ではない保護者や先生でも、現在の子どもの状態像をある程度客観的にとらえることができるようになることです。

発達をモニターしていくことで、子どもの成長の“伸びしろ”をとらえることができるので、子育てや保育のモチベーションが高まる。さらには、「個別の指導計画」の作成や、明日からの具体的な支援策にもつながる。

アセスメントとは本来、その子の個性や成長を見ていく「ワクワク体験」のはずです。子どもの成長と幸せを願いながら、保護者と先生とで、このワクワク感をじっくりと味わっていただきたいと願っています。

――アセスメントツールを上手に活用するポイントや方法を教えてください。

安部: 子どもの成長を観察したら、マーカーで色をつけて分かりやすく示すことです。これまで現場でアセスメントツールを使うとき、保護者や先生にフィードバックする際にそうしてきました。

たとえば「1年前、Aちゃんの社会性は赤色でチェックしたところの状態でした。ところが、今日観察させていただいて、青色マーカーの部分がこんなに増えていますよね」と。
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アセスメントシートを継続して使うと、成長が一目瞭然。その子の頑張りが子育てや保育のモチベーションにもつながります
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この1年間の成長の“伸びしろ”を目で見て分かるように示してあげると、みんなびっくりするんです。「ああ、今だけを見て困ったなぁと思っていたけど、1年でこんなに育っていたんだ」と。

同時に、これからの課題も見えてきますから、やる気がフツフツと湧いてくる、ここがポイントだと思うんですよね。

――アセスメントツールを使って感じた効果や成果などはありますか?

安部: いくつかの自治体で「発達段階アセスメントシート(Ver.5)」(本書はVer.7)を使っていただいています。
幼稚園の先生などから思わぬ波及効果があったので、少し紹介します。

①項目が達成できているかどうかを判断するために、観察力が高まった
②子どもの発達をきちんと先生が理解できたことで、保育や教育実践の質が高まった
③小学校への就学を判断する際、保護者が納得できる有効な資料となった


アセスメントシートがひとり歩きしないように、本書では、留意点や実際の支援の具体例なども盛り込みました。それらを参考に、これからより多くの人に活用していってほしいですね。

数値に惑わされない「幸せに生きる」力を見つめよう

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最後に、お子さんの発達に不安を感じている保護者の方や、支援に戸惑いのある先生たちが前向きに子どもたちの発達と向き合えるように、安部先生からメッセージをいただきました。

安部: 診断名とかIQ値というものは、ある意味「必要悪」なのかもしれません。支援のスタートラインに立つためには、確かに必要です。でも、そればかりじゃしんどいですよね。

たとえ子どもに障害があっても、発達に遅れや偏りがあっても、障害が重度だとしても、子どもは成長します。その成長の“伸びしろ”に目を凝らすことができるならば、前向きに子どもに向き合えるのではないかと私は信じています。それは、これまで出会った数多くの保護者や先生方が教えてくれたことです。本書の趣旨は、ここにあります。

もう一つは、「幸せに生きる力」を見つめることだと思います。

確かに、漢字が書けたほうがいい、お金の計算ができたほうがいい…。それはそうなんだけれど、知識やスキルの向こうに何を見つめるか。それが重要だと思うんです。

そして、「幸せ」というものは価値観ですから、それぞれが考えていいんです。私が考える「幸せに生きる力」は、こんなことです。

・趣味や生き甲斐を持っていること
・自分が好きであること
・つらいときには、自分や他者に「ドンマイ!」と言えること
・困ったときに周囲に助けを求められること
・人の役に立っている自分を実感できていること

だって、「幸せになるために、生まれてきたんだから…」。大好きなある歌のフレーズです。私も、心からそう思っています。
■著者プロィール
安部 博志(あんべ・ひろし)
筑波大学附属大塚特別支援学校教諭(地域支援部長)
特別支援教育士、学校心理士。筑波大学大学院修了。特別支援教育のコーディネーターとして、この16年間で10000以上のクラスを巡回してきた。これらの実践を基に子どもの自尊感情や関係性を高める『だれでもかんたんおりがみ』『トーキングゲーム』『かえるカード』など各種の教材を開発している。特別支援教育教材開発のエキスパート。著書に、『ひっくりカエル!』(小学館)、『発達障害の子のための すごい道具』(小学館)、『発達に遅れや偏りがある子どもの本当の気持ち』(学事出版)、『発達障害の子どもの指導で悩む先生へのメッセージ』(明治図書)などがある。
子どもの発達を支えるアセスメントツール
安部博志 (著)
合同出版
文/M.Tasaki
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