計算・漢字・板書...できないことの練習で困っている子どもたちに。楽しみながら認知機能を育める『コグトレ』で、学習の土台づくりを――児童精神科医・宮口幸治
ライター:宮口幸治
私は、児童精神科医として教育相談も受けています。相談には、計算が苦手、漢字が苦手、黒板が写せないといったお子さんがやってきます。なかには、計算が苦手でひたすら計算ドリルを、漢字が苦手でひたすら漢字ドリルの練習をやらされている子も少なくありません。でも、計算や漢字といった学習の前に、「数える」「写す」「見つける」といった「学習の土台」をトレーニングするほうが先ではないでしょうか。今回は、その学習の土台となるトレーニング「コグトレ」の必要性について、お伝えしたいと思います。
執筆: 宮口幸治
児童精神科医
児童精神科医として、困っている子どもたちを教育・医療・心理・福祉の観点で支援する「日本COG-TR学会」を主宰し、全国で支援者向けに研修を行っている。
授業中にぼんやりしている子のつらさ
これまで私は児童精神科医として少年院に勤めながら、自治体の教育相談、学校コンサルテーションなども行ってきました。
教育相談の場を通じてお子さんの知能検査などを行うこともあり、その際に、お子さんの「見る・聞く」といった認知機能に弱さが見つかれば、それが学業不振につながっている可能性を保護者の方に説明してきました。
すると、保護者の方の多くは、「それじゃあ、この子が授業中にぼんやりしていたり勉強が苦手なのは、ふざけていたりなまけたりしているせいではないのですね」と納得がいった様子を見せます。なかには、それまでの子どものつらさに思いをはせてか涙を流される方もいらっしゃいます。
教育相談の場を通じてお子さんの知能検査などを行うこともあり、その際に、お子さんの「見る・聞く」といった認知機能に弱さが見つかれば、それが学業不振につながっている可能性を保護者の方に説明してきました。
すると、保護者の方の多くは、「それじゃあ、この子が授業中にぼんやりしていたり勉強が苦手なのは、ふざけていたりなまけたりしているせいではないのですね」と納得がいった様子を見せます。なかには、それまでの子どものつらさに思いをはせてか涙を流される方もいらっしゃいます。
認知機能に弱さがあるのはどうしたら?
そのあと、決まって保護者の方から受けるのはこんな質問です。
「認知機能に弱さがあるのは、どうしたらいいですか?」
しかし、そうたずねられても、以前の私は、なかなかいいトレーニングを紹介できずにもどかしい思いを抱えていました。
当時も書店に行くと「見る・聞く力を育てる」という書籍もありましたが、効果検証が不足していたり、包括的に力をつけさせるものではなかったり……。学習ソフトやオンライン教材で「見る・聞く力を育てる」トレーニングを提供しているものもありますが、とても高額であったりしました。
そこで、私自身が約5年間にわたり、当時勤務していた医療少年院でトレーニングを実施し、少年たちに対して手応えの得られたトレーニングを『コグトレ』として提供するようになったのです。
「認知機能に弱さがあるのは、どうしたらいいですか?」
しかし、そうたずねられても、以前の私は、なかなかいいトレーニングを紹介できずにもどかしい思いを抱えていました。
当時も書店に行くと「見る・聞く力を育てる」という書籍もありましたが、効果検証が不足していたり、包括的に力をつけさせるものではなかったり……。学習ソフトやオンライン教材で「見る・聞く力を育てる」トレーニングを提供しているものもありますが、とても高額であったりしました。
そこで、私自身が約5年間にわたり、当時勤務していた医療少年院でトレーニングを実施し、少年たちに対して手応えの得られたトレーニングを『コグトレ』として提供するようになったのです。
認知機能を強化する『コグトレ』
『コグトレ』とは、「認知○○トレーニング(Cognitive 〇〇 Training)」の略称です(○○には「ソーシャル(社会面)」「機能強化(学習面)」「作業(身体面)」が入ります)。
コグニティブ(Cognitive)とは日本語で「認知」のことで、社会面・学習面・身体面から包括的に子どもたちを支援するプログラムが『コグトレ』です。認知機能強化もその1つです。
私たちは、五感(「見る・聞く・嗅ぐ・味わう・触れる」の感覚)を通して外部から入ってきた情報を処理しています。これが「認知機能」です。認知機能によって、自分の置かれている状況を認識したり、言葉でコミュニケーションをしたり、問題解決の手段を考えたりして、日常生活を送っています。
コグニティブ(Cognitive)とは日本語で「認知」のことで、社会面・学習面・身体面から包括的に子どもたちを支援するプログラムが『コグトレ』です。認知機能強化もその1つです。
私たちは、五感(「見る・聞く・嗅ぐ・味わう・触れる」の感覚)を通して外部から入ってきた情報を処理しています。これが「認知機能」です。認知機能によって、自分の置かれている状況を認識したり、言葉でコミュニケーションをしたり、問題解決の手段を考えたりして、日常生活を送っています。