子どもの「トリセツ」をつくろう!チェックリスト、ワークで問題解決スキルの身につけ方までわかる。『自己理解力をアップ!自分のよさを引き出す33のワーク』【著者・高山先生インタビュー付】

ライター:発達ナビBOOKガイド
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合同出版
子どもの「トリセツ」をつくろう!チェックリスト、ワークで問題解決スキルの身につけ方までわかる。『自己理解力をアップ!自分のよさを引き出す33のワーク』【著者・高山先生インタビュー付】のタイトル画像

自分のことは、自分がよく知っている……と皆さん考えるのではないでしょうか。ところが、自分自身も知らない「自分の姿」が、実はあるのです。そんな自分の姿を知り、うまくいかないことが、うまくいくようになる問題解決の方法がたくさん書かれているのが、『自己理解力をアップ! 自分のよさを引き出す33のワーク』。著者の高山恵子さんのお話とともにご紹介します。

自分自身の心を写す鏡、自己理解のためのチェックリスト

自分自身も知らない、多様な自分の姿を知り、うまくいかないことが、うまくいくようになる問題解決の方法がたくさん書かれているのが、『自己理解力をアップ! 自分のよさを引き出す33のワーク』。著者であるNPO法人えじそんくらぶ代表・高山恵子さんのインタビューとともにご紹介します。
自己理解力をアップ! 自分のよさを引き出す33のワーク: 見えない長所やストレスを知ろう
高山恵子
合同出版
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意外と知らない自分のほんとうの姿。その中には、まだ気づかざる才能や可能性が隠れているかもしれません。逆に、自分の苦手なことに気づかないために、大きなストレスやトラブルの種になることもあるのです。

人の長所や欠点はよくわかるのに、自分のことになるとわからない。それは自分の全身の姿は鏡に映さないと自力で見ることはできないのと似ているかもしれません。

そんな自分の姿に気づいて、課題を解決していく本書は、4つの章で構成されています。その第1章は、「自分のことをもっとよく知ろう チェックリスト」です。まずは自分を理解するためのたくさんの質問が並びます。

チェックリストは、自分が理解している自分と、他人(特に保護者、指導者)から見た自分の姿とのギャップを見て、傾向を探ることができるようになっています。
P18
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これは、「ジョハリの窓」と呼ばれる、自己理解のための分析方法を活用しています。

自分が知っている自分/自分が知らない自分
他人が知っている自分/他人が知らない自分

の4つの視点から自分を見て、さらに、それらがクロスする部分でわかる「自分の姿」を理解していくというもの。気づいた性質を書き出してみるだけでも、「自分ってこんな人だった!」と気づくことができます。
P9
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さらに本書では、「神経心理ピラミッド」と呼ばれる、リハビリテーションのモデルを用いて、この自分に気づくための質問事項を設定しています。この図は、人の機能がピラミッドのように積み重なって表れていることを示していて、上に行くほど高度な機能となっています。
P6
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たとえば、こういうことが起こります。
テストで好成績を取っていた生徒がゲーム依存になり、睡眠時間が十分でなくなった途端に、自己コントロールが効かず怒りっぽくなったり、集中力が下がってテストの点も下がるということがありました。一方、感覚過敏があり、大きな音にかなりの不快感があった生徒に「授業中も耳栓やイヤーマフをつけてOK」という支援をしたら、集中力が高まり、記憶力もよくなり、論理的な思考もできるようになって成績が上がった人もいました。(P6)
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4772614249
十分な睡眠をとること、気になる音を遮断することが、その人のパフォーマンスを上げることにつながる、ということは一般論として理解はできます。では、なぜそれが自分の状況にとって必要なことなのか、を理解するためには、自分の特徴を知っておかなくてはなりません。そして、自分の特徴が分かっていれば、「こういうことが起こりそう」という予測を立てて、対応するスキルを身に着けていくこともできます。

自分の「トリセツ」を作るために知っておきたいこと

本書の、第2章「苦手なところを工夫してうまくいく条件を探そう 解説とワーク」、第3章「応用 解説&ワークシート」には、第1章で理解した自分のために、スムーズに生活し活動するためのたくさんのワークやスキルが紹介されています。
P76
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これは、たとえば催促されるときに、どういう言葉を選んでもらったらいいのか、という例です。「どうしたらスムーズに行動できるか」がわかっているのと、わからないままでは、行動自体が違ってきます。自分自身が生きやすくなるためのスキル、それは自分自身のトリセツ、取扱説明書になるものだとも書かれています。

こうしたワークや事例がたくさん紹介され、自分が自分らしく、スムーズに生きていくための自己理解ができる、実践的なワークブックが本書です。

著者・高山恵子さんに聞く、「うまくいく条件」を探す本書の活用法

本書の著者・高山恵子さんは、前著『やる気スイッチをON! 実行機能をアップする37のワーク』でも、気持ちを前向きにするたくさんのワークを紹介されています。具体的でわかりやすく、すぐ実践に移せる豊富なアイディアをたくさんもつ、臨床心理士の高山さんに、シリーズ第2弾である本書についてお話を伺いました。
やるきスイッチ、やめるスイッチ、どうオンにする?「ゲームがやめられない」「毎回遅刻する」…身につけたい力が学べる『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』のタイトル画像
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やるきスイッチ、やめるスイッチ、どうオンにする?「ゲームがやめられない」「毎回遅刻する」…身につけたい力が学べる『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』

編集部(以下――) この本は、とにかくたくさんのチェックリスト、ワーク、アドバイス、コーピング(問題を解決する方法・スキル)がたくさん掲載されていることが魅力的です。どのようにして、こうしたチェックリストやアドバイスを考えられたのでしょうか。

高山さん(以下 高山): 自己チェック・他者チェックは、いろいろな本や論文の理論をもとに、実生活でよく使う内容をピックアップしました。当事者の方々が、自分ではなかなか気づかないことや、気づいていても人に伝えられない困難さについて、確認できるものになったと思います。苦手なことを人に伝えるのは大変なので、チェックリストをつけてそれを相手に見せるという方法も使ってもらいたいと思いました。

私のADHDの脳は、アイディアがいくらでも湧いてくるのです(笑)。悩み事のご相談を受けているときや、講座で予定していた内容が参加者に合っていなかったなと感じるなど、さまざまなきっかけから、自然に新しいワークが生まれてきます。

――だから、こんな実践的な本になっているのですね。本書は、特に診断名などは登場しませんが、読む人それぞれの立場での役に立ちそうだと感じました。

高山:私自身がADHDの当事者で、自分を深く理解できるようになったのは、30代でアメリカの大学院でADHDのことを研究してからです。帰国後、発達障害のある方やその支援者を支援させていただいていますが、その中でADHDと診断されたあと、実はASDだったとか愛着障害だったということで診断名が変わったりして、せっかくADHDを受容した本人や家族がまた混乱するといったプロセスを多数見てきました。

そこで、診断名で対応する方法を探るのではなく、個人個人の認知機能の偏りと困りごとを理解し、うまくいく条件を見つけるというサポートツールを作りたいと思いました。そして、障害理解や診断名をつけるためのチェックリストではなく、「人生の質を高めるための、自分や支援する我が子・生徒さんたちを理解するためのチェックリスト」を作りたいと思ったのです。

――たしかに、支援者や保護者の方が、生徒さんや我が子を理解するためのたくさんのメッセージが、本書には盛り込まれています。支援者や保護者の方を見ていて、ふだん感じられていることを教えてください。

高山:保護者や支援者の方が一生懸命やっていることが、その子に合っていないために逆にストレスを与えてしまい、結果が出てないことに気づいていない場合が多くあり、心が痛むことがあります。

まずは、保護者や支援者の方が、今頑張ってやっているしつけや指導がその子のやり方と要望に本当に合っているのか、確認する機会が必要だと思います。

そこで大切なのが自己理解・他者理解の考え方で、これがトラウマや虐待に発展させないようにすることにもつながります。本書には、チェックリストをたくさん掲載しましたので、ぜひ活用していただきたいと思います。
また、自己理解が苦手な方は、1人でこの本を使いこなすことは難しいので、支援者が必要です。ですから、支援者の方に活用していただけるように工夫しました。解説から読んでいただいてもいいかもしれません。

――本人、支援者・保護者、様々な人が活用できそうな本書ですが、どのように活用してほしいとお考えですか?

高山:発達障害の診断の有無にかかわらず、なんだかうまくいかない、どうしてうまくいかないのかわからない、という状態の方に、「うまくいく条件」を探すために活用していただければと思います。

本書でご紹介しているちょっとした条件を変えることで、いろいろなことができた!という体験をしてもらえたらうれしいですね。「うまくいく条件を探す」という視点がないままがむしゃらに頑張って、燃え尽き症候群になって、やる気スイッチがオフになるのは悲しいことです。

周りの人に、適切な配慮をしてもらうときには、プロセスを踏むことが大事です。
1. 自分の苦手なことを受容し
2. どうやったらうまくいくかを理解し
3. 支援してくれる人に伝える
この3つのプロセスを踏むことで、必要な配慮や支援を適切に受けられるようになり、能力を開花させることができます。障害がない方も、ちょっとしたサポートを受けることでパフォーマンスが上がると思います。

診断名に関係なく、「うまくいく条件」を見つけてほしい

――診断名のあるなしは関係なく、どんな人も誰かのサポートを受けて生活していますよね。そのサポートを受けやすくするために大切なのはどんなことでしょうか。

高山:日本では、積極的に質問することや助けを求めることが苦手な方が多いようですが、私はアメリカの大学院で、質問をすることは、その人のやる気や熱意をアピールすることでもあり大切であること、また、苦手なことを相手に伝えて、具体的に何を手伝ってもらいたいとお願いすることは障害のある人の権利である(セルフアドボカシー)、という考え方に大きなカルチャーショックを受けました。このような考え方が日本でも広まると、「パステルゾーン(発達障害の特性を持つものの、診断基準は満たさない状態)」の方々を取り巻く環境も変わっていくかもしれません。

そして、診断名があるから合理的配慮をしなければいけない、だからやるというのではなく、困っている人がいたら手を差し伸べるという昔ながらの日本の思いやり文化の中でできたら、多くの人のストレスが減るのではないかと思います。

本人には自分の特性を理解し、人と比べず、自分の良さを引き出し成長してほしいと思います。そのために、ご両親には、わが子にトラブルや困難が多く起きたとしても頭ごなしに否定することなく本人の頑張りを認めてほしいですし、支援者の方には「オールマイティーにならなくてもOK」という視点を持っていただきたいです。それが実現するようにこの本をご活用いただければとてもうれしいです。

――最後に、発達ナビをご覧いただいている皆さまへメッセージをお願いします。

高山:保護者や支援者の、子育てや支援の目的は何でしょうか? それは、みんなと同じようにできる子に育てるということではなく、「その子が幸せになること」だと思います。

私たちは皆、次世代の子どもたちが幸せになってほしいと願っていますが、幸せの定義がそれぞれ違っていたり、「あなたの幸せのため」と思っての愛のムチが、実は相手にとっては愛情を感じられないただのムチになって、ストレスを与えているだけだとしたら、それはとても悲しいことです。

うまくいく条件は人によって違います。ですから、親御さんや支援者の方々がご自分でうまくいったことが、我が子や支援をしている子どもに合うとは限らないのです。その視点でこの本を使って、うまくいく条件を見つけてそれぞれのよさを引き出すヒントにしていただければと思います。

保護者自身も、自分のために役立てることができる本

本書に書かれている、サポートを受けるメインの対象は子どもたちですが、実は大人にも実践できることがたくさん掲載されています。保護者の方も一緒に、自分自身について知ることは必要ですし、自分の強みやクセを理解することで、子どもへの接し方も違ってくるかもしれません。

子育てのためだけでなく、いろいろなところで親子一緒に、うまくいく条件を探せる本が、この『自己理解力をアップ! 自分のよさを引き出す33のワーク』なのです。

取材・文/関川香織

自己理解力をアップ! 自分のよさを引き出す33のワーク

自己理解力をアップ! 自分のよさを引き出す33のワーク
高山恵子 (著)
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