新たなパターンは”プラカードしゃべり”!

お茶が欲しい時には「おちゃのむ?」と言うコウ
Upload By 丸山さとこ

お茶が欲しい時は「お茶飲む?」

そんなコウでしたが、3歳になって数か月が経った頃、要求を言葉で伝えるようになりました。今までであればクレーンで伝えてきた要求を、言葉で表すようになったのです。

冷蔵庫の前まで引っ張っていった親の手を動かすことで『お茶が欲しい』と伝えていたコウが、「おちゃのむ?(お茶飲む?)」と言えるようになったのは大きなことでした。

ですが、よくよく考えてみると「お茶飲む?」は、親がコウにたずねる時の言葉です。コウの側が要求として「お茶飲む?」と言うのは、何だか妙な感じです。

成長したことで現れた“新しいパターンのオウム返し”

コウは言葉を使って“人に向かって要求すること”そのものはできるようになりましたが、改めて観察してみるとそれは「話しかけている」というよりは、オウム返しを使って望ましい状況を再現しているだけのようでした。

お茶を飲みたかったら「おちゃのむ?」、手を洗いたかったら「て、キレイキレイしようね」、出かけたかったら「おでかけしよっか!」…コウが言う言葉は、すべて親が問いかけたり促したりする時の言葉でした。

「いくつ?」に対する「いくつ?」のような“その場ですぐに返ってくるオウム返し”ともまた違う、新たなパターンのオウム返しといった感じのセリフの丸覚えは、さながらプラカードをあげることで意思を伝えるかのようでした。

大切なのは“言いたいこと”が伝わること

「おかあさん、おちゃほしい」と言うようになったコウ
Upload By 丸山さとこ

プラカードを豊かにしよう

プラカードのような要求の仕方は、大分クセが強いな!とは思いましたが、クレーン現象を使った要求の伝え方よりは、コウにとって便利でスマートな方法のはずです。

「プラカードでも伝わればいいか!」と考えた私は、より質の良いプラカードをコウと一緒に作ることにしました。コウが「質問」のセリフを使って要求した時に「要望」のセリフを教えることで、彼が使う言葉を「質問」から「要望」に変えたのです。  

「お茶飲む?」では、私には通じても他の人には通じにくいので、「お茶飲みたい」や「お茶欲しい」にします。「おでかけしよっか!」では提案や促しに聞こえるので、「おでかけしたい」と要求の形にします。

コウは小学生になってからも“セリフが頭に入っていないこと”は言えないところがあったので、クラスメイトや先生に伝えたいことがある時は、その都度家でプラカード(セリフ)を用意して行きました。
帰るなり、学校や登下校での出来事をペラペラとしゃべるようになったコウ
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そしてペラペラしゃべる現在のコウへ

そんなコウも今では毎日ペラペラと喋って過ごしています。要求も伝えますし、3年生頃からは「今日学校でね、こんなことがあってね」と家に帰る度に外であったことを話してくれます。

時々言葉に詰まって「えっと…Aちゃんがこう言って、それでB君がね、えっと…あのね、学校でね、えっと…?」と迷走しながらの状況説明になることもありますが、投げ出さずに一生懸命話す姿を見ていると、「本当によく話すようになったなぁ…」としみじみします。

1日中話しかけられて「ちょっと静かにして!?」と言いたくなる時もありますが、思春期にもなれば逆に「たまには話してくれないかな」とさみしくなるのかもしれないなと思い、コウのおしゃべりをありがたく聞いている今の私です。
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