合理的配慮はずるいのか?「先生はえこひいきしてる!」発達障害がある子への配慮をうまく説明できなくて

ライター:立石美津子
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私は3年前まで学習塾で指導をしていました。小学生2年生を担当していたとき、おそらく学習障害があると思われる生徒に特別メニューで課題を与えていました。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

他の生徒からの「えこひいき」発言ににうまく返答できなかった

私は3年前まで学習塾で指導をしていました。2年生のクラスを担当していたとき、おそらく学習障害があると思われる生徒に特別メニューで課題を与えていたところ、ほかの生徒たちから意見が出ました。
問題は、1年生学習範囲の「9+3」などの一桁同士の繰り上がりの問題など易しくし、宿題量も減らしていました。するとほかの生徒から「問題も簡単だし、宿題も少ない。立石先生はえこひいきしている、ずるい」と。

さらに「あの子はバカだ。頭悪い」とほかの子たちは囁きました。言われた子はその場で周りに気づかれないようにシクシク泣き出しました。算数のプリントが涙で濡れました。

私は囁いた子を別室へ連れて行き叱りました。どういう言葉で叱ったか忘れてしまいましたが、「それは言ってはならないことだよ」ともし言っていたとしたら、子どもたちは口には出さなくても、ますます、その子のことをバカにしたでしょう。

違う課題を与えていたことをうまく説明が出来なかったことだけは記憶しています。

幼児クラスでも同様

幼児のクラスでも同様のことが起りました。発達障害特性がある子どもで、落ち着きがなく教室内を立ち歩くことがありました。私が「皆と同じ」を強要することなく許していたら、家に帰って「先生はえこひいきしている」と保護者に訴える子が出てきてしまいました。

そこで次のように言いました。
「背が高い子、低い子、走るのが速い子、遅い子、給食をお替りする子、しない子。眼鏡をかけている人、いない人、人間はみんな一人一人違います。うまくできることとできないことがそれぞれあります。椅子に座るのが得意な子も苦手な子もいます。○○君はじっと座っていることが苦手だけれども走るのが得意です。だから立ち歩いてしまっても、○○君は走りたいのをグッとこらえて頑張っているのだから先生は叱っていないのよ」
ですが、子ども達が納得できたかどうかは定かではありません。

マザーテレサの言葉に「できないのではありません。できることが違うだけです」とあります。もしかしたら、この言葉を入れたら納得したのでしょうか。難しい問題です。

合理的配慮はずるいのか

あるテレビ番組で見た光景です。クラスに学習障害(LD)のあるA君がいました。文字が読めないので、担任はテストの時間はその子だけ教卓の横に座らせ、先生が問題を読み、答えを口頭で聞いて○×を付けていました。

するとほかの生徒たちから「ずるい!僕も先生の横に座りたい!」と文句が出ました。

困り果てた担任は「この子だけ特別扱いはできない。えこひいきになってしまう、そうしたらいじめにあってしまうかもしれない」と感じ、個別対応を諦めました。

近視の子に眼鏡を禁止して「気合を入れて黒板の字を写しなさい」とは言いません。眼鏡だけでなく黒板の近くの席にする配慮をするでしょう。ところが、発達障害についてはほかの子と同じ学習のさせ方をしてしまうという例としてとりあげられていました。

障害がある人の不当な取扱いを禁じ、個々のニーズに合った合理的配慮の提供を求めることによって、差別を解消しようとする障害者差別解消法があります。これに沿って対応しなくてはならないのに、ほかの児童のクレームに押し切られてしまった担任の先生でした。

A君はこの経験から「僕は周りに助けを求めてはいけないんだ。何もかも自分の努力でこれからの人生を歩んでいかなくてはならないんだ」と思ったでしょう。
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ツールの活用

学習障害のある生徒には先生が読んでやる、または音声ソフトを使わせればよいと思います。例えば、マルチメデア教科書(デイジー教科書)という音声ソフトもあります。

参考:マルチメデア デイジー教科書について
https://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/daisytext.html
背景と文字の境界が混ざってしまい、行を飛ばしたり、読めなかったりすることもあるので、こんなときはリーデングスリットを使わせればよいのです。

また、黒板の文字を写せないのならば、タブレットで写真を撮らせればよいのです。

子どもの特性に合わせてツールを上手に活用することで、学びの困難を少しでも軽くすることができます。
高い壁越しにスポーツ観戦をする様子
©今井久恵
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高い壁の向こうで行われているスポーツの試合…背が低い子に「背を高くして観戦しなさい!」と言っても無理です。ですが、踏み台を使えば平等に楽しむことができます。

学習も同じで、合理的配慮とは、同じ土俵でチャレンジするためのサポートの形で、この踏み台がリーデングスリットやデイジー教科書、タブレットなのです。

共に学ばせながら、ときには定型発達の子どもと障害のある子どもの教育環境を変えたり、特性を踏まえて違う課題を与えたりするのが本当のインクルーシブ教育ではないでしょうか。

とはいえ、私自身も、他の児童が納得できる説明の仕方を未だに見つけられないでいます。

専門家コメント 鈴木直光先生(小児科医)

新しいことを始める際にはインフォームドが必要です。いろいろな障がいについての説明も必要になります。スポーツ観戦の踏み台の絵は、左が equity (公正)、右が equality (平等)の意味です。皆に1台ずつ与えるのは平等ですが、それでは背の低い子は見られません。そこで、背の低い子に2台の台を与えることで初めて公正になるのです。これは眼鏡でも同じで、全員が平等に眼鏡をかけるわけではなく、近視の子だけ眼鏡をかけることで公正になります。皆と同じスタートラインに立てる「公正」を説明して理解してもらうことが重要です。メガネは今では当たり前になっているので説明は不要ですが、神経発達症の子に対する公正はまだ世間に馴染んでいないため、説明が必要になります。(監修:小児科医 鈴木直光先生)

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