道草、宿題後回し、ゲームがやめられない…発達障害あるある30事例掲載!専門家が提唱「魔法の杖とアイテム」で解決する方法がわかる『家庭で育てる 発達が気になる子の実行機能』

2020/11/19 更新
道草、宿題後回し、ゲームがやめられない…発達障害あるある30事例掲載!専門家が提唱「魔法の杖とアイテム」で解決する方法がわかる『家庭で育てる 発達が気になる子の実行機能』のタイトル画像

忘れ物をする、言われたことを覚えていない、遅刻する、食べ物をこぼす、片づけない、ルールが守れない、かんしゃくを起こす…、「何度も注意しているのに、なぜうちの子はできないのだろう?」そんな悩みを解決する具体的な方法がいっぱい詰まった本『家庭で育てる 発達が気になる子の実行機能』をご紹介します。

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実行機能は、家庭で育てることができる!

子どもの生活上の困りごと。『家庭で育てる 発達が気になる子の実行機能』は、家庭で具体的にどうしたらいいのか、その答えが詰まった一冊です。
家庭で育てる 発達が気になる子の実行機能
鴨下 賢一 (著), 小玉 武志 (著), 佐藤 匠 (著), 髙橋 知義 (著), 戸塚 香代子 (著), 東恩納拓也
中央法規出版
この本は、家庭で育てる実行機能の例が30も紹介されており、マンガと解説が同じくらいのボリュームでセットになっています。まずはマンガ部分を読んでみてください。保護者からすると「あ~、あるある!」と思う場面がたくさん登場します。親がやってしまいがちな対応も、また子どもの反応も、よくあると感じることかもしれません。

マンガに登場するのは、小学校3年生のサトシ。3年生と言えば、活動範囲や友だちとの関わりも広がり、自立に向けた1歩を踏み出すころ。少し先のことを見通して、予定も立てられるはず、と思いきや…。

本編を一部、見てみましょう。

「一日を予定通りスタートできる」編

たとえば、学校から帰ってきてから、自分のやりたいことを優先して、やりたくないことを後回しにしたサトシは、寝るのが遅くなってしまいました。
P23
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毎日これでは困ります。「だから言ったでしょ」と叱っても、結局また同じことに。そこで、何にどのくらい時間をかけているかを親子で確認しながら、帰宅後の時間割をつくることにします。
P29
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こんなふうに、子どもと相談しながら目で見てわかる形で予定を組み立てることで、翌朝ちゃんと学校に間に合う時刻に起きられるようにすること、それが実行機能です。朝のスタートは、その一日を左右する要です。そして準備は前日から始まっている…まさに、実行機能をフル稼働させる必要があるのです。

「道草をしない」編

サトシは、つい道草をして学校に遅刻したり、帰宅が遅くなったりします。
P43
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目的地に着くまでの道のあちこちに、たくさんのひっかかりポイントがあるようです。そこで、目的地までの間に短距離ずつの目標地点を考えて、チェックポイントとしてみることに。
P47
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チェックポイントをつくったあと、大人も同行してみることで、できるかな?という不安を解消します。

チェックポイントを表にしたり、すべきことを書き出して目につくところに貼っておいたりすることは、さまざまな場面で使える実行機能を高める「魔法のアイテム」なのです。

「ゲームやテレビを我慢して宿題をする」編

やらなくちゃいけないことは後回し、まず自分がしたいことを優先してしまうサトシ。お母さんに「宿題を先に終わらせたらいっぱいゲームができる」と言われても、どうもピンときていない様子です。
P85
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そこで、具体的に目で見てわかる時間割をつくって比べてみました。サトシがはじめに提案したのは、やりたいことを先にやって、そのあと宿題をするという順番。でも、やるべきことをさっさとやって、そのあと自由時間にするほうが、長くやりたいことができると納得したようです。

頑張ったあとにご褒美を設定することは悪いことではありません。まずは頑張り続ける力を身につける、それが生活を送るうえで大事なことと気づき、自然にできるようになっていきます。
P89
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「悪態をつかない」編

友達とゲームをしているときに、負けてしまったサトシは、悔しいあまりゲームにも友達にもあたり散らしてしまいます。
P109
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友達の気持ちにまで思いが回らなかったのですが、あとからお母さんに諭されて冷静になると、ようやく「お友達がもう遊んでくれなくなったらどうしよう!」と気づいたようです。でも、この気づきがあれば、次の対策へとつなげることができます。
P111
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実行機能とは、大人になって困らない「やり遂げる力」のこと

ご紹介した以外にも、全部で30のシーンでサトシがどう行動して、その後どう解決するかの例をマンガで読むことができ、実行機能とは「やり遂げる力」であること、その力をつけるための具体的な方法がわかります。

ですが、実生活ではこの本に登場するようなシーンばかりではないはずです。第一章「実行機能とは」では理論が解説されています。実行機能を身につけることが、将来の仕事にも役立つという見通しまで書かれています。

実行機能は「やり遂げる力」ですが、6つの下位機能がその力を支えています。プランニング、ワーキングメモリー、セルフモニタリング、自己抑制、注意持続、シフティングです。
P10
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ふだんの行動をそれぞれの機能に当てはめて考えてみましょう。

● 朝起きて支度をして(プランニング)、寄り道せずに学校にたどり着く(注意持続)
● ゲームで負けても友達にあたるのはよくないと理解して(セルフモニタリング)、気分を変えて次のゲームを楽しむ(シフティング)
● まず宿題を終わらせてから、ゲームをする(プランニング、自己抑制)

このように、何かを実行し、行動するためには、これら6つの機能がきちんと働く必要があるのです。

次に、実行機能を高める「魔法の杖」と「魔法のアイテム」が紹介されています。「魔法の杖」は、保護者や周りの大人が作る環境のこと。たとえばおやつを出しっぱなしの食卓で、「おやつはがまんして、食事をしなさい」と言ってもむずかしいでしょう。おやつは見えないところに隠して、食事に集中できる環境を整える、といったことが「魔法の杖」です。

もうひとつの「魔法のアイテム」は、リストや付箋、タイマーといった身の回りにある道具たちです。
P15
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マンガの中にも、視覚に訴えるポスターや、具体的に書かれたスケジュール、終了時刻を知らせるタイマーが登場します。大人にとっては、ごく当たり前の道具たちですが、その子に合った使いこなし方を大人と一緒に探していくことで、「魔法のアイテム」になるのです。本書では、さまざまな使い方を紹介しています。

そしてさらに、課題や達成状況をチェックするシートがあります。どんな課題があるか、どのくらいできるようになったかの結果が見えると、成長が客観的にわかるし、うまくいっていない項目については対策の見直しができるでしょう。
P17
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こうして本書全体を見渡してみると、実行機能が大人になっても欠かせない力であり、それを身につけることがいかに大切かを理解できるのではないでしょうか。

実行機能を育てるときの参考書として手元に置きたい本

この本は、編著者の鴨下賢一さんを中心に、5人の作業療法士が書いています。鴨下さんは、まさに実行機能を育てる実践家。児童発達支援や放課後等デイサービスなどの事業を展開し、発達が気になる子どもの家庭への療育指導をしています。また福祉機器の開発も多く手掛けています。

理論だけでなく、実際にどうしたらいいの?ということが具体的に、わかりやすく書かれているのは、日々子どもたちと関わっている作業療法士ならではです。

子どもたちは成長とともに、それほど意識しなくても、スムーズに毎日を過ごす力を身につけていきます。しかし、発達が気になる子どもは、その背景にある機能をちょっと意識して、周囲の大人が手助けする必要があります。その場が、安心できる家庭であると、子どもはますます伸びていきます。

子どもへの対応に迷ったら、本書ではどんな「やりとり」や「言葉がけ」をしているか、「どんな場面で」「どのアイテムを」「どのように活用」しているか、見直してみてください。怒って子どもを従わせても、それは一過性にすぎません。自分から選択し、気づいていける力をつけさせることが実行機能を高めます。その具体的な実践が描かれている本書は、それぞれ状況が違う家庭で、工夫する際の助けとなるはずです。

家庭という「魔法の杖」が使える場所で、「魔法のアイテム」を駆使しながら、子どものやり遂げる力を育てるための具体的な方法がたくさん読める本。『家庭で育てる 発達が気になる子の実行機能』は、保護者のための実行機能についての参考書のような一冊です。


文/関川香織

家庭で育てる 発達が気になる子の実行機能

家庭で育てる 発達が気になる子の実行機能
鴨下 賢一 (著), 小玉 武志 (著), 佐藤 匠 (著), 髙橋 知義 (著), 戸塚 香代子 (著), 東恩納拓也
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