「みんなと一緒に」は親の価値観…!?自閉症の息子の応援団長でいたいと思う理由

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わが子が一人遊びばかりしている姿を見ると、「お友達と同じことができるようになってほしい」「集団行動をしてほしい」と感じるのではないでしょうか。保護者の価値観で、それが子どもの幸せにつながると考えがちだからです。

私も息子が公園で石ならべばかりしていたり、運動会で一人だけ参加できなかったりした時、どうして…?と切ない気持ちになったものでした。そんな私が、息子が社会人となった今、感じていることを書いてみたいと思います。

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立石美津子
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公園で石ならべをしていた息子

『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。

公園に連れていってもお友達と一切交わろうとせず、地面の石ころや葉っぱを並べているわが子。そんな姿を見て、定型発達の保護者は「お友達と一緒に遊んだ方が楽しいに決まっている!」と考え、「お友達と遊びなさい!」とつい言ってしまう…そんなことはないでしょうか。

自閉症のある子どもは一人遊びが好きだったり、他の子どもと関わることがストレスになることもあります。少なくとも息子の場合、そうでした。

どうしてかと言うと…

石ころや葉っぱは自分の思った通り並べると、その位置でとどまってくれています。でも人間の場合、相手が(息子にとって)予測もつかない行動をとることがあるために、見通しが立てることが苦手で、想像力に障害がある息子には不安材料となってしまうようでした。
パズルのピースが一つなくなってもパニックになっていた子ども時代
あるはずの「パズルのピース」が一つなくなるとパニックになっていた子ども時代
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自閉症のある子は、数字や地図や時刻表などカタログ的なものを好むということを聞くことがあります。これも「変わらないものが安心」という理由があるからなのかもしれません。

運動会も苦手だった

運動会などの行事も、息子にとって予測も出来ない事態が起こる場。いつもと全く違う保育、授業の流れになります。ですからもちろん苦手でした。

保育園、幼稚園の場合、園庭が狭いため運動会を園庭以外の運動場で行うところもあります。多くの観客が集い、ピストルの音や声援などの聞きなれない音が耳に入ってきます。通常の時間割と全く違う流れで進むプログラム、見慣れない観客に囲まれる――その上、聴覚過敏もある息子は、ピストルの音、スピーカーから鳴り響く音楽やアナウンス、観客の声援もつらい…。

クラスメートにとっては楽しみの行事であっても、自閉症の息子には「できれば参加したくない」行事だったようです。
特別支援学級在籍時の運動会での様子
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これは小学校6年生のときの写真です。息子は特別支援学級にいたのですが、運動会のときは通常学級の行事に合流していました。
騎馬戦に1人だけ参加せず棒立ちの息子
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騎馬戦では、「我関せず」で一人だけ違う方向を向いています。

遠足の予行練習をする親子も

遠足も子どもにとっては不安材料になることもあります。予行練習として子どもが当日パニックを起こさないように、親子で現地に何度も通い遠足の予行練習をしている人もいます。

ただ、予行練習をしたとしても、遠足に行くのが本当につらいならば、欠席するのも一つの選択なのかもしれません。

よかれと思ってしたことが、子どもを追い詰める…!?

親はわが子が人生を楽しめるようにと願うものです。ただそのときに、自分だけの物差しで「これが幸せだろう」と決めてしまっていないか、一度振り返ってみることが必要かもしれません。

「友達と一緒にいる方が楽しいだろう」「周りと同じ行動をするほうが安心できるだろう」と思い、地面の虫や石ころと戯れて一人遊びをしているわが子に「そんなことしていないで、皆のところへ行って遊びなさい!」と背中を押すことも、そのひとつでしょう。「それがわが子のためなのだ」と思うからです。

でも、本人は「(予測がつかない行動ばかりで気持ちが落ち着かないから)友達と遊びたくない」のかもしれません。親が“普通”にさせようとすればするほど、子どもは追い詰められてしまいます。

保護者は子ども側に寄り添う応援団長になって「(一人遊びしているほうが落ち着くのであれば)お友達と遊ばなくてもよい」「無理にお友達と同じことをする必要はない」「そのままのあなたでいい」という姿勢を日頃から言葉や態度で示してあげてほしいと思います。

「できないあなたは決して認めない」のではなく、どんな子であっても「お母さんはあなたのことが大好きです」というメッセージを幼い頃から与え続けることが大切。そうすることで子どもの心は安定し、もう少し大きくなってから、新しいことにもチャレンジする勇気が出ると私は思っています。
昔は考えられませんでしたが、特別支援学校高等部3年生のときには、なんと応援団長として、思い切り運動会を楽しんでいる息子でした。
特別支援学校高等部の運動会では応援団長も務めた
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特別支援学校の運動会で活躍する息子
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このコラムの著者親子がモデルとなったルポルタージュ

発達障害に生まれて
松永正訓
中央公論新社

このコラムを書いた人の著書

子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎
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